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死神の奇想曲(カプリス)  作者: 奇想曲
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第3話「生徒会」

「良いですか? だいたい零くんは・・・」


『黒須学園生徒会副会長を務める少女』


―――大月詠(おおつき・えい)―――




「何おもろいことやってんの君ら〜」


『黒須学園教師にして生徒会顧問』


―――五条銀雲(ごじょう・ぎんうん)―――




「ヤーヤー、随分と遅かったようだね」


『黒須学園の生徒代表にして生徒会長』


―――白月白虚(しらづき・びゃっこ)―――






 黒須学園の入学式も終わり、新入生たちも自分達の充てがわれた教室に戻って行き、零たち二学年も教室に戻って行ったが零は生徒会の一員の為、体育館に残っていた。


「今回の入学式も随分と華やかだったな〜、しかも女子の割合が極端に多い、男子生徒がたったの100人に対し女子生徒が600人って・・・・・女学園とはなんら変わらないような気が・・・・・・・・」


「零、サボってないで集まれ。副会長が呼んでいるぞ」



 と後ろから声を掛けられた。


 零は振り向くと朝に会った南郷雹華(なんごうひょうか)が立っていた。ただ立っているのにその姿は凛々しく見える。この雹華とは中等部からの付き合いだが、何度見ても美人さんだ。


