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死神の奇想曲(カプリス)  作者: 奇想曲
17/24

第17話「風の妖刀師」

なかなか終わりません誘拐編。


夏休みなので頑張って更新したいと思います!

廃棄工場の中では風が吹き荒れていた。

その吹き荒れている中心には刀身を緑色に染めた刀を握っている銀髪でうまい具合にセットし、チャラ男風の青年が立っていた。


「もう面倒だ、この工場ごと吹き飛ばすか?」


『それは良い考えですね、と言いたい所ですが駄目です。変に目立ちますし、他の妖刀師(ブレイドマスター)やら異形者(イレギラ)が集まって来るかもしれません』


銀髪の青年、豊臣(とよおみ)は自分の妖刀であるリンこと『風鈴音(カゼノスズノネ)』と話していた。


零はそんな豊臣を見て驚愕の顔を浮かばせていた。


(まさか、リンが妖刀でアイツが妖刀師だったなんて・・・・!)


零はリンから攻撃を受けて、脇腹を押さえている義妹(いもうと)に近付いて豊臣との距離を取っていた。


「大丈夫か、火波(ほなみ)?」


零は火波に聞くと火波は軽く頷く。


「お兄ちゃん、私が時間を稼ぎます、だからその間に水波ちゃんと芦田先輩たちを・・・・」


「駄目だ」


火波は今を脱出する一番の最善策を零に提案するが、すぐに取り消された。


「なッ、だってお兄ちゃん、今一番に助かる方法はそれしか・・・・」


火波が零に再度考えを改めるように言うが零は一向にその考えを否定する。

そんな二人のやり取りを眺めていた豊臣は『風鈴音』を肩に落として見ていた。


『・・・・豊臣さん』


「まぁそんなに焦んなよ、コイツらがどうやってこの窮地を抜け出すか、どう抗うか、見てみようぜ」


豊臣はそう言って零たちを見ていた、リンは少し不服のようだったが主である豊臣がそう言うので従う。





「ハァハァ・・・・お兄ちゃん、相手もそうずっと待ってくれない、やっぱり私が・・・・」


火波はそう言って、立ち上がろうとしたが零に手を取られてまた座ってしまった。


「お兄ちゃん?」


火波は零を見てみると何やら企んでいる表情で豊臣と向き合った。


「オイ、アンタら!」


零が豊臣たちに向かってそう言うと立ち上がって中指を立てた。


「いつまでも余裕ぶっ込いんでんじゃねーぞゴラァ! どうせそんな妖刀を持った所で俺を抹殺できるはず無ぇだろ!」


バーカ、バーカと零が豊臣たちに罵声を浴びさせているとリンの方がキレてしまった。


『殺します、殺します、殺します、殺します、殺します』


なんか怖い言葉を連発しはじめました。


「ハハハ、この時に挑発とはどういう事だ? 注意を周りの人間から離させたかったのか? だったら安心しな、お前さえ抹殺できりゃそれだけさ」


「んな言葉を俺は信じると思ってんのか?」


豊臣の言葉に零は一瞬迷ったが、相手が嘘を言って安心させた所で斬ってくるかもしれなかったので、零は反抗の言葉を出す。


「まぁ信じねえよな、俺に取っちゃあどっちでも良いんだ、さっさとお前を斬れば片付く仕事だからな」


そう豊臣が言うと妖刀『風鈴音(カゼノスズノネ)』を零に構えた。


「だから、もう終わらせる事にする」




ヒュンッ!




零の耳に風が通った音がした瞬間、




────チリーン




風と共に鈴の音も聞こえた、すると、




ズバッ!



「ぐわっ!?」


零の肩が少し斬られていた。


「本当だったら首にいってたさ、一撃で殺せば痛みを感じないで逝く。もういっちょいくぜ」


豊臣がそう言ってまた『風鈴音』を構える。


『今度は首ですので』


「くっ!」


リンから発せられた死の宣告、零は必死に逃げようとしたが、


「風の速さから逃れられるか?」




ヒュンッ!




とまた“何か”が放たれる。

その何かが零の首目掛けて飛んでいくと、




ボォォォォォォ!




