第20話「零と黒斬と義姉妹(シスター)と」
題名通りに行きませんでした(泣)
シスター絡んでねぇじゃん!
と思われても仕方無いッスねこりゃ(T_T)
本当に申し訳ございませんでした!
運動会に出場し筋肉痛になって日常生活に四苦八苦している作者・十握剣でした!
今、黒神零はと言うと、家に帰って来ており、布団でぐっすりと寝ていたる。
「スゥ・・・・スゥ・・・・スゥ・・・・Zzzzz」
黒須学園校医の最高責任者である愛手指伸は『もう心配は無いが、家での安静してろ』と言って学園に休みを取らせ、零は家で休養することにした。
「ジィー」
そして零の傍には、零の妖刀である「黒斬」こと、キリがジッーと寝ている零をガン見していた。
そして、
「尾井群ァ、鍋何処にあっか分かる?」
「・・・上の戸棚にあったハズ、無かったら下の戸棚に」
「ちょっす」
零の友達にして、同じ生徒会の仲間である芦田峰春と尾井群蒼道は台所で何かを探していた。
「くっくっく、零の野郎、俺らが平日を返上してまで看病しに来たんだ。後で多額の金をぼったくってやんぜ!」
「・・・鍋あった、ちゃんと探せ芦田」
「あっすみません、てか、芦田と書いてバカって呼びませんでした!?」
「・・・材料は学校の帰りに雹華たちが買って来るからそれまで鍋とか皿とか洗って用意しとくか」
「聞いて!」
どうやら芦田と尾井群たちは零の家で鍋をやるみたく、せっせと鍋や皿などを洗っていた。
そしてさっきからずっとガン見していたキリは何か手伝うことは無いかと台所に入って来る。
「なら、零を見てろ。アイツ一人でまたどっかにいきそうになるからな」
「・・・見張りだ」
「わ、分かりました! キリは全力でご主人さまを見張ります!」
キリは黒く綺麗な長い髪を揺らしながらまた零の元に戻った。
「・・・・信じられねぇよな、あそこで心配そうに零を心配している女の子が、妖刀なんてよ・・・・・・・・・」
「・・・そうだな」
二人は未だに妖刀が、いや刀が人間になることにまだ疑問がっていた。
だがそれは当たり前だ、普通は絶対に有り得ないことなのだから。
二人がそんな風に鍋や皿を洗っていると、尾井群の携帯から電話が掛かってきた。
「・・・もしもし」
『蒼道か! 私だ、雹華だ』
「誰だ? ハッ! もしかして、バレたか!」
芦田が尾井群に掛かって来た電話相手を聞く、だが尾井群は無視して電話相手と話す。
「・・・雹華か、どうした」
『どうしたでは無い! 何故お前と芦田まで休んでいるのだ。朝早くから居ないから気になったぞ』
「ヤベェ! 必死で誤魔化せ尾井群!」
雹華と話している尾井群の横で、芦田は必死になりながら言う。どうやら音は小さいが聞こえたらしい。
「・・・まかせろ」
『・・・・何をだ』
「(バカァァァァァァァァ!!)」
バカ正直に答えた尾井群にびっくりする芦田、なんとか小声でツッコミをする。
何故こんなに芦田は焦っているかと言うと、
「(頑張れ尾井群! ここで朝からサボれる口実が出来たこと雹華に知られるのは非常に危険だ! 殺される、アイツは真面目だからな。こういうのは許してくれないんだ!)」
という訳で、学校をサボる・・・・否、友達の介護の為に休んだのだ。
『・・・・もしかして、そこには峰春も居るのでは無いか? どうなのだ、蒼道』
「・・・居ないよ」
明らかに疑いが混じった声色で聞いてくる雹華に尾井群は涼しそうな顔で普通に返す。
基本、尾井群はいつも無表情が多く、何を考えているのか良く分からいのだが・・・・・・・・・。
『嘘だな、若干蒼道の声に微かな乱れを感じた。それはつまり蒼道が嘘をつく時だ』
「(どんな聴覚してんだあの薄水色女ァァァァ!)」
と小声でまた芦田はツッコミを入れた。
「・・・ちょっと喉が痛く・・・・」
『嘘だな、この乱れは風邪の類いの乱れじゃない。私が一番知っている』
(凄過ぎでしょ、いくらなんでも!!)