「雹華か、生徒会は体育館の横に並ぶのって定番だよなぁ」


「・・・話を聞いているのか、零」


「聞いてるって、副会長が呼んでるんだろ? 別に行かなくて良くね、どうせ生徒会の反省会とかじゃねぇの?」


 零はポリポリと頭を掻きながら欠伸(あくび)を一つ二つして(ダル)そうにしながら雹華に言うが、勿論雹華はそんなことで納得がいくはずがなく、顰め顔で零を見ている。


「反省会だろうがなんだろうが行くんだ零。何だお前のそのユルユル感は!! たるみきってるぞ!!」


「ゆるゆるじゃねぇ・・・ダルダルなんだ」


 雹華は零のやる気の無さに喝を入れようと零に近付くが、男の癖にビクッとビビりながら零は後退りする。


「分かった分かった、行くよ、行くから蹴ろうとするなこの暴力女」


「なっ・・・・何だと!?」


 どうやら雹華は挑発したら簡単に引っ掛かるくらい真っ直ぐなタイプらしい。改めて実感。

 雹華は暴力女に反応し、零が反応するかしないかが分からない俊足の蹴りを繰り出された。


「ぐふっ!? あっ結局こうなるの!?」


 零の体が一瞬宙に舞うと、重力に従って冷たい木製の床に伏す。雹華の蹴りが溝に入り、静かに男らしく(うずくま)る。


「す・・・済まん、つい蹴ってしまった」


 雹華は床に踞ってピクピクさせている零の背中を摩りながら謝罪している


「イテテっ、手加減を覚えろ。このぼう・・・・・・・・」


 零が言葉を発しようとした瞬間、雹華の脚が目の前で止まっている。


「・・・・何か言おうとしたか?」


「イヤ、ナンデモナイヨ」


 零は固まりながら答えた。そんな二人の横から不適な笑みを浮かべながらこっちに向かってくる銀髪の教師が居た、白いスーツを着ている。


「何おもろいことやってんの君ら〜」


「アンタはこれが面白く見えるのなら眼科に行った方が良いな。てかそんな細目で分かんのかよ」


「こら零! 先生に向かって何だその口の聞き方は」


「あぁ、ええよ、ええよ雹華ちゃん。零くんは照れとるだけやから〜♪」


「誰が照れてるだゴラァ!! 不良になんぞ!! なってやんぞ!!」


 零は銀髪の教師に殴り掛かろうとしたが先生の横から一人の女子生徒が零の前に出てきた。


「何をしているのかしら零くん♪」


 女子生徒は紫色の長い髪を(なび)かせながら零に言うと、零はピシャッと背筋を伸ばし女子生徒の前でとても良い姿勢で直立している。


「おぉこれぞ(まさ)しく“鶴の一声”やな」


「銀雲先生も零くんをからかうのは大概して下さりますか? たぶん私が思うに先生が生徒会顧問だから零くんは生徒会に積極的に参加しないんですよ」


「そないな事言われてもな〜、僕こうゆう性格なんよ、詠ちゃんも分かるやろ」


「なら治して下さいね」


 (えい)と言う名前の女の子は満面な笑顔を見せながら生徒会顧問の五条銀雲(ごじょうぎんうん)に言ったが軽い感じで銀雲は頷いた。


「ぜってぇ反省してねーぞあの銀髪狐目ヤロウ!! まだこっちのオーバーヒートハートが収まっちゃいね・・・・」


「零くんにも反省すべき点がありますよ、と言うより教師に手を出すとはどういう了見ですか? 私たち生徒会はこの学園のお手本になるべき“目標”なんですよ?」


 銀雲の説教が終わると次は零の説教タイムが始まった。零は過去、この人に3時間くらいの拷問説教を喰らった経験を持っていた。その事があって以来・・・零にとって苦手な人と映るようになっている。真面目に振舞っているのか、ただ建前として叱っているのか零もまだ深く分かり合える間柄になっていない為よく分からない。


「良いですか? だいたい零くんは・・・」


「あぁーハイハイ、すみませんでした大月(おおつき)副生徒会長さん」


 なので、零も苦手意識のある相手の有難いのか有難くないのかよく分からない説教を素直に聞くわけもなく、軽い感じで詠の説教タイムを終わらせようとしたが、態度からしてまともに取り合う訳がなく普通に流されてしまい説教タイム続行。後で生徒会室に来てね、と黒い微笑みを浮かべながら言い終えた事で、零は冷や汗を垂らし素直に従うしかなかった。


「あ・・・あの大月副会長」


 詠の説教タイムがあった為、間に入れなかった雹華がやっと口を挟んできた。挟んでくるなら会話中にして欲しかったと、自分の取っていた態度のことなど忘れた零が不たるの会話に耳を立てていた。


「あら、何ですか雹華さん」


「さっき私たちを呼んでいたのですが何か生徒会の仕事でもあるのでしょうか?」


 雹華は先ほどから気になっていた事を詠に聞いた。詠は長い紫色の長髪を小さく揺らし、優しくも深みある微笑みをしながら言った。


「すこし“裏”の仕事でね、雹華さんには例の件、零くんは生徒会室に来てくれないかしら〜。会長がお呼びよ」


 詠がその事を言うと雹華の顔は一気に引き締まり、体育館の横に建てられた柔剣道場にへ向かった。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 零は急に真剣な顔になった雹華を気になりながらも、詠と一緒に生徒会室にへ向かった。昔ながらの学園と聞いているが、初等部から高等部まである『私立黒須学園』は多額の補助金を受けているこで、古くから年が経っているこの学園の校舎も今現在の社会に見合う設備や施設が設けられていた。今歩いている生徒会に続く廊下でさえ、傷が見当たらないくらい綺麗に清掃されている。


そして生徒会顧問である銀雲はと言うと、入学式の片付けをしている先生方と生徒たちの手伝いに回ったらしい。何かしらの出来事があったのか、始終銀雲を嫌な目を向けたままの零だった。



 現在、零と詠は生徒会室前に到着していた。

 詠は相変わらずまったりとした風である。だがそれは『どんくさい』や『鈍い』といった感じの“まったり”ではなく和やかさと穏やかさに混じる精練された動きもあり、人間なら少しでもある怠惰な面、つまり『人間の愚』を感じさせない“清廉さ”も兼ね備えた挙動に、やはり零は苦手(・・)だった。大抵ならばそんな清廉潔白さに良好な印象を抱くと思うのだが、この黒神零にとって怪しく感じ取ってしまうほどの清潔さだったのだ。ただ単に自分が汚れているからそのような歪んだ思想に陥っているだけと思えばそれだけの話なのだが、この美女には微々たるものだが、苦手さ増していた。

 そんな零の思考を他所に、詠は美麗な顔付きで微笑んで中に入るよう零を促す。中に入れば未だ見慣れぬ生徒の一組織に使うには広く大き過ぎる部屋に、見覚えのある双子と知らない女の子達がある一人の青年の前に並んでいた。


「ヤーヤー、随分と遅かったようだね零くんに大月副会長」


 柔和な微笑みを浮かばせた青年は零と詠を見るとパタパタと手を振りながら陽気に話し掛けてきた。

 因みに生徒会長は数少ない男子生徒の一人で、文武両道に容姿端麗の四字が合ってしまう本当に居たよ凄い人。

 白髪長髪で眼鏡美男子。零は心の中で醜い嫉妬の舌打ちをして、並んでいる女の子達に目を向ける。すると向こう側も零を注目する。


「あぁぁー零兄だぁ♪」


「零お兄ちゃん?」


 見覚えのある双子は零の義妹であるらしい白瀬水波と白瀬火波が居た。零も軽く手を振り、青年の横に詠と共に並ぶと零たちを紹介した。


「この二人が私の補佐をしてくれている生徒会の副会長たち(・・)だよ。簡単に私が二人を紹介するね。彼女は私と同じ三年生の大月詠さん、そして彼は二年生の黒神零くんだ」


