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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
三章 運命の出会い
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実験開始

 目を覚ますと、僕は真っ白な空間で横になっていた。立ち上がって辺りを見渡すが、何一つとして物が置かれていない。壁に手を当てながら歩き回っていき、ここが四角の部屋だという事が分かった。だが、それだけしか分からない。

 壁にもたれかかりながら座った時、自分が着ている服が変わっている事に気付いた。白い長袖、白い長ズボン、腕や胸部や足の部分にはベルトが巻き付かれてある。ベルトを見ると、普通のベルトとは違い、何か特殊な加工がされてあるようだ。一般人の僕には、このベルトに施された機能が何なのか分からないが、少なくとも僕にとって良い物では無い事は分かる。


『被検体101。部屋の中心に立ちなさい』


 部屋全体から声が聴こえた。言い方が気に食わなかったが、とりあえず指示通りに部屋の中心に立ってみた。

 すると、天井から四つのアームが現れ、先端に組み込まれている青い目玉が僕の全身を隅々まで観察してくる。時折、目玉から出る青い光が僕の体に当てられたが、痛みは感じなかった。

 しばらくすると、アームは天井に格納されていき、部屋の壁の一部分が開いた。


『被検体101。移動しなさい』


「…はぁ、はいはい」 


 部屋から出ると、そこは全面ガラス張りの一本道になっており、人一人が歩けるくらいの狭い道だった。ガラス張りの壁や天井や床の内側には、また何かの機械があり、僕が道を歩くと、気分が悪くなる電子音が鳴った。奥まで歩いていくと、頑丈そうな扉が勝手に開いた。扉の先は暗闇に染まっており、一歩足を踏み入れた瞬間、暗闇の中に落ちていってしまうかもしれないと思ってしまう。

 

『被検体101。中に入りなさい』


 随分と急かしてくれる。そんなに言うなら、引率の先生でも連れて来れば良かったのに。こっちは反抗期も迎えていない子供だぞ? 

 そんな事を思いながらも暗闇の中に入ると、後ろで扉が閉まった音が鳴り、僕は暗闇の中に閉じ込められてしまった。

 すると、眩い光に包まれ、手で光を防ぎながら目を慣らしていくと、人差し指と中指の隙間から、特殊部隊のような装備をしたガスマスクの兵士が立っているのを目にした。手をどかして見ると、その兵士は一人だけでなく、広い空間の中央に六人も横に並んでいた。


「…あんたら、なに?」

 

 兵士達は微動だにしない。まるで何かを待っているようだ。


『耐久テスト開始。拳銃の使用を許可します』


 そのアナウンスが終わるや否や、静止していた兵士達は拳銃を手に持ち、僕に向かって発砲してきた。弾を避ける障害物が無い為、何発もの銃弾を浴びせられ、肩や腹部に激痛が走った。


「……痛いよ」


『ショットガンの使用を許可します』


「いやいやいや。ちょっと待って―――」


 僕の意思など関係なく、兵士達は無情にもショットガンを撃ってくる。拳銃で撃たれた時とは違い、痛みよりも衝撃の方が強く、どんどん壁へと押されていく。足の力が入らなくなった頃、ようやく弾切れになったのか、兵士達は銃を下げ、元の位置に戻っていった。

   

『腕と足を切断してください』


 今度は僕の手足を切るつもりだ。兵士達は長く分厚いナイフを片手に、僕へと近付いてくる。テレビだったかな? 確か、人の腕や足を切るのは大変で、ナイフだけだと困難だと聞いた事がある。どうやらナイフしか持っていないようだけど、どうやって切断するつもりなんだ? 

 いや、そんな事はどうでもいい。このまま大人しくコイツらに好き勝手されるのも嫌だ。さっきのショットガンの傷も治ったし、そろそろ抵抗してもいいだろう。

 一人の兵士がナイフを構えながら僕に近付いてきたので、兵士に抱き着き、首を噛んでやった。


「うぁ!? あ、ああ、ああああああ!!!!!」


 噛みつかれた兵士は絶叫し、僕の背中をナイフで叩いてくる。痛かったが、叩かれる度に怒りが湧き立ち、首に歯が喰い込んだところで勢いよく引きちぎった。兵士は僕を投げ飛ばし、噛み千切られた首を抑えながら、仲間の所へと戻っていく。ざまぁみろ。


「助け、助けて!!! 助け―――」

   

「こいつ噛まれてるぞ!? 撃て! 撃てー!!!」


 僕に噛まれた兵士に対し、他の兵士達は怯えるように銃弾を浴びせ続けた。一発目で銃弾は頭に当たって死んだにも関わらず、その後も次々と撃ち続ける。何もそこまでやらなくても。

 すると警報が鳴り出し、開いた壁から何十人もの兵士達が現れ、僕に銃を突きつけたまま囲んでくる。


「動くな! 大人しくしろ!」


「さっきから動いてないし、大人しくしてるだろ!?」


「うぁぁぁぁ!!!」


 一人の兵士が僕に発砲したのを合図に、僕を取り囲んでいた兵士達も続けて銃弾を浴びせてくる。次々と来る激痛に意識が遠のいていき、突然僕の視界は真っ暗になった。





 再び目を覚ますと、僕は最初にいた真っ白な四角の部屋に横になっていた。口に違和感を感じ、触れてみると、硬いマスクのような物を付けられているようだ。


「なんだよ、これ…」


 このマスクもそうだが、さっきから一体なんなんだ? そこに立てとか、そこを歩けとか、テストだとか…まるで実験動物みたいに扱われてる。

 すると、部屋の隅の壁が開き、そこから三人の兵士を引き連れた一人の女性が部屋に入って来た。長く綺麗な黒髪、凛とした顔、着ている着物に見合い気品に溢れている。どこかで見た顔だなと思っていると、その女性は僕の前に立った。


「初めまして、北崎雄介君。あなたの事は娘から聞いているわ」


「…あんた、誰?」


「私は―――」


「あー、思い出した! あんた百瀬さんのお母さんの百瀬華美か!」 


 宮代さんが見せてくれた写真の事を思い出し、思わず言葉を遮って指差してしまった。明らかに最悪な事をしてしまったらしく、現に華美さんの周りにいた兵士達が、警棒で僕を何度も殴りつけてきた。


「もういいわ。それに、そんな事をしても無駄よ」


 華美さんがそう言うと、兵士達は警棒をしまい、華美さんの一歩後ろに下がっていく。その声色は、娘である百瀬さんと同じく冷たく無機質なものだった。一つ違うとすれば、表情がピクリともせず、ただジッと僕を見下している。

 

「突然連れて来られて困惑しているのは分かっています。でも一週間。一週間で解放するから、それまで私達に協力してくださる?」


「嫌だ、と言ったら?」


「あなたの親しい人物を一人ずつ始末していきます。抵抗する度に」


「無表情で恐ろしい事を言いますね。そんな事したら、警察とかが黙ってないんじゃないですか?」


「私達に協力してくださる?」


 駄目だ、話が通じない。お願いしてるくせに、協力する事以外選択肢なんか無いんだ。


「…分かりました」


「良かった。それじゃあ、よろしくね。北崎雄介君」

次回


「忠実な手下」

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