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すぐ傍にヤンデレがいる  作者: 夢乃間
第一部 一章 食人狂
11/93

人間と化け物の境界線

【注意】


結構グロいかもです。

 本田さんの家の前に着くと、家の中から食器が割れる音が聴こえてきた。それも一度だけでなく、次々と割れている。


「荒れてるな・・・」


 本田さんの精神状態は、今彼女が割っている食器のように脆く極めて危険な状態だろう。家の扉を開けて中へ入ると、廊下には壊れた家具やゴミが散乱していた。また戻ってきている、初めて来た頃に。

 しかし、一つ気になった所があった。それは壁の絵の具である。前は単色ではなく、色々な色で塗られていたが、今回は壁一面を黒で染めていた。

 ちょっとした変化を不審に思っていると、廊下の奥の部屋から重い物が床に勢いよく倒れた物音が鳴り響いた。

 靴を履いたまま家に上がり込み、早々と奥の部屋へと入っていく。部屋に入ると、中は酷い荒れようで、割れた食器や穴が開いた壁、さっき聴こえた物音の正体であろう食器棚が正面から床に倒れている。部屋の荒れ果てた光景を見渡していき、ある一点の所で視線が止まった。

 そこには、全身黒色の絵の具で汚れた本田さんが壁にもたれかかって座り込んでいた。手を見ると、割れた食器で傷付いたのか、血が出ている。


「本田さん」


「・・・きたさき・・・くん・・・?」


 本田さんは酷く疲弊しているようだった。唇をろくに動かさず言葉を話し、眼は僕を見ているようで見てない。


「・・・また、やっちゃった・・・私、上手くいかないと、こう・・・なるの・・・」


「そうみたいだね。ストレス発散にしては、ちょっとやり過ぎな気がするよ」


「ははは・・・やっぱり、面白いよ・・・北崎君は・・・」


「別に面白い事は言ってないけど」


「ううん・・・普通、こんな所見たら・・・みんな、気持ち悪がったり、怖がったり、する・・・でも、北崎君は何も変わらない・・・ずっと、無関心のまま・・・」


「そんな事ないよ。僕だって最初見た時は驚いた」


「・・・何しに来たの」


「君を救いに」


「アハハハハ!!!」


 突然、本田さんは肩を揺らしながら、本に出てくるような魔女の笑い声を上げた。


「無理だよ! クヒッ! 私、狂ってるんだもん! アハハハハハハ!!!」


「本田さんは狂ってなんかないよ」


「私、あなたに薬を盛ったんだよ!? 閉じ込めて食べちゃおうとしたんだよ!? 狂ってない訳ないよ! アハハハハハ!!!」


「その程度なら、君はまだ戻れるよ。だからまずは、一緒にここ片付けよ。ね?」


「私を分かった風に言わないでよ!!!」


 本田さんは手元にあった食器の残骸を僕に投げつけてきた。それが頬を掠っていき、掠った頬に触れると、どうやら深く切れたようで血が流れていた。この程度の傷、喰われた時に比べれば、痛くも痒くも無い。

 だが予想通り、本田さんは話し合いが出来る状態ではなさそうだ。ここは多少の荒事を起こして、彼女を正気に戻さないと。

 そう決意し、ゆっくりと一歩ずつ、本田さんの下へ近付いていく。


「来ないで・・・来ないでよ! 私に歩み寄らないで!!!」


 対する本田さんは、僕を近付かせまいと、僕に物を投げ続てくる。割れた食器や、フォークやナイフといった尖った物が僕の体に当たったり刺さったりした。その度に怒り狂いそうになる自分を【本田さんを救う為】だと怒りを抑えた・・・が、それも長く続かず、耐えかねた僕は一気に本田さんとの距離を詰め、本田さんの両肩を掴んで壁に押し当てた。


「ぐっ!?」


「いい加減にしろ! お前はまだ戻れるって、なんで分からないんだ!?」


「無理だよ! 人の味を・・・北崎君の味を覚えちゃったら、もう元の人間に戻れないよ!!!」


「お前はまだ人間だ! 周りの人と同じ人間なんだよ! 人の味なんか忘れて、平凡な人間に戻るんだ!」


「どうやって!? だったら教えてよ! 私みたいな化け物が、みんなみたいな、北崎君みたいな普通の人間に戻れる方法を!」


「・・・分かった・・・よく見てろよ!」


 僕の二の腕に刺さっていたフォークを抜き、フォークの先を僕の左目に向ける。この分からず屋には、一度本物の化け物を見せた方が効果的だ。その為に、ちょっと痛い思いをするが・・・ここまで湧き上がった怒りを鎮められるのなら、構わない!