 着々と流れていく説明に、疑問を浮かばずにいられない単語に反応する零は『・・・うん? 』といった感じで横を見た。


「あの会長(・・)、今俺の耳には副会長“たち”と聞こえたのですが・・・?」


 零は『あれぇ~可笑しいなぁ舌噛んだのかな~』みたいな感じの顔で“生徒会長”に覗き込みながら言うが、生徒会長は全く動じないで話を続けた。


「零くんはもう二学年、一学年の指導も出来るデショ? だから副会長に昇格したんだよ? 五条先生には伝いといたから良かったじゃないか♪」


 イケメンスマイルの生徒会長はハッハッハと笑いながら零の肩をパンパンと叩いている。イケメンのくせにたまに豪快になる会長に零は『い・・・痛いッス』と言いながら脳裏の中で整理していた。

 つまり新しく入って来たこの子達の面倒を見ろと言われているらしい。比較的に怠惰な人間である黒神零本人とはと言うと・・・・・、


(面倒くせぇぇぇ~!!)


「零くん、今心の中で面倒くせぇとか思って無かったかい?」


「っ!!!?」


 零は会長を見て、ビクッとしたが本当の事を言った。断るなら即座に即行に、率直に正直に言うに限る。


「えぇと正直に言いますが・・・面倒くさいから嫌です」


「・・・・・・零く~ん♪」


「あれ? ここ冷房効いてないのに急激に寒くなった、特に隣から」


 零が正直に言った後に詠が少しトーンの落ちた声で名前を呼ばれた。その冷ややかな低さの迫力に零は体を震わせる。


「ハハハ、零くんは本当に正直だね〜。でも君には拒否権なんて無いんだよ」


「・・・・・・?・・・・何でですか会長」


 生徒会長はニヤリと不気味な笑みを出して言った。


「〝今日の夜は月がよく見える、皆今日は月を眺めながら寝るのも良いだろう〟・・・・では生徒会はまた後日に」


 と訳が分からないことを一頻り言った後、並んでいた女子生徒たちの紹介も無しでその場は解散となった。副会長でも、先輩でも、一日の長であった詠は集まっていた一年生を体良く説明して帰し。零だけその後の残され、こってりまったりと説教をしたあとに帰らされた。今、生徒会室に居るのは詠と生徒会長だけ。


「もっと分かり安く教えて上げれば良かったのに、あれでは月を見るか分かりませんよ? 白月白虚(しらづき・びゃっこ)さん」


「ふふふ、別に急がなくても良いんだよ、そう・・・・・急がなくて・・・・・良いんだよ。君なら良く知っているだろう? 私は気儘(きまま)なんだよ」


「まったくもう、ウチの生徒会長さんはまったりとしていて困ります」


「・・・君にまったりと言われるのか?」


 言いながらも詠に笑われた。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 零は生徒会室を出て、直行して自宅に向かおうと校門を通ったら、その近くに双子が待っていた。


「アレ? 君ら先に帰ったんじゃねぇのかよ?」


「私たちまだ零兄に大事な話とかをしてなかったでしょ。だから・・・」


 水波は少し表情が暗い感じで零に話し掛けてきた、朝のあのテンションを嘘かと思わせる程の暗さで。そして語り出してきたのは彼女たちが抱え込んでいる話の内容だった。


「叔父さんから話は聞いてます。零お兄ちゃんのお父さんと私達のお父さんは一緒、でもお母さんは違う・・・・私達のお母さんは事故で無くなって身内と言えばお父さんと叔父さんだけと聞いていたから、私達に兄が居たなんて知らなかったからつい嬉しくてあんな朝早くに会いに行ってしまったんです」


 火波は零に申し訳無さそうに言った。どうやらこの双子は幼い頃、零と遊んだ記憶を忘れてしまっているらしい。ハァ〜と小さい溜め息を吐きながらそっと手が届く二人の頭に手を置いた。


