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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
最終章 新芽
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すぐ傍に宮代葉月がいる

最終回

 雄介をもう一度生かす為に、葉月は行動した。色々な場所へ行き、色々な景色を見せ、孤独に蝕まれた心を癒そうとした。時折起こるトラウマからのパニック状態に陥った雄介が落ち着くまで、優しく抱きしめてあげたりもした。

 だが、一向に雄介の心が癒える事はなく、依然として孤独に死んでいく事を望むばかり。それでも、葉月は諦めなかった。

 やがて、雄介と繋いでいた手が、雄介を縛るロープに変わる。雄介に掛ける言葉が一方通行だと知ると、何も話さなくなった。

 人を助けるという事。それは予想を遥かに上回る程の困難な道のりであった。特に雄介は、今まで沢山の挫折と苦痛、そして裏切りを体験している。それでも尚、雄介は前へ進み、誰かを助けようとしてきた。そんな雄介が逃げ出してしまう程にまで精神が疲弊しているとなれば、ただでさえ困難な道のりが、より困難となる。

 それでも、葉月は諦めはしない。例え自分の心が疲れ切っても、雄介に対し怒りの感情を覚えたとしても、決して見捨てはしなかった。今度こそ、雄介が幸せに過ごせるように、葉月は進み続けた。

 そんなある日、葉月は雄介をつれて海に来ていた。砂浜で雄介を縛るロープを握りながら、夕陽が沈んでいく海を眺めていた。


「……夕陽が、沈んでいくね。こうしてみると、本当に海に落ちていくみたい。雄介君もそう思わない?」


 隣に目を向けると、そこには雄介はおらず、ロープの残骸だけが虚しく残されていた。一瞬、何が起きているのか分からず固まっていた葉月だが、雄介がいなくなった事をようやく理解するや否や、慌てて立ち上がった。


「雄介君!? 雄介君!!! どこ行ったの!!!」


 周囲を見渡しても、雄介の姿はどこにも無い。葉月は焦った。逃げた、離れていった、消えた、そんな言葉が頭の中で豪雨の如く浮かび上がり、涙まで流れてしまう始末。

 すると、どこからか泣き声が聞こえてきた。焦っている葉月は、それが雄介の声なのかを判断する前に、泣き声が聞こえてくる方へ走り出した。

 しばらく走っていくと、丘の下で泣いている男の子と心配そうに見つめる女の子がいた。男の子は足に怪我を負ってしまい、歩く事も立つ事も出来ない様子であった。

 泣き声の主が雄介ではないと知ると、葉月は落胆し、その場を後にしようと背を向けた。下に向けていた顔を上げると、そこには雄介がいた。


「雄介君……!」


 突然現れた雄介の姿に驚いた葉月だったが、すぐに雄介を抱きしめ、力無く開かれた手をしっかりと握った。


「ごめんね、雄介君。私、少し疲れてて……でも、もう見失わないから! だから……お願い、いなくならないで……!」


 葉月は涙を流しながら、震える声で雄介に懇願した。だが、雄介は返事をしない。涙を拭って雄介の眼を見ると、雄介の視線は葉月の向こうへと向いていた。その視線を辿って、葉月も雄介と同じ方へ視線を向けると、丘の下にいる二人の子供が見えた。

 すると、雄介は丘を下り始め、一直線に子供の方へと向かっていく。葉月はその後を追おうとするも、今までと雰囲気が違う雄介の後ろ姿を見て、前に出していた足を戻した。

 丘の下にまで行った雄介だったが、ある一定の距離で足が止まり、そこから動かなくなってしまった。

 雄介は葛藤していた。目の前にいる子供を助けたい気持ち。自分が誰も助けられない運命。その二つが雄介の中で激しく主張し合い、その場から動けずにいた。

 雄介が動けずにいると、男の子の隣にいた女の子が、雄介よりも先に動いた。女の子は男の子を背負おうとするが、華奢な体格の女の子では、男の子を持ち上げる事すら出来なかった。

 それでも、女の子は何度も背負おうとする。泣いていた男の子も諦めるよう諭すが、女の子は聞く耳を持たず、尚も背負おうとする。


「もういいよ! お前じゃ持ち上げれないよ!」


「嫌だ! 私、諦めない! 絶対―――きゃっ!」


 持ち上げかけた途端、女の子はバランスを崩してしまい、前に倒れながら男の子に潰されてしまう。


「ぅぅ……うわぁぁぁ!!」


「お、お前まで、泣くな、よ……うわぁぁぁ!!!」


 その涙は痛みからか、それとも悔しさからか。二人は大声で泣きじゃくってしまう。


「ぅぅ……へ……?」


「あれ? 何だか、地面が遠くなってく」


「……私達、浮いてる?」


「ほんとだ……ほんとだ! 浮いてる浮いてる!」


「あははは! すごいすごい! 私達、今お空を飛んでるよ!」


 さっきまでの涙が嘘かのように、二人は満面の笑みで、自分の体が浮かんでいる事に驚きつつも喜んでいた。だが実際には、二人は浮いている訳でも、背中に翼が生えた訳でもない。

