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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
五章 全ては幻と消える
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答え合わせ

 ゲートを通って、独り研究施設内に辿り着いた雄介。施設のどこかにいるユウスケを探すべく歩き回っていたが、どこにも姿が見当たらなかった。

 それどころか、施設内はディスクの映像で視ていた時とは違い、部屋の中は荒れ果て、通路の壁には所々に血と思わしき赤い線がこびりついていた。極めつけは、とある部屋で見つけた新聞であった。新聞には2000年の8月11日と記載されており、今から20年も前の物である。

 

「20年前……それじゃあ、俺が視たディスクの映像は20年前の出来事だったのか…いや、施設内の荒れ具合から察するに、もっと前の出来事? どちらにせよ、今は2020年…だよな?」


 今いるこの世界が、ゲートを通る前と同じ時間軸なのか疑問に思う雄介。持っていた新聞をベッドに置こうとした時、枕の下から何かがはみ出ているのを目にした。手に取ってみると、それは鍵であり、鍵に付けられた札には【地下室】と書かれている。 

 すると、雄介の頭の中で実際は無いはずの記憶が蘇り、この地下室という鍵がどこで使う物なのかが理解出来た。

 雄介は部屋から出て、真っ直ぐに階段へと向かうと、下へ通じる階段を降りていく。下へ降りると、明かり一つ無い暗闇の先に、異様に目立つ赤い扉が存在していた。暗闇の中を進んでいき、赤い扉の前にまで立つと、ディスクで視た時に扉を縛り付けていた鎖が足元にバラバラに砕けていた。

 

「この先か……」


 持ってきた鍵でロックを解除し、雄介は赤い扉をゆっくりと開けていく。扉の隙間から中の様子を見ると、アスファルトの壁が見えた。扉を完全に開き、中に入ると、その部屋の異様さに雄介は目を見開いた。

 広い部屋の壁には無数の紙が乱雑に貼られており、床にも同様の紙が散らばっている。その内の一枚を拾って見ると、見知らぬ誰かの写真と名前が紙に記されており、下の方に【適合失敗】と書かれていた。

 その一枚だけでなく、他に床に散らばっている紙や壁に貼られた紙にも同様に写真と名前が記され、【適合失敗】と書かれている。正確な枚数は数え切れないが、ゆうに100を超えていた。

 それらの紙を見ていく内に、他よりも目立つように額縁に入れられて飾られていた紙があった。額縁のガラスについた埃を手で払うと、中に飾られた紙に記された人物が判明した。


「北崎、雄介?」


 それは自分の名前であった。しかし、奇妙な事に写真は載っていない。他の紙には写真があったが、雄介の物には不思議と写真が無かった。

 何故自分だけが? と疑問に思いつつ、書かれていた内容を流し見して下の方に来ると、そこには【適合成功】と書かれていた。


「驚いた。もう来たんだ」


「ッ!?」


 後ろを振り向くと、そこにはユウスケが立っていた。ディスクで視た時と同様、雄介の幼い頃と同じ姿で。


「来いって言ったろ。だから来てやった」


「でも行き方は教えてないよ?……誰かから聞いたね? ゲートの存在を。知っているとすれば、君を監視するように送り込んだネムレス、かな?」


「ああ、そうだ」


「おかしいな。そんな手助けをするように作った覚えはないんだけど」


 ユウスケがそう言うと、雄介の後ろに飾られていた額縁の埃が落とされているのを見て、ニヤリと笑った。


「それ、見たんだ」


「…ああ」


「どう感じた?」


「…何も。ただ不思議だと思っただけだ」


「なんで自分の名前が書かれた物があるかって? じゃあ何も思い出せてないんだ」


「俺に何を思い出せっていうんだ? この研究施設も! この部屋も! 俺の記憶には無いんだよ!」


「本当に何も思い出せないの? ここまで来て? 自分がどうやって生まれたか、何の為に外に出ていたのかも?」 


「何の為だ?」


「僕の為」


「なんだと?」


「君は僕が外に出る為に作られた。僕が外で生きられるように作った新しい体さ!」


 すると、ユウスケは足元にある紙を何枚か拾い、記されていた内容を声に出して読み始めた。


「千田達也。歳は28で男性。外での生活に耐えられず、適合確認する前に死亡。松本彩。歳は20で女性。初期段階は充実した大学生活を送っていたが、同性の嫉妬からイジメに発展し、更には信じていたはずの恋人にまで見捨てられ自殺…もちろん、適合は失敗。後は……まぁ、みんな失敗作だったよ」


「人間を作ったっていうのか? それじゃあ、ここにある紙に書かれている人達は全員?」


「そう、僕が作ったんだ。 僕をカウンセリングしに来た人達から外の世界の情報を集め、それを基に作ったんだよ。でも全部失敗作だった……君以外はね」


「どうして俺だけ!」


「作り方を変えてみたんだ! 僕の考えを具現化して作った物は周囲の環境や人と適応出来なかった。そこで、外の人間を材料にしてみようと考えた。使ったのは―――」


「お前を担当していた北崎先生か!?」


「正解! 初めは上手くいかないと思ってたけど、存外上手くいった。僕と同じ容姿にしたからか、あるいは北崎先生が思ったよりも僕に心を許してくれたお陰か、適合率も高かった」、


「あの人はお前に親身になってくれた人だったんだぞ? 何も思わなかったのか?」


「あぁ、確かに罪悪感はあったよ。僕とまともに話してくれたのは彼だけだったからね……でも、いつまでも死体を保存出来る訳じゃない。使える内に有効に使わないと」


「死体? 殺したのか!?」


「どういう訳か、彼は色々と知り過ぎた! この施設の事や、僕の存在について! そうなれば前のように接してくれなくなる! だから怖がられる前に殺す必要があったんだよ!」


「それで分かった! なんで俺以前の犠牲者達が失敗したと思う? お前の狂った考えを持ったまま生まれたからだ! 自分の恐ろしい部分を他人に隠し! 他人を拒絶して関係が上手くいかず! そして死んでいった!」


「じゃあどうして君は生きてる!? 君にも僕が含まれているのに、どうして君だけが外で生きられたんだ!?」 


「それは!……それは……」


 ユウスケの反論に、雄介は答えを出せずにいた。実際、雄介もそうだったからだ。他人に本性を隠し、決して親密になろうとしない。他の実験体と同じように、雄介自身も他人を拒絶していた。

 だからこそ、雄介はどうして自分だけが上手く生きていられるのかが不思議だった。考えてみようとしたが、それをユウスケに訴えかけたとしても、きっと彼は理解出来ないと判断し、考えるのを放棄した。


「…お前には、理解出来ない」


「理解出来ない? 説明が出来ないの間違いじゃ?」


「どちらにせよ、お前には必要が無い…犠牲になった人達の為にも、お前をここで殺す」


「ようやく本題か! それじゃあ早速始めよう……これが、最後の実験だ」

次回


「急成長」

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