「んな事を言いたかったのかお前らは」


 零は二人を頭を優しく撫でていた。それだけでそんな暗い顔になっていたのかと、もしかしたらそれだけ(・・・・)じゃない話もあったんじゃないのかと、聞き返したい気持ちもあったが、無理に聞いて関係に微々たる亀裂が入るのも(ダル)い。大切なことだ。人間誰しも効率良い選択をするものだ。例え“家族関係”でも、


「はわぁ〜」


「ふみゅ〜」


 いいや、零にとって『家族』こそ回避したい怠惰(めんどうごと)だ。そんな風に思わせるほどの環境にいたから零は、聞けなかった(・・・・・・)し、聞かなかった(・・・・・・)


 ふやけたような顔で水波と火波は零に撫でられていると、可愛いらしい顔と可愛らしい声を出しながら頭をぐらんぐらんされていた。


「んな小さなこと気にしてるハズねぇだろ、それとも何ですか? この黒神零さんはそんな小さなことをネチネチと言ってくる小さな小人みたいな男に見えますか?」


 零がそう言うと二人はフルフルと首を横に振っている。流石は双子だけあってバッチリ合っていた。


「んーうん、零兄は何か父さんに似てるから小さい男なんか見えないよ!!」


「わ・・・私も零お兄ちゃんが小さな小人さんなんかに見えないです」


二人がそう言うと零はニコニコしながらまた二人の頭を撫でた。


「そうだろ、だから気にすんな・・・・な?」


 二人はうん、と頷き暗い顔からと明るい笑顔になった。


「そういや二人は学園から家って近いのか?」


 一頻り話し終えた後、零は二人の家が近いのか聞いた。何故なら今の時刻はもうすぐ午後7時になる。春とはいえ辺りは暗くなり夜が近付いてきていいた。こんな時間にバスや電車はあるか心配になり二人に聞いた次第だったのだが、返ってきた返答に、零は何度目か分からないほどの溜息をそこで吐いた。

 零の(アパート)は学園からの距離が近い為、こんな時間まで居てもすぐに帰れる。


「あっ、私たちは零兄と同じアパートに住む事になったから、しかもお隣同士」


「さいですか、近所同士になるのか、んじゃヨロシコ〜・・・・・・・・・・・・って・・・マジで?」


 零は再度『マジで?』と二人を聞き返して言っしまえば、二人はコクコクと全く可愛らしく首肯した。


「・・・・まぁ良いじゃねーの、どっちかつーと俺はマンションの方が良いと思うけどなアパマンショップで探すか〜?」


「イヤ大丈夫だよお兄ちゃん、マンションよりもお兄ちゃんが住んでるアパートの方が良いもの」


火波は顔を赤くして言った。


「私も零兄が居るから零兄のアパートに決めたんだよ、別に火波がちゃっかり零兄を獲ったり(・・・・)しないか監視する為に一緒のアパートにしたんじゃないんだからね」


「また嬉し過ぎるシチュエーションを繰り広げて貰ってんのは有難いんですが、そろそろ帰るぞ〜門が閉まっちまう&空腹で死んでしまうから帰ろう」


零はぐぅ〜、と腹が鳴いている腹を擦りながら言った二人は慌てて校門に向かい門を出て行った。


零はそんな二人を見ながら微笑む。だが思うのだった

二人は別にあんな事を言いたかったんじゃないかと、本当は零に一つや二つ、いや・・・もっと沢山言いたかった事があるんじゃないか、水波や火波たちからすれば父親を零の母親に“盗られた”と思っても仕方が無い。それに、そんじゃそこらの一般家庭と程遠い一族なのが『黒神家』なのだ。


 母親を無くし、唯一親である父親が新しい母親を迎えた。


 確かにたまに会ってはいたと思うが、ずっとじゃない。


 零は思うのだった。


あの二人は零を・・・・憎んでいるじゃないかと


「・・・・・・・・ゼロじゃ、ねぇだろうな」


 零は心境複雑な思いで帰り道を辿って行った。









 その後は水波や火波たちと一緒に晩ご飯を食べ、各部屋に戻って行った。水波や火波は一緒に住むらしく部屋も二人一緒らしい。零は二人のことを考えながら眠りについた。大分遅い時間に、だったが。



そして、



その日の月の光が嫌に眩しく見えた夜だった。


グダグダでしたでしょ?


小説をスラスラと書いている人たちは本当に凄いなと実感します(涙)


1013/11/13から訂正というか改訂というか、どんどん変更されていっているキャラ達の名前や姓名。


1013/12/24 改訂完了!! たぶん!!

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