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死神の奇想曲(カプリス)  作者: 奇想曲
21/24

第21話「芦田妖々」

更新遅れてすみません!

そしてまた話が中途半端に終わってます、すみません!


もう何もかもすみません(泣)











あっくぁち〜くしょ〜〜。


んぁあ〜〜〜〜。




鳥になりてぇ〜〜〜〜。

零の(アパート)で鍋パーティーを行った次の日、零は完全復帰し、今現在黒須学園生徒会室に居た。


「会長〜、マジで勘弁して下さいよ。何スかこの書類とかプリントの山は」


零は副会長専用の机の上に目を向けると、そこには沢山のプリントの山が出来ていた。


「ん〜とね、僕も結構やったんだけどさ。凄い量のプリントが生徒会に来てね、僕だけじゃ間に合わなかったんだよ」


そして、その大量のプリントを寄越したのがこの黒須学園生徒会の長を務めている白髪美少年の斑備白虚(まだらび・びゃっこ)はにこやかに零に言う。


「ハハハ、そんな事ないさ」


「全部俺に押し付けたんじゃないスか?」


零は斑備を睨むながらプリントを手に取る。


「僕の分はやったさ、後は頼りになる副会長たちに任せる。信じることも会長の仕事さ♪」


「・・・知らぬうちに副会長にされた俺の権利は今何処(いまいずこ)に」


文句を言いながらも零は山となっているプリントを片付けるように作業する。


「つーか、お前は何してんだ、芦田」


「Zzzzzz・・・・・」


作業を仕始めた零は、何故か生徒会にあるふかふかなベッドで幸せそうな寝顔をしている芦田。


「・・・・・(イラッ)」


ドカッッ!


「ふごっ!?」


零は幸せそうに寝ている芦田の溝に思いきり強いパンチを食らわせる。


「ゲホッ! ガホッ!? 何か凄い腹痛いんですけどッ!?」


芦田は起き上がり、腹を押さえながらベッドから出る。

そして零は満足したようで、山のようなプリントとまた睨み合いしていた。


「時にレイくん」


「・・・・はぁ、何スか」


零は斑備から呼ばれると溜め息混じりに返事する。


「ちょっと『妖刀』に関する話になるんだけど、良いかな?」


斑備が真剣な表情になり、零に聞いた。

零も手に持っていたプリントを机に置いて真面目な顔になる。


「何ですか」


「うん、君たち二人、というより僕とエイちゃん以外は知らないと思うんだけどね。実はエイちゃんも異形者(イレギラ)だったのは知っているかな?」


「・・・・・・・・・・」


「マジですか!?」


芦田は驚きながら斑備に近付く、零はあまり驚いてはいなかった。あの様子では気づいていた、というより、薄々感じていたのかもしれない。


「そしてエイちゃんの異形能力は“月詠(つくよみ)”と言ってね。夜にしか能力が使えないんだけど、月が登っている時は、月が照らし出す範囲内全てを見通し、傍聴とか聞き取ることが出来るだよね」


