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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
三章 正面衝突
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決戦

 決して交わる事が出来ない望みを持つアキラとユウスケ。それ故に、彼らは反発する運命にあった。

 ユウスケはアキラを睨みながら、一定の距離をとりながら、周囲に建造物を創造し、自分に有利なフィールドを形成する。自分の周りに建築物が生えていく中、アキラは目と気配でユウスケを捉え続けていく。

 二人の間に建築物が生え、ユウスケの姿が目で捉える事が出来なくなり、アキラは建物に周囲を囲まれてしまう。ユウスケの気配を探ろうとするが、建物の隙間から霧が漏れ出し、その霧がユウスケの気配を遮断してしまう。目と気配が使い物にならなくなり、アキラは直感で迎え撃とうとする。

 時間の感覚が狂っている【外】の性質、創造の能力で建物を生やして目と身動きを制限、服従させた変異体の能力で気配を遮断。それらは、自分が有利に立つ為のユウスケの作戦。そこまで封じ込めなければ、まともな勝負にならなかった。

 隠れていたユウスケは手始めに、暗殺を得意とする変異体を呼び起こし、霧に紛れ込ませた。霧に隠れている変異体は、静かにアキラの背後へ近付いていき、腕に生やした鋭利な刃で喉元を掻っ切ろうとする。

 変異体がアキラの間合いに入った途端、その瞬間であった。目で捉えきれない程の素早さで繰り出されたアキラの逆回し蹴りが、変異体の顔面を叩き切っていき、首が三度回転した変異体は、呆気なく絶命した。


「これで終わりか?」


 どこかに隠れているユウスケに対し、挑発的な声色で呟くアキラ。そんな中、絶命した変異体と同個体である変異体が、今度は群れとなって四方八方から暗躍していた。暗殺を得意とするこの変異体は、本来集団での戦闘でその能力を発揮する。更に今は、気配を遮断する霧によって本来以上の隠密能力がある。今の彼らであれば、上位者にも匹敵する力を持っていた。

 そんな変異体達はアキラへ一斉に襲い掛かったが、まるでこれから起きる事を知られていたかのように、アキラに対処され続けられてしまう。

 もちろんアキラは予知能力のような能力は持っていない。それに近しいレベルの直感で変異体達の動きに勘付いただけであった。

 そうして最後の一体を仕留め終えると、地面に埋め尽くされた変異体の屍が砂の中へと消えていく。


「雑兵はいなくなった。次は何を出す?」


 ユウスケからの次の刺客を待ち構えていると、周囲を囲む建物のガラスが割られていき、そこから銃を持った機械混じりの変異体が現れ、アキラへ発砲する。アキラは身を丸くして頭と心臓部分を守り、放たれてくる弾丸の雨を耐え続けた。

 撃ち続けていた銃の弾が尽き、変異体達がリロードを行う瞬間、アキラは動いた。建物の壁を駆け上り、窓から顔を覗かせている変異体を放り投げながら建物の中に入り、変異体が残していった銃を拾って変異体達を狙撃していく。

 機械混じりの変異体を全て倒しきると、アキラがいる部屋に変化が起こり、建物の構造からはあり得ない長い廊下ができ、その奥の扉から剣を構えた鎧の変異体が現れた。

 アキラは銃を撃ちながら変異体へと向かっていく。変異体が纏う鎧に銃弾が砕けていくのを見たアキラは、銃を回して銃身を握るようにして、助走をつけて変異体に銃を振りかぶった。

 若干よろめいた変異体だったが、すぐに剣を振り回し始め、アキラを後退させていく。振り回す剣の勢いを止めようと銃を剣に当てたが、呆気なく銃は切り裂かれてしまう。丸腰となったアキラは変異体の攻撃を避け続け、振りの大きい攻撃を避けた隙に、変異体の股下を通って後方へ回り込む。

 鎧を纏って図体が大きい変異体は簡単に振り向く事が出来ず、左右に体を振られ、壁に体を激突され続けていく。度重なる壁への激突によって変異体は目に見えて疲弊し、そんな変異体の変化を見逃さなかったアキラは、変異体の足を引っ張って前へ倒し、手に持っていた剣を奪い取って、鎧の隙間に剣を刺し続けた。

 鎧の変異体は絶命したかに見えたが、突如鎧が砕け散り、中に閉じ込められていた変異体が現れた。イモムシのように太く長い体の先には穴があり、その穴を広げてアキラを飲み込もうとする。アキラは剣を下から突き刺し、そのまま変異体の体を切り裂いて両断する。


「はぁ、はぁ、はぁ……次は、どんな化け物だ!」


 次から次へとくる連戦に、流石のアキラも疲労していた。それでも、アキラは余裕を見せていた。

 すると、鎧の変異体が出てきた通路の奥から建物が崩れていき、アキラは乾いた笑い声を漏らした後、崩れていく反対の方向へ走った。

 あともう少しで窓から脱出出来ると思うや否や、また変化が起き、あったはずの窓が消え、目の前には途方に暮れる程に長い通路が出来た。更に通路の廊下や壁や天井からは手が生え、逃げるアキラの足や腕を掴もうとしてくる。