 僕は自分の左目にフォークを突き刺した。本田さんの脳裏に色濃く刻み込む為に、深く。当然の事ながら、左目から焼ける程の激痛と、すぐにでも抜きたい自己防衛本能が働き出す。

 構わず僕は抉ってやった。なるべく音を立て、左目から飛び散る血を本田さんに浴びせながら。


「い・・・いやぁぁぁぁ!!!!!」


 流石の本田さんも、目の前にいる人が自分の目玉を抉る光景を目の当たりにして、絶叫した。その叫び声の所為で、左目から感じる痛みに拍車が掛かってしまう。


「やめてよ!!! もうやめてぇぇぇぇぇ!!!」


 もうそろそろいいか? というか、僕が限界だ。痛みで気絶しそうだよ。刺していたフォークを抜くと、フォークの先に僕の左目が突き刺さったままだった。


「目が・・・北崎君、の・・・目が・・・!」


 暗くて見えないが、本田さんは僕の左目があった場所に手を伸ばしているようだ。


「黙って見てろ本田美也子! これからが、本物の化け物だ・・・!」


 左目に意識を集中させていき、暗かった左の視界を回復した。


「・・・え? な、なんで・・・左目が・・・あるの・・・?」


 抉り取ったはずの左目が、元の場所に元通りになっている事に、本田さんは困惑している様子だった。


「お前ら人間は、少し血が出ただけで騒ぎ立てる。だが化け物は、目を抉り取っても! 腕や足を切り落としても!! グチャグチャになるまですり潰しても!!! すぐ元通りに回復する・・・これがお前ら人間と、僕のような化け物との違いだ」


「ヒッ・・・!」


「怯えているな? そりゃそうだよな・・・人と同じ姿形をしているのに、明らかに常人とは違うんだからな」


 本田さんはすっかり怯えてしまっているようで、平常の呼吸が出来ず、過呼吸気味になってしまっている。脅かすのはもう十分かな?


「だからね、本田さん」


 落ち着かせようと本田さんの肩に手を置こうとした。しかし、すっかり化け物と見られているようで、体を反らして避けられてしまう。

 良かった・・・お陰で、君はちゃんと他の人と同様、人間なんだと確信を得られたよ。


「君はやり直せる。どんなに狂いそうになっても、人間でいる限り、君は化け物になんかなれない」


 それだけ伝え、僕は本田さんから後ろ歩きで離れていく。


「もう学校では話しかけないで。君は新しい友達、新しい人生を歩むんだ。そこに僕のような、化け物は存在しちゃいけない」


「・・・北崎・・・くん」


「さよなら、本田さん。短くて色々あったけど、僕は楽しかったよ。本田さんと会えて」


 これでいい・・・本田さんの前から僕がいなくなれば、彼女はきっと幸せな人生を歩める。あーあ、もう一度だけでいいから、本田さんが淹れてくれた紅茶を飲みたかったよ。



 その時だった。


 

 僕が不器用ながらも、本田さんに化け物の恐ろしさを知らしめる事に成功し、心の隅で喜んでいたその時。思いもよらぬイレギュラーが発生した。

 その時は一瞬の間、瞬きする間に起きた。僕の後ろの扉から黒いレインコートを着た宮代さんが現れ、瞬く間に本田さんを殺したんだ。本田さんは悲鳴を上げる隙も無く、無言のまま死んでいった。


(何が起こった? なんで本田さんの眉間にナイフが刺さっているんだ? なんで宮内さんが来たんだ? なんで殺したんだ? なんでなんでなんでなんでなんでなんで―――)


 浮かび上がる疑問の数々。僕はその場から動く事も、声を出す事も出来なかった。そんな僕に構わず、宮代さんは深く被ったフードをそのままに、僕の手を引っ張って部屋から連れ出した。手を振り払おうとしたが、上手く出来ない。まるで僕の体が僕の物じゃなくなったかのよう。抵抗出来ず、そのまま宮代さんに連れて出された場所は、浴室だった。


「言ったでしょ雄介君。あなたが何をしても、無駄だって」


「・・・ぁ」


「彼女を化け物にしない為? そうね、もしあなたがもっと早く彼女と出会っていれば、それも出来たかも」


「・・・ぁぁ」


「雄介君。これを見て、あなたはまだ・・・彼女が人間だと言える?」


 死体だ・・・死体だった物の残骸の山が、浴室に詰められている。体の部位を切られた、臓器が抜き取られた死体ばかりだ。


「彼女はとっくの前から・・・化け物だったのよ」


「ああああああああああ!!!!!」


次回


「罪」

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