斑備がまるで自分の事を話しているかのように、満足そうな顔で喋っている。

因みにもう一人の副会長であり、三年生である大月詠(おおつき・えい)は生徒会の仕事で生徒会室には居なかった。


「まぁそういう事だよ」


「いやいやいや! どいうことスか!?」


芦田が身を乗り出して斑備に聞く。


「ふふふ、つまりだね。“君たちは常に監視されている”ということだね♪」



それまで真剣に話を聞いていた零が一気に斑備との間を詰めると、一睨みする。


「つまりは『勝手な行動はするな』ということスか?」


零が睨みながら斑備にそう言うと、なんても柔和な笑顔で斑備は返事する。


「雑な言い方をするねーレイくんは〜」


零は斑備のその返事を聞くと、すぐに踵する。


「ま、待てよ零」


芦田もすぐに零の後を追いかける為に扉に近付くと、不意に斑備に呼び止められた。


「峰春くん」


「・・・・?・・・」


「“今日の夜は月はよく見える”、皆で月見というのも良いんじゃないかな」


「えっ、それってどういう─────」


「それじゃあね、峰春くん♪ また明日だよ♪」


斑備はニコニコと笑いながら手を振って、芦田を送り出した。







零は校門まで遠く長い道を黒須学園指定の鞄を手にぶら下げながら歩いて行く。木をちらつかせ、緑が生い茂っていた。

部活で走り込みをしている女の子たちが歩いている零を追い抜かしていく。

そんな女の子たちの後を追うように芦田も一緒に走っていた。


「いやぁ頑張ってるね〜♪ えっ何? 陸上部なの! どうりで綺麗な足をしている訳どゎ──!?」


芦田の話が途中で途切れたのは勿論、零が蹴り飛ばしたからだ。


「あぁごめんね〜、走り込み続けて良いよ」


芦田がゴロゴロ〜と地面を転がってる中、零は走り込みを止めて心配そうに見ていた女子達を促した。


「何してんだよ」


零は転がっている芦田に聞く。すると芦田は急に真面目な顔になって仰向けになる。


「いくら監視してるからって常にって訳じゃないでしょうよ。大月先輩だってプライバシー守るって」


「・・・・・・・・・・」


「てかさてかさ、何かウチの親がさぁ〜、『零くん連れて来い』って言ってんだけどよ。来てくれ」


芦田は起き上がり、零に向かって笑いながらそう言う。すると零は静かに芦田の横を通り過ぎる。芦田は心配そうにもう一度訪ねようとすると。


「・・・・行くぞ、久しぶりに飯食いに行ってやる」


芦田はそれを聞くと零に飛び付く。

勿論、零は見事に芦田に蹴りを食らわせた。







学園から出た二人はさっそくおなじみの奴ら待っていた。


「今回はやけに遅かったな、会長に何か言われたか?」


「・・・面倒臭いからな、あの人は」


同じ生徒会に所属する同級生の薄水色の髪を後ろに纏め上げている少女・南郷雹華(なんごう・ひょうか)に青い髪が特徴的な尾井群蒼道(おいむら・そうどう)が待っていた。


「おーす、ワザワザ待ってたのか」


零は二人に鞄を持った手で振る。


「雹華に尾井群か、お前らも久々に家に来るか?」


芦田も零の後ろからひょいと顔を出してそう言う、だが雹華が申し訳なさそうに芦田に言う。


「済まないな、今日はお隣さんである私が尾井群兄弟の夕飯を作らなければいけないんだ、青利(しょうり)も腹を空かしているだろうからな」


「青利って、尾井群の弟だっけ?」


「・・・あぁ、まだ小六だがな」


尾井群も残念そうな顔で言うと零たちと加わり、歩く。これがお馴染みの“春華零道”と呼ばれる四人組だ。たまに別々に帰るがそれは仕方ない、たまには一人で帰りたい時もある。