芦田はもう口に出さず頭の中でツッコミを入れるようにした。
その後数時間に渡り尾井群と電話をした雹華は、仕方なく引き下がり、帰りに凪瀬姉妹らと一緒に零のお見舞いに行くことになったらしい。
「ただいまの時刻13:26〜、朝来てグテって鍋探して皿洗いとかしてたらこんな時間帯になっちまったな」
「・・・昼飯を食べないか?」
「賛成です!」
「いきなりッスか、キリちゃん!?」
尾井群と一緒に零の部屋に置いてあった机に入りながら芦田が朝から来てからの日程を言うと、昼時なので昼飯を食べようと尾井群が提案すると、布団で寝ていた零の傍から一瞬にして芦田の隣まで移動したキリに驚く。
「ん〜、昼っつってもなぁ。零の奴どうせ節約とかしてそうだからな、何も無ぇんじゃねぇですかい」
芦田は台所に向かって冷蔵庫に何か入っているか確かめる。
「うぉ、何故か魚肉ソーセージがたくさんあるぞ」
「そ、それは私のギョニクそーせーじーですっ! 食べないで下さい〜」
涙声になりながらキリは冷蔵庫の中に入っていた魚肉ソーセージを死守している。
「・・・じゃ、どうすんのよ」
芦田は冷蔵庫を死守するキリを見ながら頭を掻く。
「・・・カップ麺が戸棚にあったハズだ」
「あっ、そうなの。てかお前零ん家の物がどこにあるかどんだけ熟知してんだよ、驚きだわ」
芦田は立ち上がり、戸棚にあるカップ麺を取り出した。
「ん〜、犬うどんに猫そば、それとカレーソバゲティがあるなぁ・・・・・尾井群は何食べる?」
「・・・俺は犬うどんだ」
「じゃ俺は猫そばで───────」
「猫そば(それ)私食べたいです!」
「えぇ! それじゃ結果的にごちゃ混ぜったこのカレーなのか蕎麦なのかゲティなのか分からないこの食べ物は俺が食うことになるわけ!?」
「・・・お前しか居ないだろ」
「ひ、酷いや! 人権侵害だい!」
「・・・・・!?・・・・・」
「・・・・・え、何、その『お前に人権なんてあったのか?』的な表情は!」
「・・・正解だ、お詫びにこのカレーみたいで蕎麦みたいなゲティをお前にやろう」
「正解したのかよ!? 嬉しくねぇし! しかも結局カレーソバゲティ!」
「・・・・!?・・・・・」
「もう良いよ! もっっう良いよ!!」
「・・・正解だ、お詫びにこのカレーで蕎麦みたいな────」
「うひゃはっい! ループしてるや〜い♪」
その後は尾井群が飽きるまで芦田をからかい続け、勝手にキリがカップ麺を食べているのに気付き、芦田たちもカップ麺を食べる。
「ふぅ、食った食ったァ〜。以外といけたな、カレーソバゲティ」
結局食べた芦田であった。しかも好評。
「・・・・・・・・・」
そして、キリは食べている途中からいきなり黙り込み、零の近くでずっと座っていた。
「・・・どうした」
尾井群は黙って零を見ているキリが気になり、声を掛ける。
「尾井群さん・・・・、あの、私昼ご飯を食べてて思ったんです。私だけ幸せになってて良いのかなって・・・・、ご主人さまはこんな重傷を負っていて苦しがっているのに、私は暢気に昼ご飯を食べているなんて・・・・」
キリは自分の妖刀師である零が怪我をしていると言うのに、自分だけ昼食を取っていたのに嫌気をさしたらしい。
その姿は、主を心配する子犬のようにションボリしていた。
「・・・そうか、なら今度は、零の為に何かしてやれば良いんじゃないか?」