紅の炎が壁となって“何か”から零を守った。


「まだそんな力が残ってたか、赤髪の女の子」


炎の壁で零を守ったのは、異形者(イレギラ)として目覚めたばかりの火波の炎だった。


炎条(えんじょう)との戦いでかなり消費したと思ったんだけどな」


確かにその通りで、火波はかなり疲れている表情で力を使用した。


「お、お兄・・・・ちゃん、に・・・・げて」


かなり微かな声で零に言った後、火波はバタッとその場に倒れてしまった。


「ふっ、兄を守るために必死に力を使ったのか、泣ける話じゃねーか」


豊臣はそう言って目線を火波から零に代わる。


「・・・・あんな必死な女の子に守られて、お前はどうするんだ?」


豊臣は『風鈴音』を構えて、零に語り掛ける。


「ふッ、何も考え無しに妖刀師(ブレイドマスター)になったなら、それはお前の失態だ」


緑色に輝く刀身を斜めに構え、中腰になり、右足を前にだし、左足を後ろに下げる。


「・・・・もう、仲間やら家族やら傷つくとこ見たくないだろ」


そして、豊臣の目には首を捉えていた。


「これで終わらせてやる」



そう告げた豊臣の周りには旋風のように風が螺旋状に吹き荒れ、廃棄された工場の鉄の機械やら、鉄柱、壁が切り刻まれていく。



ビュゥゥーー!



と風が吹く音が工場内に吹きわたっていた。


「痛みを感じさせねえよ、それがせめてもの慈悲だ」


豊臣がそう言って『風鈴音』の切っ先を零の首に狙いを定めて、


「風の突きは、鉄をも貫く、さぁ、吹き飛べ・・・・」




バッッッ!!




豊臣は地を蹴った、爆発したようなそのスタートに零は一瞬たじろぐが、まっすぐな瞳で迫りくる豊臣の妖刀『風鈴音』の刀身を見つめる。


「風爪突貫!」


豊臣は『風鈴音』を地面になぞるように突き上げて爆走する、零の首目掛けて。


そして風の刃に包まれた『風鈴音』はビュゥ! と風音をたて、突き上げた。




だが、








ガキンッ!








