第2話「学園」
「ねぇねぇ零兄のクラスって何処なの〜?」
――― 零の従妹にして快活な蒼髪美少女 ―――
『白瀬水波』
「零お兄ちゃんは部活に入っているんですか?」
――― 零の従妹にして無垢な紅髪美少女 ―――
『白瀬火波』
黒神零は余りライトノベルとやらを読まない。ただ、聞いたことやアニメなど見たりしてたりするが、今自分が遭遇しているこの状況を誰か見たら恐らくきっと宜しくない方向に進撃していってしまう。それを思わざる得ない状況なのだ。
そんな宜しくない方向の向かわないように、ゆっくり登校派だった黒神零は苦渋に満ちながら家から急ぎ足で出て、焦る気持ちを落ち着かせながら学園へと足を運んでいる、のだが“焦る気持ち”の根源たる存在が零の両腕にしがみ付いているのでこれまた苦水を飲まされた思いである。
「ねぇねぇ零兄のクラスって何処なの〜?」
「零お兄ちゃんは部活に入っているんですか?」
目立つ青空や海の色を思わせる蒼い髪と、ついこの間まで中学生だったとは思えない凹凸のある体をした女の子と、こちらもかなり目立つ夕焼けや燃え盛る炎のように赤い深紅の髪を腰まで伸ばし、長い髪を揺らした女の子が零に質問攻めをしていく。零も戸惑いながらも応答していく。
「あんさ〜。オレ的にとても嬉し過ぎるシチュエーションを展開させてもらってんのは有難いんだけどさぁ。何故にオレの両腕にくっついてんの?」
零は身体中から未だに嫌な汗が止まらないことと、質問の嵐を止めようと口を開く。実はアパートから出てずっと気になっていたことを二人の女の子たちに切り出したのだ。
「そりぁさぁ〜。私達が入学する学園にまさか零兄が居たなんて知らなかったからさー。朝早く挨拶しに行こうって火波と決めたんだ〜♪」
蒼髪で快活な少女の水波はウキウキとしながら零に言ったが零はまだ納得がいってない様子な顔え唸る。腰まである紅髪長髪の火波も困惑した様子で零を窺っていると、だが後ろから毎日のように聞いている声が響いた瞬間に、零の脳が切り替わる。
「ウオーイ! そこのボサ頭のしょうね〜ん。朝からすんごいじゃあ〜りませんか」
「むっ…この無償に苛立ただせる声は……“あした”か」
「言い方ちがぁぁあああああうぅ!!」
零たちの後ろから先程零たちに声を掛けた男子高生が全力で駆け寄って来た。
「芦田だ! 芦田! お前親友の苗字の読み方を忘れるってどんな神経してんだんじゃ、あ? しかも両手に花だなオイッ」
芦田と呼ばれる男子高生は零の両腕にくっついている女の子を見ながらニヤニヤと茶化す気満々の笑顔で零に詰め寄った。茶髪にはなっている男だが、決して不良なんかじゃない。まず度胸が無いなから不良になりたくてもなれないのがこの男。
「あれ、お前は幼女好みじゃなかったのか…いや…一つ年下くらいの女子でもカウントされんのか、いや恐れ入る」
「うん? あれ? なにかなそれは? ボクハソンナンジャナイヨ? ――――――――あのね違うからねお兄さんロリ好みじゃないから、まぁそりゃまあ少しは…少しはあるかもしれないけどね? でもホント少しだからちょこっとだけだからマジでほんのちょっとだけの数ミクロンくらいだけだからマジでガチで」
芦田は必死に水波たちに幼女愛好者ではないことを弁解しようしているがその必死さと早口で逆に気持ち悪さに拍車が掛かる。水波と火波に度し難く引かれていることを芦田はまだ知らない。
「もぅ止せアシタ、もうロリで良いじゃねえか。てかもうロリで良いよ、もうロリコン以外お前当てはまんねぇよ・・・・このロリコンが!!」
「テメェは黙ってろぉ! この…この…特になんもねぇよコノヤロォォォォ!! それと芦田だ!!」
芦田が零に殴り掛かろうとしたが零は可憐に避ける。
「おい、いつまで下らない事をしているんだ。遅刻するぞ」
芦田が道路に転がっていた石ころを掴んで投げようとした瞬間、零が先に投石してきたので芦田はマジビビリして横転し、攻めを怠らない零が砂利を被せてきて、芦田が『上等だキシャァ!!』と本格的な喧嘩に着々と勃発しそうになっていると、後ろから凛とした声が聞こえた。
