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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
五章 全ては幻と消える
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姉弟喧嘩

新章開始。

 忘れていた記憶と様々な謎を抱え、ディスクの空間から目覚めた雄介。自分が何者なのか、その答えはディスクの中で出会った自分と瓜二つのユウスケが知っており、雄介は自分の過去や謎を解き明かす為、ユウスケが待つ施設へと向かおうとする。

 しかし、雄介が目覚めた場所、風車が辺り一面に咲く地の中心に、オリジナルが雄介を待ち構えていた。


「やっと目が覚めたね。どんな夢を視ていたの?」


「…ここはどこですか?」


「ん~、どうだろうね? 私もよく分かんないや。少なくとも、ここには私達以外、誰もいない所だよ」


「どうやって僕を…あの時、僕らが初めて顔を合わせ、眼を合わせた時に、あなたは僕に何かをして、僕を目覚めなくさせた。起きた時の体の様子から察するに、一ヶ月は経っているはず」


「あなたの脳…というより、記憶の中と言った方が正しいのかな? そこに頑丈に固められた何かが見えて、そこを破壊してあげただけよ」


「…そうですか。ありがとうございます、お陰で良い夢視れましたよ」


 煮えたぎる苛立ちを隠せず、雄介はオリジナルの横を通り過ぎて去ろうとしたが、オリジナルに手首を掴まれて止められてしまう。

 

「どこに行くの?」


 オリジナルの掴む力は徐々に増していき、捕まれていた雄介の手首が、絞った果物のようになっていく。苛立っていたのは雄介だけではなかった。


「勝手にどこかに行かないで。ここには雄介に悪い事をしようとする奴がいないし、現れたら私が壊してあげる。ここで私と一緒に、平穏で幸せな日々を過ごしましょうよ」


「…放してください」


「放す訳ないでしょ。そんな表情のあなたなら、尚更」


「そうですか…」


 そこからお互い何も話さず、何も動かなくなった。ただ風が通り過ぎていく心地よさと、風車のカラカラという音だけが流れていく。

 唐突に雄介が振り向きざまにオリジナルに殴りかかった。しかし、それを読んでいたオリジナルは殴りかかってきた雄介の拳を掴み、巴投げに似た形で雄介を後ろへ投げ飛ばす。投げ飛ばされた雄介は、地面に咲く風車を壊していきながら転がっていく。

  

「ぐぐっ…!」


「何度言っても分からないのなら、躾をしなきゃだね」


「偉そうに…!」


「フフ! アハハハ!」


 オリジナルは歓喜の声を上げながら周辺の地面を隆起させ、自分と雄介を宙に浮かばせていく。初めて見るオリジナルの規格外な能力に雄介は驚き、少しだけ冷静さを取り戻せた。 

 隆起した地面は既に相当な高さにまで浮かび、落ちればガラスのように体が砕け散ってしまう。再生能力のある二人であっても、しばらくの間、再起不能になってしまう。


「姉弟喧嘩ってやつだよ! 楽しもうね、雄介!」


「はは……ちょっと、勝てそうにないな…」


 武器も無い状態で、自分よりも格闘戦に長けたオリジナルに勝ち目を見い出せず、まだ何も仕掛けられていないというのに、雄介は追い込まれていた。

 しかし、雄介はここで立ち止まる訳にはいかなかった。あのディスクの映像で視て、出会ったユウスケに、自分自身の謎を解き、ユウスケを殺す為。その為には、ここで立ち止まる訳にはいかなかった。

 オリジナルの足場が動き出し、雄介の方へ一直線に向かってくる。雄介は構えを取って、オリジナルがどう動いてくるか、頭の中でイメージしながら待ち構えた。

 だがオリジナルの方に気を取られ過ぎた為、横から接近してきた足場の存在に激突寸前まで気付かず、ぶつかった衝撃で足場から落ちそうになる。

 なんとか踏みとどまる事が出来たが、今度はオリジナルの飛び膝蹴りが顔面ダイレクトに当たり、結局足場から落ちてしまった。幸運な事に、落ちた先には別の足場が位置していた為、地上に落下してしまう事は避ける事が出来た。