まるで刃と刃がぶつかったような金属音が鳴り響く。


「・・・・俺とリンの“風の突撃”を止めるとはな」


豊臣は静かに『風鈴音』を止めた相手に言う。


『あ、アナタは・・・・』


リンも妖刀常態である『風鈴音(カゼノスズノネ)』を止められた事に驚いていたが、止めた“相手”にも驚いていた。







「・・・・私のご主人様に何をしているのですか」



静かに、だが何処かに怒気が含んでいた声がその場を包んだ。


「聞いて、いるのです。あなた方は・・・・私のご主人様に何をしているのですか」


そして『風鈴音』を止めた相手は緑色の刀身を片手で掴んでいた。


黒く(つや)やかで背中まで伸びた長い髪を靡かせ、黒い洋服を着こなし、両手には指部分だけが切り取られているグローブを付けている少女。


その少女に、零は声を掛ける。





「遅かったな、キリ」


キリと呼ばれた少女は零と向き直り、ニコッと可愛い笑顔を向ける。


「遅くなってしまって、その、ご・・・・ごめ──」


「謝罪は後だ」


零に謝罪をしようとしたキリに零の言葉で静止させられる。


「戦うぞ」


その言葉を聞いたキリは一瞬に目を鋭くさせ、掴んでいた刀身に殴り掛かる。


「させねぇ!」


「くっ!」


だが、豊臣は刀身に風を(めぐ)らせてキリから離させる。


ヒュンッ! と風音を鳴らし、キリから一歩下がる。


「・・・・まさか、妖刀を呼んでいたとはな、『刀契約』の使い方を知っているのか?」


豊臣は『風鈴音』を零に向ける。


だが、


「ご主人様にそのような汚物を向けるな! 目障りだ!」


キリの容赦無い罵声が豊臣に浴びさせた。


「う、うわぁ〜、お前の妖刀って最悪だな」


「俺も今ビックリしたわ!? えっ、てか“おぶつ”って何?」


と以外というか、いきなりそんな難しい漢字単語を出された所で理解していない零に怒りをフル活動する豊臣の妖刀『風鈴音』ことリン。


『おおおおお、汚物だとォォォォ! キ、キサマ!』


「いや、俺は言ってない、キリが言って────」


何故が怒りの矛先が自分に向けられているのにビクビクしている零は必死に自分では無いと主張しようとした瞬間、


「汚物は汚物ですよ、緑色とか腐っているんじゃないですか?」


とキリは物凄く冷たく二人に言い放った。


「てか、キャラ変わり過ぎじゃねお前!?」


自分の妖刀の劇的な変貌に驚く零。

キリは零と向き合うと、


「えぇ〜、だってあの人達はご主人様の大切な友達や妹を傷つけたんですよ! 許せません・・・・殺しましょ」


キャルル〜ン♪ といった感じに可愛く腰を横に揺らしながらアブノーマルな発言をするキリ。


「・・・・・・・・・・・・」


余りにも衝撃的な変貌と言動に脳が追いつかない零、すると妖刀化しているリンから声が掛かってくる。


『・・・・いつまで待たせるんですかアナタ達はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』


もの凄い大声で零たちに言った。

豊臣も持っていた妖刀から大音量の声が放出したため耳がキーンとなっていた。


「くあぁ、そんな大声出すなよ」


『さぁ早く、早く抹殺しましょう豊臣さん!』


妖刀化したリンこと『風鈴音』は主である豊臣を急かす。


「チッ、そうだな、報告によると妖刀を持つと黒い衣に身に纏うらしい。そして妖刀を貫かせない程の布鎧(ふがい)と化す」


豊臣はそう言うと『風鈴音』を天に向けるように翳す。


「なる前に叩け、だ」


豊臣がそう言った瞬間に消えて居なくなっていた。


「・・・・!?」


零は急に消えた豊臣に不安が過る。

だが、その不安は一気に降りかかってきた。


「風の重さを体験しな、風砕点(ふさいてん)!」


そう告げた途端に零の頭上から大量の風圧が掛かった。


「がッ!?」


ガツンッ! と零は地面に頭を強打し血が滲み出る。


「くぅ、ご主人様!」


キリも風圧に押し倒される。

しかし、押し倒した後に微かに酸素が無くなっていくのをキリは感じ取る。


(くっ、このまま窒息死させるのか!)


零は激痛がする頭を押さえようとするのだが、手さえも風圧で押し付けられ、動かさないでいた。


豊臣は妖刀『風鈴音』を二人に向けながら近付いて来た。


「悪いが苦しむ形で殺すようになっちまった、お前が妖刀を連れて来なければ痛みを感じないで死ねたものの」


フゥ〜、と溜め息を吐く豊臣に零は笑みを浮かばせる。


「な、なに、買ったような気で、いやがるんだ、まだ、終わっちゃいね、えぜ?」


零は酸素が無くなっているその時でも強い体勢を取る。


『念のためです、風砕点の風圧で動かなくなっている所を利用して、首を跳ねましょう』


「そうだな」


豊臣もその方が確実に殺せると考え、リンの考えを了承する。


「スゥ・・・・スゥ・・・・、うぉ、い、マジ、かよ」


零は苦しくなりながらも必死に風砕点の風圧を逃れようとしている。


「これで俺の仕事は終わるな」


豊臣は緑色に染まっている刀身を掲げながら言う。

そして、死の刃が零の首に降り下ろされた。



だが、







カキンッ!






また、金属音が響く、だが今度は確実の“刀同士”の音だった。


「終わらせねえよ」




豊臣は見た。




今、目の前にいる黒髪が異様に目立つ男子高生が、黒き衣に身に纏っていくのを。







「お前はこれから残業だ」





そう告げたのは、漆黒の刀を豊臣の妖刀と交差させている一人の死神(おとこ)だった。







「勘弁してくれよ」


次回予告─黒神零編─




「何か今回から『キャラ一人一人ずつ次回予告をやってった方が面白くね?』的な考えを急に開花した作者、これからコレでいくみたいです・・・・、これも全部作者の気分でこうなりました。


作者代わって謝ります、すみません!!


てか俺いつも作者の代わりに謝ってね!?





え〜さて、次回予告の最初の当番に来たオレ、黒神零がやらせてもらいます。



恥ずかしいけど。






零の窮地に駆けつけた影、その正体は零の妖刀であるキリだった。


キリが来たことにより、やっと対等に戦えるようななった妖刀師(ブレイドマスター)・零は敵の妖刀師・豊臣との戦いに突入!



傷付けられた仲間と妹、怒りを(あらわ)にした黒き衣に纏いし者。



絶対に生き抜いてみせる!




次回

死神の奇想曲(カプリス)


第18話

「戦いの序曲(はじまり)




ほら、聴こえる。



死神が唄う


序曲(アペルテューラ)



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