「雹華か、おはよぅ」
「うむ、おはよう。零」
「キシャァ!! キシュウァア!!」
「あぁ、おはよう。何だ、また零と戯れていたのか? 朝から元気なことだな峰春」
人語を発していないというのに何故か理解して対応している少女に戦慄を覚えていると、いい加減鬱陶しいくなってきた芦田に、ウザそうな目で芦田を見ると黙ってしまった。
「あの〜零兄? この人たち誰?」
「ちょ…失礼だってば水波ちゃん!!」
「「“零兄”!?」」
雹華と芦田は目を丸くして驚いた。零は大変面倒臭そうに『はぁ〜』と深い溜め息を吐いてこれからどうしたものか、と思い更けていると。しっかり者というより真面目な雹華が先に正気に戻り、きちんと自己紹介をし始めた。
「そうだな。名を言っておこう。私は南郷雹華と言う、零とは生徒会の仲間だ」
雹華は満足げな顔で言う。雹華は友達よりも“仲間”と言う関係と表現の方がすっきりしていて気持ちが良いらしい。零も特に思うこともないから気にしていないかったが、改めて言われると少し恥ずかしいと零がく。
「そうかそうか、零のシスターズか、俺は芦田峰春ってゆうもんだ。中学の頃からの付き合いになるな。なぁ零、この娘達の名前はなんて言うんだ」
芦田が自分の事を紹介した後、気になる零の妹たちの名前を兄であろう零に伺い聞こうとするが、何故かその本人も思案顔になり、そして、
「あぁっと・・・・・名前なんて言うんだっけ?」
「お前の妹だろうがぁ!?」
芦田は勢いツッコミを零に向けて放つも、綺麗に受け流す零。雹華はいつもの事と言った感じで芦田と零を見て、肝心の妹たちはと言うと自分たちの兄がロリ好みの男子高生にツッコミを入れられて心配しながら見ていた。
「お前アホか? アホだよな? 何で名前知らないで一緒に登校して来れんだよ、人の事散々ロリコン、ロリコン、ロリロリコンって言っといてそれ無くね!? お前の方が危ねぇっつうの」
「ふんっ、馬鹿め、お前には分かるか? こんな可愛い女の子が俺の妹とかぬかして玄関先に居たんだぞ? もっっう良いだろ? もう何か良いだろ? 分かんない? 分かんないかなぁ~」
「何が良いのか分からんが、お前は俺よりなんかアブナイ感じなので。このシスターズは俺がウェスコートしてやるよ!! さぁさ! お兄さんと行こうか♪」
芦田がニコニコと精一杯男前な笑顔をしながら紅い髪をした女の子の手を触ろうとした瞬間、
「火波に触んな! ふれんな! 近寄んな!!」
「ええええぇぇぇ!?」
蒼い髪をした少女・水波が勢い良く芦田の手を弾いた。
「火波に病気にでも移ったらどうするつもりだ!!」
「えっ、何この扱い!? 急すぎるよ! 急すぎる冷たさにお兄さん耐久力一気にゼロよ!」
「確かに最初の印象は大切だな、“あした”」
「言い方違ぁぁぁぁう!!」
と言った感じで延々と続きそうになったので雹華によって止められる。雹華が居なければ多分ずっとこのままだったと思うと大変ありがたく思う。芦田は零と妹達(特に水波)に弄られ続けながら、学園にへと歩いていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そして現在、零達はいつもの教室に着いていた。結構早めの登校だったのだが、クラスにはもう何人か登校している生徒もいた。
「確か今日は入学式だったな、早く帰れるんじゃね?」
「あ〜良く居るよな、早く帰れて凄く嬉しそうにしてる奴」
零と芦田は席は隣同士であり、窓側の席に座っている。
「だがな、俺たちもそうだったがこの《黒須学園》の入学式って色々と面倒臭いだよな。何か華やか過ぎだし」
「零は知らねぇのか? この黒須学園って元女学園だったらしいぜ〜、現に今も男子高生の人口密度少ねぇしな、まぁ俺としてはウハウハで嬉しいッスけどね〜アハァッハッハッハ」
「五月蝿い」
零はポケットから何故か入っていた“ワサビ”を取り出して大きく笑って、口を開いている芦田の口の中に躊躇無くワサビを投入した。
「あああがががががぁあっぁぁあぁぁあッッッッ!!!??」