「えっ!」
「・・・さっき雹華からメールが届いたのだが、今スーパーみかどで買い物をしているらしく、買った物が沢山有りすぎて困っているらしい。どうする? 手伝いに行くか?」
尾井群の言葉にキリはどうするか迷った、持ち主である零から離れて良いのだろうかと。
「・・・今出来る事と出来なかった事を重ね合わせるな、出来なかった事は出来なかったんだ、でも・・・・・今から出来る事をやるかやらないかでは・・・・・違ってくるんじゃないか?」
尾井群はそれだけ言うと、立ち上がり玄関の方に歩いて行った。
「・・・・ぁ・・・・」
「行って来いよ、零なら大丈夫さ、俺が付いてるし零がここに住んでいるかまでは知らねぇだろ」
キリが迷っている所で、芦田はキリの背中を押して上げるように、そう言った。
「・・・芦田さんが付いてるのが心配ですけど・・・・・分かりました、ありがとうございます! それじゃ私は手伝って来ますね♪」
バタバターとキリは走って尾井群の後を追い掛けて行った。
「・・・俺どんだけ頼り無ぇんだよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぁ、零」
芦田は寝ているであろ零に話し掛ける。勿論返答は無い。
「もう狸寝入りしなくて良いんじゃねーの? キリがいねえんだし」
芦田がそう言うと、寝ているであろ零がムクッと上半身を起き上がらせる。
「・・・・何時から気付いてた?」
「ん〜多分、俺ら来てからダロ? 違う?」
芦田は床にあった週刊誌を取って、パラパラ読みながらさりげなく言った。
(はぁ〜、何でコイツは洞察力だけ凄いんだ?)
零は芦田の以外な凄さに驚きながら溜め息を吐いた。
「なぁ、今結構失礼なことかんがえ────」
「てねぇから安心しろ」
「そうか」
芦田は首を傾げながら納得する。
沈黙。
芦田と零は互いに黙っている。
すると零が言い出す。
「・・・・会長が言ってたこの妖刀育生計画ってさ。もしかしたら何か裏があるんじゃねぇか?」
「・・・・・それも今更だと思うぜ、大体よ〜、高校生に堂々と銃刀法違反してる時点で怪しいとか思わなかったのかよ」
「いや、思ってたけど、そういう学園なのかな・・・・と・・・・・」
「アホかッ、んな学園は漫画の中かアニメの中しか存在しねぇよ! 実際に刀を振り回してOKな学園なんて存在しないっつの!」
パシンッと零の頭に週刊誌を投げつける芦田。
それにイラッときた零は、
「いやぁ悪ぃ悪ぃ、確かにそうだよな(ブンッ!)」
零は近くにあった目覚まし時計を芦田の顔面に叩き付けた。
「うぎゃああああ! 今鼻がグシャっ嫌な音がしたァァ、マジで今グシャってつか痛いィィィィ!!」
芦田は顔面、特に鼻を押さえ付けて転がっていた。
「荒らすなよ」
零は転がっている芦田を横目にまた布団を被った。
(妖刀育生計画・・・・・間違いなく危ない計画なのは分かる)
零の頭の中には今まで戦って来た妖刀師を思い出していた。
まず一人目の妖刀師。
黒須学園を襲おうとした妖刀師・金野。その妖刀の「爆花」。
そして二人目は、黒須学園生徒会に所属している一年生女子達を誘拐し、仲間である異形者・炎条騎烈と共に現れた妖刀師・豊臣風世。その妖刀の「風鈴音」。
最初の相手は油断していたから勝てていたが、二回目の相手、豊臣にはボロボロになりながらの勝利だった。
