ようこそ、オカルト研究部へ
高校生になってから1週間が経ち、北崎雄介の友人達はこれといった不便も不安もなく、高校生活を送っていた。華やかに想像していた高校生活も、こんなものかと妥協し、毎日同じような日々が続いていく。
しかし、一つだけ気がかりな事があった。それは安原の店で別れてから、ユウスケが学校を休み続けている事だ。学校側にも、ましてや昇達にも連絡は入っておらず、休んでいる理由が不明だった。
「なぁ、雄介の奴、流石に休み過ぎじゃないか?」
夕陽が差し込む放課後の教室で、昇はいつものようにマモルとレイカに呟いた。
「またその話? 別に気にする事じゃないでしょ。雄介が急に行方をくらます事なんか、今まで何度もあったじゃない」
「でもさ、それは前の話だろ? 今の雄介は記憶を失ってるし、もしかしたら帰り道を見失ってるのかもしんねぇじゃん」
「それは……あり得るわね」
「…やっぱりもう一度捜そう。もし昇君の言った通りだったら、今頃雄介君は助けを求めてるかも」
「よーし! それじゃあ、北崎雄介捜索大作戦、開始だ!」
「昇、ふざけないで」
「すんません…」
三人は学校から出ると、そのままユウスケの捜索を開始した。昇は人通りの多い場所で歩行者に聞き込み調査を行う。逆にマモルとレイカは、人があまり通らない道に赴き、ユウスケの名前を呼びながら捜す。
2時間が過ぎ、三人は一度合流し、手に入れた雄介に関する情報を共有しようとする。しかし、誰一人としてユウスケの情報を見つけられず、いよいよ危機感を覚え始めていた。
「なぁ、これマジでマズいんじゃ?」
「雄介君、本当に迷子になっちゃったのかな…もしかして、誘拐されたんじゃ」
「そんな訳―――とは、言えないわね……あー、もう! どこ行ったのよアイツ!」
「みんな? どうしたの?」
三人がユウスケの捜索に苦戦していると、部活動を終えて帰宅途中の恵美と会った。
「恵美! ねぇ、雄介ってどこにいるか知らない?」
「雄介?……ごめん、分かんない」
「分かんない? お前ら、お隣さん同士だろ?」
「……ちょっと今は、顔を合わせられなくて」
「へ~、珍しいな。お前らって、昔から仲良かった印象があったがな……って違ーう! 恵美も行方を知らないってんなら、尚更マズいぞ!」
「…ねぇ、公園は捜したの? 流れ星公園」
「「「……あ」」」
三人は見逃していた有力候補の存在に、今更ながら気付いた。気付いたからには行動が早く、三人は無言のまま流れ星公園へと駆けだした。
その後ろ姿を見ていた恵美は、三人に背を向けて帰ろうとするも、自身が気になっていた事をユウスケ本人に確かめる為に、三人を追いかけていった。
夕陽が沈み、夕焼け空が星空に姿を変えた頃、四人はようやく流れ星公園に辿り着いた。荒れた息を整え、ユウスケの捜索を始めようとした矢先、呆気ない終わりを迎えた。
ユウスケがいた。焚火の前に置いてある椅子に悠々と座って本を読み漁っており、その後ろにテントまで設営している。足元に積み重なっている何十冊もの本を見るに、行方をくらましていた一週間、ユウスケはここにいたのだろう。
「雄介? おぉ、雄介!」
久しぶりに見た親友の姿に、昇は感動のあまり、走り出した。ユウスケも昇達の存在に気が付き、読んでいた本を地面に投げ捨てた。
「雄介ー!!!」
昇のスピードは増していき、ユウスケとの距離が縮んでいく。初めこそ、再会出来た感動で走り出したが、今は違った。自分達があんなに心配していたのに、当の本人は呑気に本を読んでいた。そんなユウスケに、昇は苛立っていたのだ。
だからか、昇は【駆け寄る】という事を【助走】として意味を変え、十分に助走をつけて飛び上がった。
「死にさらせぇぇぇぇ!!!」
腹の内から上げた怒号と共に、昇は豪快な飛び蹴りを放とうとする。その昇の姿を見たユウスケは、慌てる事も避けようともせず、椅子の横に置いていた水が入ったバケツを手にした。それは昇の飛び蹴りが、自分まで届かない事を分かっていたからだ。