 顔から感じる痺れと痛みを感じながら、雄介が上を見上げると、既にオリジナルは次の行動に移っており、雄介に向かって蹴りを振り下ろしかかってきていた。その蹴りを瞬時に腕で防いだ雄介であったが、オリジナルは瞬時に体を捻り、もう一度蹴りを放ち、今度は雄介に蹴りを当てる事に成功した。蹴りを喰らって再び足場から落ちそうになる雄介。

 しかし、いつまでもやられてばかりではなかった。前のめりに倒れていった雄介は地面に手をつき、力を溜める様に一瞬足を折り畳み、一気に足を伸ばしてオリジナルの腹部に向けて蹴りを放つ。

 形勢逆転。このままこっちの勢いに変えようと雄介は体勢を整え、オリジナルの懐に入り込み、オリジナルの顎に向けて掌底を放つ。

 雄介の放った掌底は直前で避けられてしまうが、間髪入れずに雄介はパンチの連続を繰り出す。

 オリジナルは雄介の連続パンチをいなし、がら空きになった横腹にパンチを素早く入れ、雄介の動きが止まった所に、今度はこっちが連続でパンチを当てた。オリジナルはふらつく雄介にトドメの一撃の回し蹴りを放つが、高く蹴りを上げてしまった所為で、オリジナルの蹴りは雄介の頭上を横切っていく。

 薄い意識の中でも、オリジナルの蹴りが外れた事を察知した雄介はオリジナルの体を抱え上げ、地面に叩きつけて馬乗りになる。


(勝った!!!)


 ダメージは雄介の方が蓄積されていたが、馬乗りの状態に持ち込めた。あとは振り上げたこの拳を振り下ろすだけで勝負は決まる。そんな考えをしていた雄介に油断はあった。だが、その油断を加味しても、勝利は確定していたも同然であった。

 しかし、今更になって雄介の良心が芽生えてしまった。芽生えた良心は、振り下ろした拳の位置をわずかにずらし、本来は喉元に当たるはずの拳が地面に叩きつけられた。すんでの所で優しさが表れてしまった自分に対し、雄介は自己嫌悪し、そして安堵した。

 その隙をオリジナルは見逃さなかった。馬乗りにされていたはずのオリジナルは、まるで蛇のように体を動かして馬乗りの状態から逃れ、雄介の背後を取ると、背中にガッチリとしがみついて首を絞め上げた。

 雄介は立ち上がって背中にしがみつくオリジナルを投げ飛ばそうとするが、オリジナルは蛇のように強く、頑丈に雄介に絡みつく。徐々に、そして確実に意識が失いかけていく中、雄介はふらつく足で、意味もなく前へと歩いていた。

 それは意味のない行動であったが、そのお陰で自分達の真下に浮かぶ足場の存在に気付く。距離はおおよそ学校の屋上か、それ以下。いずれにしても、雄介が取る行動は一つであった。

 身を投げた。そして背中を足場の方へ向け、来る衝撃に耐える為に歯を噛み締める。落下した二人は、その先に位置していた足場に激突し、ボールのようにバウンドした二人。雄介の体は足場のギリギリで留まったが、雄介よりも大きくバウンドしたオリジナルの体は、このままいけば地面に落下してしまう。


「ッ!? くそっ!!!」


 雄介は起き上がりきる前に飛び出し、地面へと落下しようとしているオリジナルの手を掴んだ。


「ぐぅ…!」


「……」


「ま、間に合った…ハ、ハハ…嫌になるよ、自分の優しさが」


 口ではそう言いつつも、雄介はオリジナルの手を掴んだ自分に対し、誇らしさを感じていた。掴んでいたオリジナルの手を両手で掴み、そのまま足場に引き上げようとする雄介。オリジナルの体を引き上げかけた所でオリジナルの目が開き、柔らかな微笑みを浮かべ、足場を自身の能力で壊した。

 そんな事をしたオリジナルに雄介は顔を引きつりながらゾッとし、オリジナルは満面の笑みを浮かべた。


「こ、この馬鹿野郎がぁぁぁ!!!」


「アハハハ! 一緒に落ちよ、雄介!」


「ふざけんな! 僕の優しさは何だったんだよぉぉぉ!!!」


 足場が無くなった事で雄介とオリジナルは空中に放り出され、地上へと落下し始める。もう下には足場は存在しておらず、落下の勢いが加速していき、二人は仲良く地上へ落ちた。

次回


「自分探し」

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