と叫びながら喉を押さえながら廊下に出て行った、本当に騒がしい奴だなと零は思いながら再び外を眺めた。気にしていないような感じを見せていたがやはり朝の妹の件が気になった。
零は妹達と別れ際にやっと名前を聞いたらしい。
蒼い髪をして気が強そうな女の子の名前が白瀬水波。
紅い髪のロングヘアーの内気な感じの女の子の名前は白瀬火波と言うらしい。姓を聞いてハッと零は思い出した。零の姓は母方の姓であり、父の姓は『白瀬』。零は昔、叔父に聞いた話では父は世間から言う“バツイチ”と呼ばれる、離婚者らしい。そして前の母親は事故で亡くなり父と前の母との二人の間に産まれた双子の娘が居たらしい。その双子は昔よく一緒に遊んでいた記憶があったが何らかの理由により離れ離れになってその日から一度足りとも会っていなかった。つまりあの妹達は義妹となる。
年齢など気になるのだが、向こうは零を『兄』と呼んでいる。つまり『妹』となる訳だが、年を考えると、かなり際疾いと零は思った。これは絶対“何かある”と。
「だから“お兄ちゃん”か…まさかあんな可愛い女の子になっていたなんて、知らんかった」
年齢など考えることもあるがただ単純にあの双子姉妹を思うと、気苦労うも沢山あったんじゃないか、と朝少ししか会ってない義妹たちに零が一人考えていたら、物凄い勢いで教室に芦田が帰って来た、何やら摩ったりして喉を押さえている。
「ヒューハー、ヒューハー、てめぇクソ零。ハァハァな…何で学校にワサビ持って来てんだ疑問だこのヤロウ、てめえのせいでもろワサビ飲んじまったじゃねぇか!! 修学旅行のテンションじゃねんだぞコラァ!! ぶっ殺してやる……ぶっ殺してやんよぉぉぉぉ!!!!」
芦田が零に襲い掛かろうとした瞬間、芦田の顔にチョークが命中した。しかも一発だけじゃんなく、顔面ありとあらゆる部分に命中させるほどの大量のチョークがヒットする。芦田の周囲に白い粉が沢山と舞う。
「ぎゃあぁぁぁ!? 目に、目にチョークがぁああ!?」
芦田は両目を、いや顔のあらゆるパーツ部分を手で当てながらゴロゴロ教室を転がり回る。だが馬鹿の回復力ではその程度微塵に思わなかったのか、すぐに体勢を整えてチョークを投擲してきた方向を見ると、そこには零と芦田たちクラス担任の出雲縁先生が居た、黒くて長い髪と豊穣の女神とでも言い張りたいと言わんばかりの胸が特徴で学園内でもその妖艶さで『この先生に教わりたいランキング!』一位の先生だ。この先生には“多種多様のファン”が沢山居ると聞いているが、零から言わせたらこの出雲縁と呼ばれる人は“純粋な大人な女性”の形容だろう。
「さっさと席に着け芦田、お前だけだぞ。席に座ってないのは」
「それを生徒の目玉にチョークを投げつけた先生の言葉かっ!?」
「あぁ? 何か文句あんのか?」
先生の言葉でクラスは凍りつく。聞いた話では出雲先生は昔、ヤンキーだったんじゃないかと言う説があった。そこが強い女という強調があったせいか同性から多く好かれる理由になっている。そして元女学園ということはきっと清楚やら淑やかに(隔たった零の考え)などの静かな学園の筈。ならばそんな清楚で淑やかな学園でのあり得ない強気口調の女教師に皆が唖然呆然となるかと思えば、みんな普通の姿勢でこの芦田と出雲のやり取りを静観していた。『慣れるって恐いね』と改めて零が思っていると、出雲に数秒睨まれ続けられた芦田は、蛇に睨まれた蛙の如く。先程まで零に対する怒りで身を震わせていたが、もう今は別の意味で身を震わすことに転化していた。
「どもすんませんしたぁぁぁぁ!!!」
そして何も躊躇わず瞬時に土下座をするこの男に零はある意味で尊敬の念が浮かびまくっていた。潔く謝る芦田に、他の男クラスメイトたちは『コイツにはプライドは無いのか!?』とふと思わせていると、芦田の眼が自然と何かを語り掛けてきたことに気付く。
―――――テメェら、よく見やがれ、これが恥なんて捨てた漢の勇姿よ!!!
「分かったらさっさと席に着け、朝のホームルームを始めるぞ」
「あざぁーす!!」
((((ええええええっっっっ!!!??))))