案の定、昇の飛び蹴りはユウスケに届かず、焚火に背中から落ちてしまうという、最悪な結果になってしまった。
昇が焚火に落ちた瞬間に、ユウスケは水が入ったバケツを豪快にかけ、お陰で昇は少し熱い思いをした程度で済んだ。
「熱ッ!? 冷た!? ど、どっちだ!?」
「久しぶりだね昇。早速で悪いんだけど、もう一度火を起こしてくれ。薪ならテントの中にまだあるから」
「あ、了解です……じゃないぞ!? お、お前! 俺達がどれだけ心配したか―――」
「助手君!? 一体今の音は何だい!?」
昇の話を遮るように、テントの中から黒い白衣を着た女性が慌てて出てきた。その女性の姿に、ユウスケを除いた四人は驚愕した。右目に眼帯を着け、首や腕には包帯が巻かれてあり、一番の驚きは、身長が優に2mを超えていた事だった。
「「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」」
夜の公園という事もあってか、女性の姿に四人は叫び声を上げてしまった。ビックリしたのは女性もであった。四人の絶叫と、見知らぬ男女がいる事に怯えた女性は、咄嗟にユウスケの背に隠れた。しかし、自身の高すぎる背の所為で、全然隠れられていなかった。
「何をそこまで声を上げる必要がある? 琴音も何故怯えてるんだ?」
「だ、だって…し、知らない人、あんなに沢山……」
「あれは友人です。昇、マモル、レイカ。あとその後ろにいる褐色のが恵美」
「…北崎君、友達…いたんだ……」
「ええ、そうらしいです」
琴音という女性は、やけにユウスケと親密にしていた。強くしがみつくようにユウスケに抱き着き、ユウスケは特に気にもしていない様子だった。
「…ええっと、さ。とりあえず、今まで何してたかアタシらに教えてくれない?」
「僕の後ろにいる琴音が立ち上げた非公認部活動【オカルト研究部】に所属する事になった。それで部の活動として、ここで調べものをしていた」
「もしかして、一週間もここで?」
「北崎雄介の家には居づらくてね。おまけにオカルト研究部には部室は存在していない。そこでこの場所を選んだという訳だ」
「だ、だったらよ! 俺らに一言何か言ってくれれば良かっただろ! 俺達、心配してたんだぞ!?」
「ああ、そうだな。それに関しては僕に非がある。反省点だ、次回は改善する」
そう言うと、ユウスケはテントの中から薪を何本か取り、再び火を起こそうとする。しかし、上手く火を起こす事が出来ずにいた。
「そ、それじゃあ火は起きないよ。僕に任せて、雄介君」
「そうなのか?」
「マモル、お前出来るのか!?」
「僕、最近キャンプに興味があって。それで色々調べたり、火の起こし方とかも実践してるんだ」
「へぇー、意外な趣味ね」
「フフ。こんな風に、友達とキャンプするのが夢なんだ」
「それじゃあさ! 今からキャンプしようぜ! 明日は休みだし、このまま朝まで語り明かそうぜ!」
「それはいい。また僕との思い出話を聞かせてくれ。琴音も語るか?」
「へぇっ!? う、うん……北崎君が、いるなら…いいよ」
「はぁ…本当突然ね、私らって。まぁ、別にいいけど。恵美はどうする?……恵美?」
レイカが後ろを振り向くと、そこに恵美の姿は既になかった。
「帰ったのかな?……次は、恵美も一緒にやりたいな」
突発的に開催されたキャンプ。星空の下、ユウスケ達は焚火を囲んでそれぞれの話題や思い出話で盛り上がり、朝まで語り明かした。
【人物紹介】
杉浦 琴音 17歳 女性
・非公認部活動 オカルト研究部の部長。
・2m近い高身長で、人とのコミュニケーションが苦手。
・眼帯や体に包帯を巻いているが、本当に怪我をしているかどうかは誰も知らない。
次回
「カエル男」