(これからも、多分妖刀師がやって来る。そん時は俺が何とかしないといけない・・・・・やっぱり、練習あるのみか)
布団で寝ている零はそんな風に思っていると、芦田は部屋にある窓から外を眺めていた。
芦田の瞳は、何処か難しそうに、据えていた。
※
場所は変わりスーパー「みかど」、そこで黒い制服を着ている女子高生が野菜と睨み合っていた。
「ムムム・・・・雹華先輩、このキャベツ高くないですか?」
「うん? どれどれ、見せてみろ」
「雹華先輩、あっちで卵が格安で売ってました」
「何ッ! 買いだな!」
その女子高生とは、零のお見舞いに行く途中で鍋の材料を買っている、黒須学園生徒会所属、黒須学園高等部二年・南郷雹華と黒須学園高等部一年・凪瀬水波と凪瀬火波の双子姉妹の三人だった。
水波は奇麗な青色の髪を、後ろ纏め上げ、雹華は薄水色の髪を後ろで纏め下げており、火波は赤い髪を下ろしてゆらゆらと揺らしながら居た。
この一人一人の少女たちはかなりの『美』が付く程の少女たちで、三人の美少女が集まればかなり注目される。
なにせ何の変てつもないスーパーに美少女が居るので驚いているのだろう。
「鍋に必要な材料は結構買ったな」
そして、雹華たちはスーパーの買い物袋を持って零の家にへと向かっていた。
「そ、それにしても・・・・買いましたね」
火波は買い物袋一杯に詰めし込んだ材料を見て言う。
「うわぁ〜い♪ チョコボール美味〜い♪」
そして水波は袋から茶色い小さな箱を取り出してチョコボールを出して食べていた。
「こら水波、歩きながら食べるのは行儀が悪い・・・・ん? あの青色の髪は・・・・・蒼道か?」
買い物袋を器用に持って歩いている雹華は、道路の向こうから歩いてくる人物に見覚えがあった。
青髪の少年とその隣にちょこちょこと小走りをしてくる長い黒髪を靡かせてやって来た。
「あっ、本当だ、尾井群先輩だ。ほら、火波ィ」
「ちょっと水波ちゃん、ちゃんと買い物袋持ってってよ〜、まったくもう」
「キリも一緒に居るようだな」
雹華は荷物持ちが来たことに少し安堵の気持になり、水波ははしゃぎ、火波ははしゃぐ水波に溜め息を吐いていた。
※
芦田峰春は考えていた、今の状況をどうしようか。
「・・・・・ヤバい」
そう、かなり危険状況になっているのだ。
それは何故かと言うと、
(ゲーム機が・・・・・故障しちまった!)
芦田は尾井群たちが来るまで零の家にあった最新ゲーム機のPS3(プレイステーションスリー)を壊してしまったのだ。
だがこれは芦田は悪くなかったのだ、普通にゲームをやっていたら普通に壊れてしまったのだ。
生憎今は零が寝ていた為にまだ気付かれていない。
だが、いずれは絶対に知ることになる。そうなればかなりのゲーム好きである零に殺され・・・いや、殺されるよりもっと残虐かつ冷酷な罰が下されるかもしれない。
(いや、素でヤバくね!? え、何これ! 普通にゲームやってただけなのにどうして止まっちゃう訳!? プツンってめちゃ嫌な音鳴らして消えたよ!?)
芦田はさっきまで10分くらいフリーズしていて、早速今の危ない状況になっているのに気付き、どうしようか考えていた。
因みにやっていたゲームは芦田がワザワザ買って零の家でやり込んでいたギャルゲだ。
(マジどいしよ!?)