なんとも軽そうな声と情けない顔で、腰低くして先生に媚び姿勢になっている芦田に一瞬でも『コイツ・・・カックイイかも』と思いを馳せた男クラスメイトたちは嘆息が尽きなかった。芦田は物凄く良い返事を返して席につき、嘆息するクラスメイトたちにドヤ顔をしていたが、忘れていなかったのか零を怨めしそうに睨み付けていた。取り敢えずあとでクラスメイトたちと仲良く芦田を用いて親睦を深めよう。
「えぇ~今日は黒須学園にやって来る新入生の入学式だ。色々と準備やら片付けは主に三年と二年がやったな? 当たり前だがな。準備はもう前日にやり終わっているから時間になったら体育館に向かって学年ごとに並べよ~」
怒らなければ基本普通の先生である出雲はそう言うと、あとは学級委員長に任せると言って入学式の準備をしに体育館にへと向かった。
「うぉいこのボサ頭万年寝不足ヤロウ!! さっきはよくもやってくれたな・・・・」
「お〜い柚葉、ちっと教えてもらいたい事があんだけどさ~」
「アレ? 零さんシカトュすか? シカトュ? ん・・・・・アレ? なになに、何で男子だけのクラスメイトがオレの周辺にだけ集まって来てんの? えっ? アレか! さっきのか! ち、近寄んじゃねぇコノヤロヒュゥギグュ!!?」
芦田の気持ち悪い息が絞まる声が後ろから気こえてきたが無視し、零は学級委員長である角坂柚葉に疑問に思ったことを聞いた、柚葉は綺麗な金髪で、腰まで伸びたロングヘアーが似合っていて、クラスの中でも上位に入るほど可愛らしい。
「ん? なぁに零ちゃん」
「その・・・柚葉さん? いつまで“ちゃん”付けなんだい? いい加減恥ずかしいだよですよ?」
「えぇ〜語尾がおかしくなるほどイヤなの~? 良いじゃない零ちゃん。それで零ちゃんは何を知りたいの~」
間延びした柚葉の応答に、零は溜め息を吐きながら柚葉に聞いた。
「生徒会長から何か聞いてない? この前なんか言ってたような気がしてたんだけど、急いで買出しに行く時だったからまともに聞いてなかった」
「ああ、零ちゃんは一人暮らしだもんねぇ~。う~んと、あ~あ。そ~言えば生徒会長が入学式で生徒会の挨拶があるから会員たちは集まってくれって、委員会の時に言ってたわよ~」
「・・・そうか、ありがとう」
零は柚葉に礼を言うと、『いえいえ~♪』と微笑んで、もうすぐ時間が近付いていた為、クラスの皆を廊下に並ばせる指示を出していた。おっとり、の印象が強い委員長だが、その分クラスの皆がしっかりとしていた為、良い折り合いだ。女子の同級生には心配されつつも仲良く一緒に行動してくれて、男子の同級生には、その愛くるしい姿で何かを言われたら反発の『は』の字すら出てこないまま言うとおりにしてくれるので、このクラスは面白いように上手く纏まっていた。
「何話してたんだよ零~・・・ハッ!・・・まさかデェトのお約束・・・・・・・・ってバカッ! オレのバカッ! オレたちの可愛いユズハちゃんをそんな不純な考えを向けるなんてバカッ! 零のバカッ!」
「何でオレがバカになってんだよ。うるさい奴だなホントにお前は、余りにうるさいと土に埋めて綺麗に土葬するぞ」
「えっ? ちょ・・・・何故にそんな早急に埋葬の話が!?」
芦田はまた零に顔を近付いてきたので、鬱陶しそうに芦田の目に容赦無くチェストした。
芦田は両目を押さえ、また愉快に教室をゴロゴロと横転しては回転していので零は先に廊下に出て行き、教室を鍵を閉めて体育館にへと向かった。
何やらドアを叩いている音が聞こえたが風でも強いのだろうか。だが零たちにとってそれは勿論気にすることのないことなので、集会が始まるえあろうあの広く巨大な体育館にへと向かっていった。
※
「・・・・・・・目覚めは始まりましたか?、アレを早く目覚めさせないと暴走を始めますよ」
とある暗い部屋の中には黒いフードを被った者が居た。地に着くほどに長く、性別が分からないくらい体を覆う黒いフード。
「・・・・・それは、分かっておりますが、まだ早期にして時期では無いかと・・・・・」
その黒いフードを被った者の前にはまた別の黒いコートを着た男が居た。体のシルエットを綺麗に晒すように、雄々しき筋肉が張りを目立たせる。だがそれは巨躯だという訳ではなく、平均男性の身長に身合った引き締まる膂力が目で見えそうなくらいだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「時期はもうすぐです、もうすぐ・・・“妖刀”が・・・集まります、どうかそれまでお待ち下さい……」
黒いコートの男は黒いフードを被った者の前に跪き頭を下げた、そして呟いた
「・・・・・・黒須理事長・・・」
黒いフードを被った者は窓を開けると外には闇夜を照らす月光が染まっていた
「・・・・始まりますよ、この学園で闘いが・・・」
黒いフードを被った者は、ただそこに、不適な微笑みを浮かべて笑っただけだった。
読んで下さりありがとうございます。
今回もグダグタ感があふれてました。
やっぱり小説って難しいですね。
次回は零が所属している生徒会の話について書きたいと思っています。
2013/10/24 第二話を徐々に改善中
2015/05/17 ちょっと改善。↑から全然手を付けてない(T_T)