「水波と火波は?」


「今日は生徒会一年生女子メンバーだけで打ち合わせという名の遊びに行ったぞ」


「雹華も行きゃあ良かったのにな、あっ・・・尾井群兄弟の夕飯があるんだったな」


「・・・俺だけでも料理くらい作れる」


「色々とお前も忙しいんだろ、会長から聞いたぞ、生徒会の仕事を家に持ち帰ってやってるって」


「大変だな〜尾井群は」


「どっかの芦田(バカ)が雑務ちゃんとやんねぇからな」


「そうだそう・・だ・・・・ん? 俺のせい?」


「青利は何が好きだったかな、カレーだったか?」


「んっ? シカトュ!?」


四人は話し込みながら賑やかな商店街通りにへと入り、雹華と尾井群は途中で別れ、零と芦田はそのまま芦田家にへと直行していた。


「またお前ん家に行ったら店の手伝いをやらされんじゃねーだろうな」


零は歩きながら芦田に訪ねる。だが芦田は一人で何か考え込んで歩いていた。

零は芦田に再び聞いたが無視され、思いっきり重い蹴りを食らわせようとした瞬間に芦田はドバッ! と前方に“飛んだ”。

なぜ芦田が“飛んだ”かというとそれは、


「きゃあぁぁあ♪ 零さんじゃないでスかぁぁ♪」


現れたのはとても元気そうな女子中学生で、茶髪に赤いリボンを結んだポニーテールの似合う女の子だった。


「おぉ相変わらず元気そうだな、(えのき)ちゃん」


零が目の前でキャーキャー騒いでいる女子中学生の名前を呼ぶと、ぴたっと止まり、零を直視する。


「わ、私の名前を覚えていてくれたのですか!?」


「そりゃ友達の・・・・・」


零はチラッと芦田を見る、芦田は妹に蹴られ、膝を思いきり道路に強打した為にかなり痛がって道路でゴロゴロ〜と転がり回っている姿があった。


「・・・バイト先のお子さんの名前を忘れるハズが無いでしょう・・・・・」


「な、何故に遠目になって言ってるんですか?」


榎と呼ばれた女子中学生が不思議そうに零を見ていると、ずっと転がっていた兄、芦田峰春が復活する。


「くぉらぁエノキ! 兄を蹴るとはそれでも──────」


「うっさい!」


ゲシッと芦田の脇腹に手刀を繰り出す。


「い─────────────」


「黙れ」


ドカッと今度は芦田の弁慶の泣き所を問答無用に蹴る、靴の先で。


「ふざけんなぁぁぁ! おま、お前本当にふざけんなよ!? 『痛ぇぇぇ』と俺が叫んでたらやっぱりうるさいからツッコミを入れもOKだよ? 多少過激でも目を瞑るよ? でもな、痛ぇぇぇの“い”の一言さえ言わせないとかどうかと思うのですけどこれ如何に!?」


「結論から、うるさい」



バシッと榎が芦田にそう言うと、流石の芦田も堪忍袋の限界だった。


「て、てめぇ・・・・・俺はお前の兄貴だぞゴラァ!?」


芦田がそう言うと、榎は急に怒りの顔を無くし、少し不安そうな表情になって芦田に訪ねる。


「え、あの、私に兄なんて居なかったんですけど・・・・・どちら様ですか?」


その言葉に芦田は一瞬にして黙り込む。


「すみません、私に兄という存在自体が無いので、これで」


それだけを榎は言うと、スタスタと歩いて行った。

歩いて行く榎の後ろ姿を見る芦田が、その、哀愁が漂っていた。


「・・・なぁ、零」


「な、なんだ芦田」


芦田が神妙な顔つきになって零に訪ねる。


「俺って、誰だ」


「知るか」


一応心配したが、芦田なのでスルーして芦田家に向かう零。

芦田が泣きながら零に抱きつこうとしたので迎撃したのも後の話。




芦田家は御食事所というか和風レストランというか、とにかく食事を営む店を経営しており、町では結構人気を誇っている。


『御食事所“あした”』という店名でやっているらしい。


「・・・いつ見てもすんごいネーミングだな」


「仕方ないですよ、私たちが名付けたんじゃないんですからねー」


そして先に行った榎は普通にお客様が入る入口から店の中に入って行った。


「良いのか、芦田?」


「ア゛ァ!? 知るか!」


そう言いながら芦田も入口から入って行った。


「・・・・入って良いのかよ・・・・」


零は独り呟きながら芦田の後を追って、入口の戸を開けると。


「グッ・モー・ニーング! レッイくぅ〜〜ん♪♪」


超満面な笑顔をした髭ダルマおっさんが居た。


「やめろ変態っ!」


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


先に入って行った榎が強烈な蹴りをその髭ダルマおっさんに食らわせた、髭ダルマは悲痛の叫びを上げながら転がる。


「や、止め、やめろ榎!」


「うっさい変態オヤジ!」


「なんだとっ!? 俺は決して零くんが来るからって別に髭を整えたり、歯を磨いたり、香水をつけて『やっべミネ(峰春)ん家の父ちゃんカッコ良くね? てかマジ若くて男前じゃね? つか髭パネェじゃん』とか言われたいとか思っていないぞ!」