芦田は何回も何十回もPS3本体を見て、何処かおかしいか調べているが分かるハズも無い。
すると後ろからカタッ! と音が鳴り、芦田は、
「あひゃ!?」
物凄い情けない声を出して振り向く。
音が鳴った場所は小型テーブルの上に置いてあった雑誌の上にあった卓球のボールが落っこちた音だった。
何故卓球のボールがあるかと言うとこれもまた芦田が零の家で「卓球やろうぜ☆」と言い出して卓球部からパクってやっていたからだ。
「なななな、何だよ、ビックリさせんなバカっ!」
ボールにキレる芦田、情けなかった。
「と、取り敢えず片付けるか、うん、片付けよう・・・・・」
さりげなく証拠隠滅しようとする芦田だったが、
「何してんの」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
芦田の後ろには寝起きの零が立っていた。
零は芦田を一回見て、テレビ画面を見て、もう一回芦田を見た。
「・・・・・何してんの、いや・・・・・何した」
「あら、あららら!? れ、零さん、さっきよりちょーーっと声が低くありゃしませんでしょーか(汗)!」
零の声はかなり低かった、それがどういう意味かは、もう芦田は知っているが知りたくなかった。
「てめぇゴラァア!!! やりやがったなこの塵男!! お前を外国に売ってやろうかゴラァア!!!」
「人身売買!!? てかごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
程なく芦田の顔面に零の右ストレートがめり込んでいたのであった。
芦田が畳の上でのたうち回っているとガチャンと玄関の扉が開く音がした。
「・・・今帰った、何だ・・・・・芦田がまた何かやらかしたのか」
「失礼するぞ零、ん?、また芦田が馬鹿やったのか」
「尾井群、お前の家かここは。雹華も買い物ありがとう、助かったわ」
荷物を沢山持って、居間に入って来る尾井群と雹華。転がり回っている芦田を見てもいつもの反応をし、零が辛くないのを見、安心してすぐに台所に向かう。
「し、失礼しまーす」
「失礼し、しまひゅ・・・あぅ・・・・・噛んひゃ」
「水波と火波も来てくれたのか、ありがとうな」
重い買い物袋は尾井群とキリが持っていたので水波と火波は軽い買い物袋を持って入って来た。水波は前に一度入ったことがあるがしっかりとは入っていないので少し緊張しており、火波なんては途中で舌を噛んで上手く言えなかった。そして、皆が入った後からキリが来るかと思ったら、
来なかった。
「あれ? キリはどうした」
零は荷物を台所に持って行こうとした火波に聞く。
「キリちゃんなら、玄関の所で立ってましたよ。私も何で入らないのかなって思い声を掛けようとしたら尾井群先輩に止められて・・・・・」
火波がそう言うと、脇からヒョイッと尾井群が現れた、エプロンを着てお玉を持っていた。
そして尾井群はお玉を玄関の方に向け、顔で『行って来い』と言われた気がし、零は言う通りに玄関に向かった。
「まったく、気にすんなよな」
話を全部聞いていた零にとって、キリが入って来なかった理由はすぐに分かった。
零が玄関の方に行くと、沢山ある買い物袋を両手で抱くように持ち、顔を俯かせているキリが立っていた。何処か痛々しい感じがして零も可哀想でたまらなかった。
「キリ」
ビクッとキリは肩を震わせた。
「ご、ごしゅ────────」
「ストップ、止めよう、その単語」
まるで交通安全にあるポスターなどに書いてある言葉みたく言う零はキリと所まで移動する。
「何で入って来ないんだ?」
「その・・・・・・・・・」
零がキリに聞くと歯切れ悪く答えようとするが、言葉が出ない。出てこない。
キリは『持ち主を守りきれなかった事にショックを受けている』。
それは持ち主本人の零にとってもうとっくに分かっていた。
妖刀なのに、何故か女の子になる。
何故?
どうして?
零は毎晩のように考えていた。
でもそれは当たり前な事だと思う。
だって世界の何処に武器が人間になる真実があるんだ?
