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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
四章 記憶のディスク
38/93

ディスク 2

色々とあって遅くなりました。

 二枚目のディスクが映し出した情景は、また真っ白な部屋での場面であった。雄介が部屋の隅に立っていると、段ボールを抱えた北崎が部屋の中に入ってくる。持ってきた段ボールをベッドに置くと、見るからにフカフカそうなぬいぐるみ達を次々とベッドの上に並べていった。

 熊・猫・人間のぬいぐるみが並んだベッドは、元の殺風景なものから可愛らしく生まれ変わった。


「こんなものかな? あんまり多すぎかな? まぁ、いっか!」


 納得すると、北崎はベッドに腰かけた。すると、ベッドが硬かったのか、何度もベッドを撫でたり叩いたりする。


「こんな硬いベッドに子供を寝せる気か?…ちょっと、考えなさすぎじゃないか」


 北崎はポケットから携帯を取り出し、電話を掛けようとしたが、しばらく悩んだ後、電話の電源を切った。


「…僕が言っても、相手にされやしないよな。僕はここの正規の人じゃ無いし…それに、まだ実績も無いし…」


 最初のディスクで観たような、明るく自信に溢れた印象から一転し、ネガティブな所が現れる。どうやら、一人でいる時はこうなる人物らしい。


「どうして僕なんだろう…あの研究だって、現実味の無い幻想だというのに。そりゃ、人も動物も怪我を負わなくなる世界になったら、どれだけいいかを書いたけど……」


 今の状況に理解が追いついていない北崎は、無い髪を掻きむしる。そんな北崎を雄介は黙って観ていた。

 すると、部屋の扉が開き、スーツ姿の男が入ってくる。その手には、少々大きな黒いアタッシュケースが。

 しかし、そんな事など気にする余裕も無く、北崎と雄介は男の姿を見て驚愕した。


「局長!?」


(父さん…!?)


 その男は施設の局長であり、北崎の研究に興味を惹かれて招いた張本人。そして雄介にとっては、父親であった。


「いらしていたんですね、局長。2日後だと聞いていたのですが…」


「そうだったんだがな、少し日程が前倒しになってね」


「と、おっしゃいますと?」


「入りなさい」


 その言葉から少し遅れて、白い服を着た子供が部屋に入ってきた。長く伸びている髪の所為で、顔が見えず、小柄で痩せ型の為、男か女なのかも分からない。

 

「ッ!?」


「この子だよ。君が今日から、この子を研究してもらいたい」


 局長は子供の気持ちなど特に気にする事なく語った。まるで人だと思っていない口ぶりだ。しかし、それは北崎も同じであった。その子供の姿を目にした瞬間から、北崎の表情は引きつったままだった。

 気になった雄介は、子供の目の前にまで歩き、その子供に視線を合わせるようにしゃがんだ。横から観ていた時は見えなかった顔が、真正面からだとハッキリと見えた。

 その子供の目は大きく見開かれ、目の下に色濃くクマが出来ている。その目に見つめられれば、たちまち体が固まってしまう程の恐怖の眼。

 だが、雄介は違った。逆に、鏡を見ているような気持ちになった。


(なんだ、こいつ…何故かは知らないけど…他人とは…)


「北崎君。大丈夫かね?」


「え?…あ、はい」


「ん~?……あー、そうか。君は初めてだったね、こういう研究は。ハハハ! 大丈夫さ、すぐに慣れる」


「…あの、名前、は?」


「名前? 何の意味があるんだ? とにかく、今日から1週間。1週間の間、この被験者を研究してみなさい。それじゃあ、良い研究を」


 それだけ言い残し、局長は部屋から出ていった。北崎は局長に聞いておきたい事が山のようにあったが、何も言えず、ただ虚しく手を伸ばすしか出来なかった。

 部屋に二人だけにされ、どちらも無言のままの状態が続く。一つ前のディスク、先日までの北崎は被験者に対しての思いやりがあったが、今では目も合わせず、怯えているようだった。

 

「…おじさん」


 先に口を開いたのは、被験者の方だった。声を掛けられた北崎はビクリと体を跳ねらせ、恐る恐ると視線を被験者へと向けていく。


「な、何かな…?」


「僕が…怖い、の?」


「え?」


「そう、なの…?」


 被験者の表情は変わっていなかったが、声は震えており、今にも泣き出しそうになっていた。そんな姿を見て、北崎はハッとなった。

 この子は、ただの子供なのだと。先入観が先走り、自然と被験者を化け物のように見てしまっていた。そんな自分に怒り、同時に悲しくもなった。


「…すまない」


「…」


「だけど! もう大丈夫! ごめんね、怖がってしまって! 僕、子供に髪を剃られて以来、子供に対して恐怖心が出来ちゃってて!」


「髪?」


「ああ! 昔はロン毛だったんだぞ! でも寝てる間に親戚の子にな、バリカンで剃られちゃって! 結局全部剃る事になっちゃってさ!」


「バリカン…」


「はは! 本当、困っちゃうよなー!」


 全て北崎の口から出た過去の話は、全て嘘の出来事であった。被験者に対して恐怖していた本当の理由を隠す為に出た嘘。それは被験者を悲しませない為であり、同時に子供に対して怯えた自分を隠す為でもあった。

 

「あ、そうだ! 君の名前は?」


「名前?」


「え……あ、あはは…それじゃあ、おじさんが勝手に呼び名をつけてもいいかい?」


「…うん」


「そっか…それじゃあ、どうしようか! マモル? ツヨシ? う~ん……ユウスケ…ユウスケって、呼んでいいかい?」 


「…うん」


「…ありがとう……それじゃあ! ユウスケ、これから1週間、よろしくな!」


 そこで静止し、ノイズが走って今回のディスクが終了した。

次回


「ディスク 3」

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