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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
五章 全ては幻と消える
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ロールプレイング

「雄介君は、どうやってここまで来たの? 誰かから聞いたの?」


「ここまで来た理由はさっきも言った通り、俺に似たガキを殺す為だが、ここまでの道は俺の感覚だ。ほら、説明書を読まずにゲームを始めるとかと同じさ」


「という事は、ゲートの存在を知っている訳じゃないのね」


「ゲート?」


 すると、宮代葉月は何も無い場所に右手を伸ばした。雄介は伸びていく宮代葉月の右手を目で追っていくと、ある一定の場所で指の先から徐々に消えていくのを目にした。


「……ん? んぇ!?」


 まるで初めてマジックを見た子供のように雄介は驚いた。指先が消えて見える宮代葉月の右手に近付いて触れてみると、現実に宮代葉月の指先は消えていて、その非現実的な現象にまた驚いた。そんな雄介を見て、宮代葉月は雄介に気付かれないよう笑みをこぼす。  


「これ、どうなってんですか?」


「私は今、ゲートに触れてるの。ゲートっていうのは、人と人を繋ぐ道の入り口。形こそ目に見えないけど、人の数だけゲートは存在し、どれだけ離れていても、自分と相手が繋がっていればゲートは開く。」


「今まで僕の傍に現れていたのは、そのゲートを通ってきていたから?」


「まぁ、同じ街に住んでたし、ゲートを使わなくても会えたけどね……でも、あの花火大会で雄介君と離れてから繋がりが一時的に切れてしまってた。原因は私が意識を失っていた隙に、他の人が雄介君と繋がった。その人物が雄介君が会いたがってる、雄介君に似た子供よ」


「あいつは自分の事をユウスケと言っていたが、それは北崎って男がつけた名前で、本当の名前があるはずだ。第一、あのガキは何者なんだ?」


「あの子供については謎が多いけど、知ってるとすれば…そうね……神様?」


「神~?」


「あの子供について知ってるのはそれくらいしかないけど、あの子供から作られたのが私達、【ネムレス】よ。ネムレス達には三つの役割があって、研究を資料にまとめる研究者。外の世界から被検体を連れてくる招き手。対象を監視する監視者。私は三つ目の監視者にあたるネムレス。監視対象は…」


「…俺か。それじゃあ、今まで俺の傍にいたのは、単に監視という役割を全うしてただけって事か…そっか…」


 今まで鬱陶しい程に付き纏ってきた理由が好意からではなく、単なる役割としての行動だった事に、雄介は傷付き、そして恥ずかしくなった。自分が好かれていると自惚れ、例えどんな酷い言葉を言っても宮代葉月は変わらず傍にいてくれると決めつけていた。

 だが実際は違い、好かれているように見えていただけで、傍にいたのも監視者としての役割を果たす為。宮代葉月が監視する対象が雄介でなかったら、そもそも関わる事もなかった。

 そんな真実に雄介は傷付き、それによって自分が宮代葉月に対して、強く依存していた事に気付く。


「そうね、確かに最初は監視対象ってだけだった。でもね? 今は違うよ」


「…違う?」


「私が雄介君を監視していたのは、雄介君を外敵から守る為。それ以外の目的も、感情も持たないようにされていた……でも、雄介君と関わって、あなたの優しさに触れて、私は一人の人間として、あなたを好きになった」


 すると、宮代葉月は雄介の右手を取り、自分の左胸にその手を当てた。右手から感じる宮代葉月の温かさと柔らかさに、雄介は恥ずかしさと困惑が混じった複雑な表情を浮かべる。


「私の鼓動を感じる? 私達ネムレスは人の形で作られているけれど、それは外側だけであって、中身はとても人間とは呼べない化け物だった。なのに、今の私は無いはずの鼓動を宿していて、感情も持つようになった。雄介君、私はね? 私は人間になれたんだよ」


「そう…なんだ……」


「雄介君と再び繋がれた時に、雄介君が研究施設に向かっている事を知った時は焦ったよ。あんな別れ方で二度と会えなくなるのは嫌だから……」


「……あの時は、宮代さんを守る為にやった行動で。好きで崖から落とした訳じゃ―――」


「分かってる…分かってるけど、それでも嫌でしょ? だから私は雄介君を止める為にゲートを通ってきた……ねぇ、雄介君。やっぱり研究施設に行く考えは変わらない?」


「…ごめん」


「行っても、辛い事だけが待ってるよ。だったらさ、過去も今も忘れて、私と一緒に自由に暮らそうよ」


「それは出来ない。過去も今も、忘れたくても忘れられないものだから。例え忘れる事が出来ても、いつか思い出す時がくる。そうやって何度も繰り返して、目の前の問題を避けて生きるのは地獄だよ。だから、今なんだ。今やらなきゃいけないんだ!」


 真っ直ぐで危うい雄介の眼を見て、宮代葉月は何も言えなくなってしまう。ここで雄介を否定する言葉を言ってしまえば、二人の関係に大きな溝が出来る気がして。

 断腸の思いであった。宮代葉月は大きく深呼吸をして自分の気持ちを押し殺し、これ以上雄介に想いを寄せてしまう前に、ゲートの使い方を教えだした。


「…分かった。それじゃあ、雄介君。目を閉じて……暗闇の中で、今あなたが会いたい人物を思い浮かべて」

 

「思い浮かべる……ぅぅ…ぐぅ……!」


「集中して。あの子供と関りを持ってるのは雄介君だけ。ゲートを開けるのも、あなたしかいないの」


 すると、雄介の閉じた視界の中に、ディスクで視た赤い扉が出現した。その扉に手を伸ばしていき、ドアノブを捻って扉を開けた。

 扉が開いた先の景色は、あのディスクで視ていた研究施設の中であった。扉の先に足を踏み入れた瞬間、さっきまで感じていた心地よい風や木の匂いが消え、人工的な冷たさや薬品の臭いがし始める。

 ゆっくりと目を開けると、雄介が立っている場所が、閉じていた視界で見ていた研究施設へと移っていた。


「出来た……宮代さん」


 後ろを振り返るが、そこには真っ白な壁があるだけで、宮代葉月の姿は無かった。


「……ここからは、独りだ」


 突然の孤独に寂しさを覚えつつ、雄介は研究施設内のどこかにいるユウスケのもとへと足を進み始めた。自分の存在を確かめる為、ユウスケを殺す為、そして未来へ生きる為に。

次回


「答え合わせ」

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