聞いた事も、当然のように見た事も無い。でも、今目の前に居る少女は『妖刀』、つまり武器になるのだ。
感情が無い訳でも、常識が通じない訳でも、言葉も分からない訳でも無い。
ちゃんとある。
ちゃんとした『少女』なのだ。
「・・・・なぁ、キリ」
「は・・・い」
キリは零の顔を見ず、俯かせたまま返事をする。
何処か返事も元気が無かった。
「俺はお前を、ただの武器だと思ってない」
「・・・・・・・・・えっ」
零は今はっきりと答える。
下手な説明など無く、思っている事を全力でキリに伝える。
それでキリを救えるなら、それでキリが苦しまないなら、零は何万回も言うだろうその言葉を。
「お前はもう、武器とか、そんな感じじゃねえんだよ」
キリは零を見る。
零は力強い意思のある瞳でキリを見ていた。
「別にお前がわざわざ苦しむ必要性なんて1ミリも1ミクロンも無ぇんだよ」
そう、何故キリが苦しむ必要がある?
それは何処にも無い。
「今の今まで、全っっっ部お前に助けられたんだよ。今の今まで生きてこれたのは全部お前の、キリのお陰なんだよ」
事実。
それは紛れもない事実。
「怪我とかしたのはさ、多分、俺がお前を、キリを血に染めたくなかったからだと思う。だってそうだろ、一番最初に戦って金野とか言う爆発野郎だって峰打ちで気絶させて、次の豊臣とかいう奴だって斬れなかった。その、俺の考えで怪我したんだ。自業自得だ」
零は何処かで恐れていたのかもしれない。
自分が何時、この強大な妖刀を持って狂う日が来るのでは無いかと。
刃物を持って振り回す事によって、現代で必要の無い『戦いの意思』が目覚めるのではないかと。
キリを、妖刀黒斬を『道具』として見てしまうのでは無いかと、恐れていたのかかもしれないからだ。
「まぁ・・・・つまりだな。俺は、キリを、“家族”だと思ってんだ」
そう、最初からこう言えば良かった。
零はそれを言った後に気付く。
「今までキリをボロボロにさせちまったかもしれない、キリを悲しませていたかもしれない」
零はキリの頭に手を乗せ、
「でも次からそんなの無しだ、もうキリを、苦しませないようにする。もう泣かせないようにする。理由は単純────────」
キリにとって、安心の言葉になって欲しい。
その思いを込めて零は言う。
「『家族』だかだ」
零のその言葉に、キリは瞳全部に涙を潤ませていた。
家族、武器には職人から造られれば兄弟などが居るかもしれない、だがキリは『妖刀・黒斬』。
世界に一つしか無い刀だ。
家族なんてものは皆無に等しい。
そんなキリに、妖刀の持ち主である零は、『家族』だと言ってくれた。
道具として見られてもしょうがないと言うのに零はキリに名まであげ、『家族』までくれた。
「わ゛・・・・わ゛たし、わ゛たしが・・・・がぞぐで良いんでじょうが、わ゛た─────」
「お前は、俺の、いや・・・・・俺と皆の家族だ」
キリは零に抱き着き、大声を上げて泣いた。
泣いて泣いて、泣きまくった。
そして零も、キリも思った。
家族は、温かいと。
零は泣いているキリの頭を優しく撫で、泣き止むまで撫で続けた。
泣き止んだキリを連れ、鍋の準備を仕終えた尾井群や雹華、皆の皿に添えていく水波と火波、直らないかなとまたPS3を見ている芦田たちと一緒に食べたその味は、キリや零にとって忘れられない味となったに違いなかった。
次回予告─尾井群蒼道編─
尾井群
「・・・今回は楽しんで貰えたか?
零が少しカッコ良かったな。
・・・さて次回は何々・・・・うむ、どうやら芦田が関わっていくらしいな。
ん・・・?
芦田一家が登場するだって?
それは、気になるな。
次回
死神の奇想曲
第21話
「芦田妖々(あしたようよう)」
・・・ほら、聴こえる
死神が唄う
奇想曲を