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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
四章 記憶のディスク
41/93

ディスク 5

 ユウスケが来てから4日が経った。信頼関係の構築は目に見えた成果があるが、肝心の研究に関しては全く進んでいないと言っても過言ではない。というのも、この施設には設備が整っていないからだ。外から見れば、とても大きな研究施設に見えるが、実際中に入って目にすれば、そこが何も無い巨大な箱だという事がすぐに分かる。部屋は無数にあるが、研究に使う設備はおろか、机すら一つも無い。

 この施設に来て4日。北崎はようやく不審に思い始めてきた。てっきり、新しく建てられた施設だから、後から設備や人員が増やされると思っていたが、そうではないらしい。依然として、この施設に出入りしているのは、北崎と戸田の二人だけのようだった。


(上の人達は何を考えているんだ? こんな所で一体何を研究しろって言うんだ。ユウスケは普通の子供だし…それとも、僕の知らない…いや、知らされていない事が隠されているのか?)


 疑えば疑う程に、あの施設の存在が嘘くさくなってくる。北崎は車のエンジンを切り、腕時計を見た。時刻は定期検査を行う時間よりも、1時間も早かった。


「早く来すぎたな。ここでしばらく仮眠でも…ん?」


 シートベルトを外して楽な体勢をとった所で、施設の窓に人影が通り過ぎていくのを目にした。


「今の、人か? 戸田さんは今日来れないはずだし……」


 北崎は車から降り、施設の入り口に向かった。しかし、施設の入り口に設置されていた監視カメラの存在を目にし、その足を止めた。何故か、姿を見られるのはマズい気がして。

 監視カメラが設置されていない施設の裏に回った北崎は、窓や扉が開いていないかを確認していき、1ヶ所だけ鍵が開いたままの窓から中へ侵入した。

 携帯のライトを使って辺りを照らすと、そこは資料を保管する部屋だった。適当な資料を手に取り、ライトを当てながら確認する。

 その資料には、【ネムレス】と名付けられた被検体の実験内容が記載されていた。この施設で実験が行われていた事に驚く北崎だったが、更に驚いたのは、その実験が何年も前から現在に至るまで続けられていた事。


「聞いてないぞ…こんな、事…」


 他にも資料が並んでいたが、窓から見えた人影の存在が気になり、北崎は部屋から出た。通路には明かりが灯っておらず、携帯から照らされる小さな明かりでは心もとない程に、暗い。

 足元を照らしながら前へと進んでいくが、自分がどこにいて、どこへ向かっているのか見当もつかなかった。

 すると、下の階から扉が閉まる音が聴こえてきた。北崎が今いる階は1階。つまり、地下からの音だ。

 しかし、北崎が聞いていた話では、この研究施設には地下室は存在していないはずだった。暗闇の中を進んでいくと、階段を見つけ、本来は上りしかない階段に、下りが存在していた。


「…なんなんだよ。全然話が違うじゃないか…!」


 存在しないはずの下りの階段を前に、北崎は震えていた。まるで、自分がいた世界とは全く別の世界に通じるような、そんな不気味さが全身を震わせた。

 だが、北崎も好奇心を持った一人の研究者の端くれだ。自分の理解が及ばない物に対し、納得のいく答えを見つける為に、意を決して階段を下っていく。

 階段を下ると、奥から煙のような、濃い暗闇が広がってきていた。感触の無いはずの暗闇に軟らかな感触があり、空気のように体内に入り込んでいくのを北崎は感じた。

 普通の場所ではない。北崎は一瞬にして理解した。さっきまであった好奇心は恐怖に負け、急いで1階へと逃げていった。

 

 そこで世界は静止し、ノイズが走った…と思いきや、そのノイズすらも静止し、今回のディスクの映像が終わる事はなかった。

 自分がまだ動ける事を確認した雄介は、北崎の代わりに暗闇の通路を進んでいく。あくまで映像を第三者視点から見ている雄介が、北崎のように暗闇の感触や不気味さを体験する事は出来なかったが、それとは別の恐ろしさを感じていた。

 その恐ろしさを感じたのは暗闇の奥にある何かだった。 

 

(この奥にある、何か……何かが、僕の恐怖を煽ってくる)


 暗闇の中を進んでいくと、赤い扉が存在していた。自立しているようで、扉を通り過ぎても壁は無く、扉の後ろには暗闇が依然として広がっている。

 明らかに異質な存在を晒す赤い扉を前にし、雄介が感じていた恐怖が更に色濃くなっていく。それと共に、何か大事な忘れ物が、今目の前にある赤い扉の中にある気がした。

 雄介は赤い扉のドアノブに触れ、触れる事を確認し、ゆっくりとドアノブをひねった。扉が開く音が鳴ると同時に、掴んでいたドアノブが破裂し、雄介の体は見えない何かによって、静止していたノイズの中に吹き飛ばされた。

 ノイズを通り抜けた先は、自分が元いた暗闇の世界で、さっきまで見ていた映像が記録されたディスクが粉々に砕け散っていく。


「…なんだったんだ、今の」


 今まで見てきたディスクの映像とは違う現象に戸惑う雄介。銀色の蝶はそんな雄介の横を通り過ぎ、次のディスクへの道しるべを作っていく。


「見ていけば、分かるっていうのか?」


 雄介の問いに対し、銀色の蝶は羽ばたくだけで何も言わなかった。この映像は一体何なのか? 銀色の蝶の目的とは? あの赤い扉は、一体何なのか? 次々と謎が深まっていくばかりであった。

次回


「ディスク 6」

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