「「完璧思ってんじゃねぇかぁ!!」」


娘と息子に蹴られた父親を気まずそうに見ていた零だったが、ツンツンと袖を引っ張られた。


「・・・ん?」


「・・・・・(ジー)」


引っ張っていたのは襟首まで伸びた茶髪を片方だけ結んだ女の子だった。


「おぉ、久しぶりだね(ひさぎ)ちゃん♪ また背高くなったんじゃないか」


「・・・・・(コクコクコクッ!)」


零の言葉が嬉しかったのか、楸と呼ばれた女の子は嬉しそうに頷くまくる。


「おう、お帰り、楸」


「お帰り〜、ヒサギ」


「お勤めご苦労だった我が妹よ!」


上から芦田の父、芦田、榎が迎える。

まだ取っ組み合いをしていたが。


「そういや楸ちゃんはまだ小学生なの?」


零は楸に聞くとコクリと頷く。


「ヒサギは小学六年生だ、そうや今日は客居ないんだな」


芦田が妹である楸を説明すると、父に向かって聞く。


「おうよ! 今日は零くんに是非食べてもらいたい作品が出来たからな! 今日は休みを取った」


ガハハハと笑う芦田父を見て、零も苦笑いを浮かばせる。


「こっちですよ零さん♪」


榎も零が来ているのが嬉しいのか、お客様があがって召し上がる為にある畳に零を促す。

芦田も仕方なしといった感じに鞄を持って奥に行った。

零は畳に胡座をかいて座ると、隣に榎も座ってきた。


「えへへへ♪」


「・・・・・」


芦田父は調理場に向かい、楸はちょこんとお客様が座る立ち椅子に座り、真っ赤なランドセルを机に置いて宿題らしきプリントを取り出して勉強していた。


「榎ちゃんちっと近すぎないかい?」


「えぇ〜全然近くないですよぉ、むしろもっと近付いた方が良い感じ?みたいな!」


(えぇ〜何この状況〜)


零はズンズンと近付いてくる榎に遠慮するように距離をおく、だが壁がすぐある為に動けなくなる。そんな積極的過ぎる榎の前にいつの間にか居た楸が立っていた。


「ひ、楸ちゃん、ヘルプ! ヘルプミー!」


「・・・・ごめんなさい、アラビア語分かりません」


「あっれぇおっかしいなぁ〜俺英語言ったハズなんだけどなアハハー!?」


隙ありッ! と獲物を前にした狼の如く、榎は零に飛び掛かろうとする。


「おーす、待たせたな・・・・・って何人の妹に手出してんだコノヤロー!!」


そこに私服に着替えた芦田が戻って来た時に丁度襲われていたのでバッチリと目撃されたのだが、何分目撃者が馬鹿な為に零が妹に襲い掛かっていると逆に見えたらしく、榎と共に零に飛び掛かった。


「うぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」


零は体をひねらせて横にへと移動し、難を逃れた。


「はぁはぁ、相変わらず面倒な兄妹だ・・・・・そしていつの間にか楸ちゃんが俺の腰に抱き着いてる!?」


「てめぇ! エノキだけではなくまだ小学生であるヒサギにまで手ぇ出しやがってこの鬼畜野郎!」


「むふぅ〜♪」←楸


「チクショォォォ! 今すぐ俺の代われぇい! ヒサギちゃんヒサギちゃん、お兄ちゃんにも! お兄ちゃんにも抱き着いて良いんだよ!」


「こぉのシスコン変態兄貴がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「ごばあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!?」


抱き着いていた楸が可愛い過ぎたのか、それとも真の妹好き(シスコン)だった為か、変態染みた顔になりながら零と楸に近付いた芦田だったが、その変態過ぎる兄を見た榎が手加減無しのパンチが溝に入る。