 雄介が二人を肩に担いでいたのだ。他人から認識されない所為で、二人は自分の体が浮かんでいると思い込んでいた。


「浮かんでるなら、足の怪我なんてヘッチャラだ!」


「ヘッチャラヘッチャラ!」


「進め~! 僕達の家にまで、飛んでいけ~!」


「いけ~!」


 雄介は二人を担いだまま、速過ぎず、遅過ぎないスピードで走り出した。何も知らない二人は無邪気に笑いながら、空を飛ぶ感覚を楽しんでいた。  

 二人の子供を担いで走り去っていく雄介。そんな雄介の後ろ姿を丘の上から見送った葉月は、その場にしゃがみ込み、安堵と寂しさが混じった涙を流していた。

 一度は諦めていたが、再び誰かを助け出そうと動き出し、実際に助けてみせた雄介が嬉しかった。それと共に、雄介がもう一度動き出したキッカケが自分ではない事に悲しんだ。

 

「……最低だ……嬉しいのに、嬉しくない……私が助けてあげられなかった事が、嫌なんだ……!」

 

 それからしばらく、葉月は涙を流し続けた。時間が流れ、夕陽が沈んで夜を迎えても、葉月はその場から動かず、ただただ泣き続けた。

 すると、葉月の頭の上に何かがポトリと落ちてきた。葉月は自身の頭に手を当て、落ちてきた何かを掴んで見てみると、それはロープの握り手であった。ロープを視線で辿っていくと、いつの間にか葉月の隣に、ロープを腹部に巻き付けた雄介が立っていた。

 

「雄介君……」


「……」


「……私、やっぱり自分の幸せを願ってた……雄介君を生かす為とか言っておきながら、結局、私の自己満足だった……雄介君が誰かをもう一度助けたのに、私……心から、喜べなかった……! ごめん、ごめんね、こんな私で……ごめん……!」


「……僕、本当は助けようとは思わなかったんです」


「っ!? 雄介君、今、喋った……!?」 


 久しぶりに聞く雄介の声に、葉月は喜んだ。しかし、雄介の真剣な表情を目にし、次に喋ろうとしていた言葉を飲み込み、雄介の話を聞く事に専念する。


「宮代さんの所為で、今まで遮断出来ていた他人の声や姿が元通りになって、そしたら自然と、ここに来た。でも、あの子達に近付くにつれて、やっぱり怖くなった……また、助けられなかったらどうしようと、不安になった……でも、助けに行けた。それは僕の心が強くなったからじゃなく、ましてや女の子が頑張っている姿を見たからじゃない……宮代さんのお陰です」


「……私は、何も―――」


「宮代さんが見守ってくれた。だから僕は、もう一度助けてみようと思えた。そして、助けようと動いた」


 雄介は葉月の方へ向き、不慣れになった微笑みを浮かべると、深々とお辞儀をした。


「ありがとう。宮代さん。宮代さんが僕を見捨てず、僕の傍にいてくれたお陰で、僕は……僕はまた、前へ進む事が出来たよ!」


 雄介は、心を込めた感謝の言葉を葉月に贈った。そんな真っ直ぐに贈られた雄介の言葉に、葉月はまた涙を流した。

 だが、今度の涙は悲しみや悔しさは混じっていない。純粋で、晴れやかな、ただの嬉し涙だ。


「……雄介君、私は、雄介君の役に立てたかな……?」


「うん」


「……私が傍にいたら、嫌じゃない……?」


「うん」


「……私、雄介君の体を好きにしていいのかな……?」


「うん……うん!?」


「うわぁぁぁん! 雄介く~ん!」


「ギャアァァァ!!!」


 飛び跳ねてきた葉月に雄介は押し倒されてしまい、唇や頬や首筋に、まるでキツツキかのようにキスをされてしまう。抵抗しようとする雄介だったが、両腕を足でロックされ、身動きが取れなかった。 


「これからもずっと一緒にいようね! 大丈夫! 私は絶対! 絶っ対に! 雄介君の傍からいなくならないから!」


「分かった! 分かったから! 一旦離れて!」 


「雄介く~ん!」


「あー、もう! やっぱり宮代さんの事は嫌いだー!!!」

 これにて、【すぐ傍にヤンデレがいる】は完結となります。

 

 打ち切りみたいな終わり方ですけど、この後は永遠と二人のイチャイチャしか書く事無いので、ここで終わらせてもらいます。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございました! また次回作で!

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