 アキラは変異体から奪った剣で手を斬って先へ進んでいくが、おびただしい数に対処しきれず、結局建物の崩壊に巻き込まれてしまった。

 

 瓦礫の下に埋もれてしまったアキラ。それでも体をどうにか動かし、前へと進んでいく。小さな隙間が出来ている場所を叩いて隙間を広げ、そこから右腕を外に出して、そのまま全身を外に出そうとする。

 しかし、その先でユウスケは待ち構えていた。ユウスケは口元をニヤつかせながら、瓦礫の隙間から出てきたアキラの右手を踏みにじる。


「どうした? もう終わりか?」


「……」


「フフフ。確か君は、【現実】で生きたいと言っていたな。これが現実だ。強い者に踏みにじられ、身動きが取れずに現実の重さに圧死していく。最期の瞬間は、こうしておけば良かったと、無駄な後悔をして絶命する。それが現実で生きるという事だ」


「……」


「……なぁ、これで分かったろ? 僕と一緒に理想へ逃げよう」


「……」


「君はこれまで散々な目に遭ってきた! 人の死、裏切り、終わる事の無い苦痛の連鎖! 何か現実で生きていて良かった事なんてあったか!? 現実に生きたいと思えるような事があるか!?」


「……」


「僕は現実というものを理解している! どれだけ悲しくても、他人に理解されない! それが現実だ! 孤独という牢獄にいつまでも囚われる地獄だ! 前に君に倒された時に生きてみたいと僕は言った! だがあれは! あれは…………君がいたからだ」


 ユウスケはアキラの右手を踏んでいた足をそっとどかし、しゃがみ込んで隙間の中を覗いた。中は暗くてよく見えなかったが、そこにアキラがいる事は強く感じ取っていた。


「……僕は、本心を晒す事が出来なかった。他人と接する時は、まず相手の情報を読み取り、自分が上の立場になるようにする。同等の関係にはなりたくなかった。他人を駒にする事だけを考えていた……でも、理解はされたかった」


「……」


「君は違ったよ。僕に真正面からぶつかって、僕を理解しようと歩み寄り、僕と生きたいと手を差し伸べてくれた。嬉しかったよ、本当に。僕が作ったとはいえ、ようやく理解者が出来たんだと心から思った……だからこそ、僕は認めたくなかった。僕が君を……羨ましく思ってしまう事に。君に出来て、僕には出来ない。同じ存在として作ったはずなのに、僕と君では大きな差があった。今だってそうだ。こんな汚い手を使って君を消耗させなければ、僕は君の上に立つ事は出来ない」


「……」


「許してくれ。僕は変われないんだ。君のように、強くなんかなれない! 怖いんだ! 手にしたものが、徐々に消えて無くなっていく未来が! 消耗品だらけの現実なんかより、悲しみを埋め尽くす事が出来る理想に逃げたいんだよ! でも僕一人だけじゃ嫌なんだ! 君が一緒じゃなきゃ、嫌なんだ! 嫌だ、嫌……なんだ……」


「それじゃあ連れてってあげるよ!」


「「っ!?」」


 自らの想いを打ち明けたユウスケ。それを受け止め、ユウスケに掛ける言葉を探すアキラ。そんな二人の空間に、異物が混入した。その異物とは、アキラにユウスケを殺すように仕向けた黒い存在であった。


「お前、誰だ……何故、何故ここに来れるんだ!? ここには僕と彼しか来れない!」


「自己紹介しようか! ボクは……え~っと……あ、そうだった! ボクって名前が無いんだった! アッハハハ!!! まぁとりあえず【死神】って呼んでいいよ! カッコいいし!」


「死神? そんなの、いるはずが……」


「ユウスケ……!」


「もぉ~、結局ボクがこうして出向く展開になっちゃったか~。ま、最初から分かってたけどね! あんな短剣で簡単に殺せたら、もっと前に死んでただろうし!」


「短剣?……あー、そうか。貴様が、アキラに妙な事をした奴か!!!」


「ユウスケ……! 逃げろ……!」


「逃げない! 逃げる必要ないよ! あんな奴、僕一人で―――」


 ユウスケが能力を使おうとした瞬間、ユウスケが持つ全ての能力、そしてアキラの再生能力までもが死神の体の中へと吸い込まれていった。


「没収~! 君達のようなゴミに、こんな特別な能力は相応しくないよ! 特別であるべきは、ボク達【シシャ】だけで十分! さぁ、終わらせようか! ちっぽけな君達の存在を!」


 地面の砂が吹き荒れ、暗い世界が錆びつき、影に塞がれた黒い太陽が現れる。遠くからは笑う断末魔が鳴り響き、生ある存在の生命力を吸い取っていく。瞬く間に世界は、彼らが存在する次元へと塗り替わった。

 高らかに終わりを宣言する死神。浮遊する小さく偉大な予言者。死をもたらす一つ目の巨大な黒鳥。始まりと終わりの塔。全ての物語を管理する【シシャ】の降臨である。

次回


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