「出来たぜぇー!・・・・・ってうおっ! どうした峰春!?」


料理を終えた父が零の前に持って来たのだが、悶絶している息子を見てうろたえた。


「お気になさらず、ただ言わせて下さい。貴方の息子さんは変態です」


「ワハハハハ! 男はそれくらい馬鹿じゃねーとダメだっての!」


零はなるべく優しく砕けて言ったのだが、芦田父はまったく気にしない方向だった。


「御食事所“あした”の新定食! その名も店長の名前が入ったイカした寿司! 『鍬形寿司(クワガタずし)』だぁぁぁぁ!」


ババンっ! と零の目の前に出されたのは漢字の『鍬形(クワガタ)』と彫られたキュウリが握られた酢飯の上にただ置かれただけだった。


「すみません、不愉快です。下げてください」


「ぬぁにぃ!?」


ならばこれはどうだぁ! と次の料理を出してきた。


「御食事所“あした”の新定食パート2! その名も店長の名前が入ったイカした煮物! その名も『鍬形風煮物』っっだぁぁぁぁぁぁ!」


トバンッ! 今度出てきたのはカルパッチョに牡蠣(かき)の酒蒸しに海鮮サラダにポテトサラダに鶏のつくねと若竹煮に()と三葉のすまし汁にしゅんぎくのおひたしにミネストローネに、


「煮物どれだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」




久しぶりにキレた零であった。







場所が変わり、ある高校の生徒会。

そこには黒須学園の生徒会副会長を務めている大月詠(おおつき・えい)が居た。


「私が何故ここに来たのかは、お分かりかしら?」


詠は微笑みながら言うと対面している黒髪長髪でボリュームのあるスタイルをし、制服越しなのにくっきりと引き締まっている所は引き締まり、出ている所は出ている女性が座っていた。だがそんな事を全部丸めて忘れさせるような鋭い視線が詠を捉え話を静かに聞いている。

