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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
三章 正面衝突
82/93

激闘

 入り口の扉を突き破って吹き飛ばされたアキラ。地面をバウンドしながら転がっていき、ようやく立ち止まったところで、駆けて来たメシアの飛び蹴りを喰らい、また地面を転がっていく。更にメシアは駆けていき、転がっている最中のアキラをサッカーボールのように蹴り放ち、離れた場所に建つ廃墟の壁に激突させた。

 アキラが背中を抑えながら痛みを感じていると、突風の如き速さで駆けて来るメシアが、自分に向けて飛び蹴りを放ってくるのを目にする。アキラは素早く体を動かして躱し、壁に激突したメシアの後頭部を掴んで、顔面を壁に叩きつけた。間髪入れずに今度はメシアの体を反転させ、顔と胴体にパンチと肘の連撃を叩き込む。

 連撃の最後の一撃を入れようとした時、メシアの六つの腕にアキラの体は掴まれ、天高く投げ飛ばされてしまう。空に浮かんでいるや否や、飛び上がってきたメシアにアキラの足は掴まれ、廃墟の屋上に投げ飛ばされる。アキラの体は屋上の床を突き破り、三階下まで突き破り続けた。


「がぁはっ!? くっ…ヘヘヘ、無茶苦茶だ……!」


 メシアの常人離れした力と素早さに翻弄され、アキラは自分のペースを掴めずにいた。穴が開いた天井を見上げると、既にメシアはアキラの方へ落下してきており、アキラは今いる部屋から廊下へ飛び出た。

 廊下を走っていくと、建物全体が揺れ動くような落下音が鳴り、振り返ってメシアを迎え撃とうとするが、メシアは現れなかった。気味の悪さと嫌な予感を覚えたアキラ。

 すると、下の階からこの階に上ってくる足音が聴こえ、階段の方へ向くと、メシアがしゃがみ込んでこちらへ飛び上がろうとしていた。


「そっちかよ!?」


 一跳びで飛び上がってきたメシアをアキラが蹴り飛ばすと、メシアは蹴り飛ばされた先の壁を蹴って、六つの腕を突き出した状態でアキラの胴体に突っ込んだ。アキラの胴体に衝撃が走る瞬間、アキラの体は壁を突き破って外に放り出された。

 地面に亀裂が作られながら転がっていき、さっきまでいた廃墟が小さく見える頃、ようやく止まった。アキラはボロボロになったパーカーを脱ぎ、それを手にしながら、必ず真正面から来るメシアを待ち構える。

 

「闘牛ショーよりスリルがあるな……!」


 瞬きせずに真正面を見続け、突然現れたメシアの姿を視認するや否や、アキラは突っ込んできたメシアを避けながら、メシアの首にパーカーを巻き付けた。メシアを捕まえられたと思われたが、突っ込んできていたメシアの勢いがアキラの予想を遥かに上回っており、アキラはその場に踏みとどまる事が出来ず、引きずられていってしまう。


「ぐぐぐぐっ!」 


 足を削りながらメシアの勢いを抑えていき、十分に勢いを殺した瞬間、アキラはメシアを持ち上げ、頭から地面に投げ落とした。追い打ちをかけようとマウントを取ろうとするが、倒れた状態からでもメシアの六つの腕が襲い掛かり、近付く事は叶わなかった。

 立ち上がったメシアは、六つの腕と蹴りを上手く使い分けながらアキラに迫る。迫る連撃をアキラはいなしていくが、手数の違いに追いつかず、次第に攻撃を喰らいはじめてくる。


(防御が追い付かない! なら、攻める!) 


 メシアの連撃を喰らいながら、チャンスを待ち続け、メシアが背中の腕でパンチを放った瞬間、アキラは動いた。そのパンチを避けながら腕を掴み、関節部分に掌底を放ち、メシアの腕の一つを使えなくした。

 流石のメシアも焦ったか、慌てた様子で反対側の腕でアキラを殴ろうとする。そんなメシアとは反対に、アキラは冷静であった。アキラは同じようにメシアの腕の関節を折り、流れるようにもう二つの背中の腕を折っていった。背中の四つの腕が無くなれば手数は同等。アキラは今までやられたお返しといわんばかりの連撃をメシアに叩き込み、連撃の最後の一撃を今度こそ叩き込んだ。

 地面を転がっていったメシアは倒れたまま動かず、その様子を見て、アキラは今まで耐えていた痛みに表情を歪ませた。


「うぐっ……っつぁ!? はぁ、はぁ、死ねないってのは、やっぱ辛いな……!」


 傷は完治しているが、それまでの痛みは体に残り続けたまま。アキラは息を整えて痛みを飲み込み、その場から立ち去ろうとした。


「フフフ」


「…………はぁ~! 頼む頼む、聞き間違いであってくれ……」


 嫌々ながら振り向くと、倒れていたはずのメシアが立ち上がっていた。頭から流れた血が顔を赤く染め、痣だらけになった全身は震えている。

 それでも、メシアは嬉しそうに笑っていた。全身の痛みに、それに伴う快楽に、そしてそれを与えてくれた強敵の存在に。


「あんた、最っ高!!! あんたが雄介の偽物だとか、もうどうでもいい!!! これよこれよ!!! この痛みと気持ち良さ!!! 殺し合ってるって感じがいいわ!!!」


「……気持ち悪い」


「あはぁ!!! その冷ややかな眼もいいわ!!! さぁ、もっと私を傷付けて!!! あなたの全てを私にぶち込んで!!!」


「……はぁ、なんだかな……懐かしい感じがするよ、その気持ち悪さ」


「フヒヒヒハハハハ!!! さぁ、第二ラウンドォ!!!」


「ああ、第二ラウンドだ」


 第二ラウンドの宣言が下されるや否や、メシアは背中の腕を切り捨て、アキラに突進した。

 パンチや蹴りが軽快に繰り出されてくるが、アキラはそれらを冷静にいなしていき、隙を見つけては一撃入れていく。  

 メシアにとって唯一の勝ち筋である手数を失った今、メシアがアキラに勝つ事は不可能となっていた。変異体の力と素早さはあるが、どの程度の力かは既に把握され、素早ささえも見切られていた。それがどういう結果になるかは、徐々に明らかとなっていく。

 

(あぁ、いいわ……ほんと、久しぶりね、こんなに追い詰められたのは……そう、そうよ。確かあの時も、私は雄介に……彼は姿こそ雄介だけど、私の知っている雄介じゃない。でも、なんだろう……私の知っている雄介より、好きかも……私って、浮気性なのかな? まぁ、そもそも脈無しだったし、気にする事はないか……あぁ、それにしても、本当に良いわ! 叶う事なら、もっとこの人と……殺し…………合い、た―――)


 メシアは倒れた。完膚なきまで打ち負かされたというのに、その表情は、幸せに満ち溢れていた。

 アキラは倒れたメシアの脈を確認すると、微かではあるが、まだ生きていた。


「……はぁ。まぁ、聞きたい事もあるし、仕方ないか」


 そう呟きながら、アキラはメシアを背負い、どこか人気の無い場所を探しに歩き出した。丁度その頃、雲に隠れていた夕陽が姿を現し、二人の姿を照らし出した。


「……ふっ。不思議と、いい気分だ」 

次回


「思い出は夜風と共に流れて」

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