そんな女性の隣には茶髪を首まで伸ばしたショートカットの女の子が詠を睨む。


「何なんですかあなたは! いきなり学校に来たかと思えばその態度!」


「あら? あなたは・・・・・この学校の生徒会の者ですか?」


「私は東針(とうしん)高校生徒会書記の山吹九花(やまぶき・ここのか)と言います!」


山吹が詠を睨みながら自分の名前と役職を伝える。詠も納得したように頷くと、


「それじゃぁ、ドアからこっそり覗き見しているあの男子生徒たちも生徒会の一員なのかしら、ねぇ赤彦千水流(あかひこ・ちつる)生徒会長さん」


詠がそう言うと山吹がズバッとドアの方を振り向くとそこには少しだけ開けたドアからこっそり覗き込んでいる男子生徒二名を確認した。


「コラァぁぁーー! 勝手に覗くなぁ!」


山吹が怒り心頭しながらドアに近付く。


「やっべ逃げろ!」


「ばっ、声出すなよ! バレんだろ!」


その声を聞いた瞬間、山吹と千水流がピクッと反応した。


「えっ、ちょっと、まさか鼓枝(こえだ)、なの?」


「・・・・・黒ちゃん?」


二人も確認するようにドアに向かってそう言う山吹と千水流、すると、ドアが半開きになり、顔を出して来た男子生徒二名。

一人黒い眼鏡を掛け、髪が逆立つように立たせている男子生徒、もう一人は人当たりが良さそうな柔和な顔の男子生徒。


「すみません!」


「あっちょ! 飛久(とびひさ)ずりぃぞ一人だけ謝りやがって、すみません!」


二人共すぐに頭を垂直にして謝る。


「なな、何で鼓枝と鉛銅(えんどう)がここに居るのよ!」


「いや、俺は行かないって言ったんだけど、何かコイツが・・・・・」


飛久が人差し指を鉛銅と呼ばれた少年に向けてそう言う。


「ちょっと!? お前も九花さんに人目見たいとぶるああぁぁぁぁぁ!?」


「ちょ黙れぇぇぇぇ!」


と二人は取っ組み合いを始め、山吹はその様子を溜め息を吐きながら頭を抱える。すると詠が、静かに、そして平淡に言う。


「あぁ良いのよ、“二人共”関係ある話だから」


それを聞いた二人はピタリと動きが静止した。


「いきなり聞くわね。鼓枝飛久と鉛銅黒護の両二年生はある“チカラ”を手に入れたんじゃないの?」


それを聞いた黒い眼鏡を掛けた少年、黒護がピクッと反応した。黒護だけではなく飛久も肩を震わせた。

だがもっと反応したのがこの東針高校の生徒会長である千水流(ちつる)だった。


「・・・・・すみません、今日はもう遅いですし、お帰りになられた方が・・・」


千水流は黒護に笑い掛けるような純粋な笑みでは無く、軽く人を殺したような冷徹な眼差しで詠にそう言った。

その眼差しを軽くあしらうように詠は微笑みを浮かばて呟く。


「赤彦千水流、貴女の情報だけは私は持っていないのよ。それって・・・・・・どういう事なのかしら? この東針高校に『斬り裂く白き鎖〔リッパー・ザ・チェーンズ〕』が乗り込んだまでは“視て”いたのだけれど、ね」


また何か言おうとした詠がふと、言葉を無くした。いや、話せなかった。





「随分と喋るお方なのねぇ。でも早く帰ってもらえませんかしら? こっちとしては不愉快極まり無いわ」


それを言ったのはまごうことなき千水流だった。

だがそこには黒護の知ってる千水流では無かった。

そして、“千水流の影から出現した巨大な手”が詠を(てのひら)に乗せたように囲んでいた。西洋の鎧手(がいしゅ)のようで漆黒色だった。


「私はこの東針高校の生徒会長です、東針高校(ここ)を護ることが私の『義務』でもあるんです。貴女の用件は知っていますが丁重にお断りさせて頂きます」


「それほどの・・・・・この高校を護れる“チカラ”を保持しているから、と受け取っても良いのかしら?」


詠はこの状況を知っていたかのように冷静に千水流にそう聞く、千水流も頷いて見せると詠は微笑みを消して真剣な表情になる。


「解りました。まだ時間はあります。もし気がお変わりなられたのなら黒須学園生徒会に連絡を」


千水流がそれを聞くと、影から伸びた巨大な鎧手が影に沈み戻っていった。詠は立ち上がり、帰る支度をして山吹が入口まで送りに行った。




沈黙。




飛久と黒護は混乱している頭で目の前の女子生徒、千水流が行ったことを必死に考えていた。


「せ、千?」


黒護がぎこちなさそうな声で千水流に話しかけると、ニコッと笑いながら千水流は二人を椅子に座るように促した。


「いろいろと説明しないといけないみたいね」


千水流は哀しみのある瞳で飛久、黒護を見た。

そして、その言葉を聞いた二人は、高校生では絶対に経験をしなかったハズであろう『殺合(ころしあい)』に身を投じることなるなんて、





考えても居なかっただろう。

次回予告─斑備白虚編─



斑備白虚

「いやぁ、僕が次回予告をするとはねぇ。するからにはさせてもらうよ?


へぇ、レイくんたちは峰春くん家に行ったんだねぇ。家族も多そうだね、え〜と何々、どうやら次回も峰春くんの兄弟姉妹達が登場するみたいだね、楽しみだよ。


因みに峰春くんの兄弟姉妹たちの名前には何かが関連してるんだけど分かるかな?


まぁ〜簡単だよねぇ。



でもねえレイくん、次回の月は綺麗だよ。

是非・・・・・峰春くんと一緒に見てあげなよ。


・・・・また面白いことが起きそうだねぇ。




次回

死神の奇想曲(カプリス)


第22話

「夜月の光は魔煌の輝き、闇は拡がる」



ふふふ、聴こえるよ。


死神が唄う。



騒動歌(さわぎうた)を。

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