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第百五十三話 異形化

「ウガァァァァアアアアア!!!!」


 魔石を飲み込んだシルヴィウスは胸を押さえ唸り声を上げた。


 苦しんでいるのか!?


 胸を掻きむしり苦悶の表情を浮かべる。激しく叫ぶ声は人間とは思えない程の声。耳を塞いでも鼓膜が破れそうだ!

 顔や胸を掻きむしりあちこちから血が噴き出す。傷だらけだ。しかしその手を止めることはない。

 悶え苦しみ叫び声を上げ、そして顔を上げると…………もうシルヴィウスの面影はなかった。



「兄上!?」



 ヴィリー、それに俺たちも驚愕の顔でシルヴィウスを見詰める。


 あれはなんだ!? 銀髪と青い瞳はそのままだ。しかしその顔はもうシルヴィウスだと認識は出来ない。



「ガァァァァアアアアアアアア!!!!」



 空に向かって叫び声を上げた。それと同時にボコりと身体が歪む……!?


 ボコりボコりと身体が徐々に膨れ上がって来る!! 顔は歪み、身体も巨大化していく!!


「な、なんだ……これ」


 大きく腕を振り回し、瓦礫を吹っ飛ばしながらどんどんと巨大化していくシルヴィウス。

 身体のあちこちに他の人間のような形が見える…………吐きそうだ…………。


 あれは…………魔石に取り込まれた人たちか…………なんてことだ…………。


 白かったシルヴィウスの肌は巨大化するにつれ真っ黒に変色していき、ボコボコと歪んで見える身体には無数の人間らしき形が…………


「魔石の力を取り込んだせいで、今まで魔石に取り込まれた人々がシルヴィウスに融合してしまったのか……」


「あぁぁあ、兄上……」


 ヴィリーは悲痛な顔。そして動けないでいた。



 ドゴッ!!!!



 シルヴィウスは周りの瓦礫を殴りつけた。暴れ出し踏みつけ、己の拳や足から血が噴き出そうとも、それらを気にすることはなかった。ただひたすら暴れる……おそらくもう本人の意識はないのだろう。


 シルヴィウスの拳がヴィリーの頭上に降り注ぐ!


「ヴィリー!!」


 呆然としたまま動かないヴィリーの腕を引っ張り、なんとか回避。


「ヴィリー!! しっかりしろ!! もうシルヴィウスは助けられない……俺は奴を倒す!!」


 悲痛な顔のヴィリーだが、もう待っている訳にはいかない。このままこいつを暴れさせていると、俺たちどころかナザンヴィアの人々すら全滅だ!


「アルギュロス!! もう一度力を!!」


『ふん、厄介なやつが出て来たもんだな』


 そう呟いたアルギュロスは再び俺の肩に手を置いた。長い銀髪が風に靡く。アルギュロスの力が俺に注がれていく。


 俺の魔力とアルギュロスの力が融合していく。慣れて来たとは言え、やはり凄まじい力だ。心臓が早鐘を打つ。身体が沸き立つようだ。


「皆、俺の後ろに下がれ!!」


 皆が後ろに下がったことを確認すると、身体中を巡るアルギュロスの力を掌に集中!!

 掌をシルヴィウスに向ける。そして放出!!!!


 暴れ回るシルヴィウスに向けて黒魔法を!!


 掌からは今までにないほどの最大出力の黒魔法が放出される!!



「行けぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!!!」



 黒い炎は巨大化したシルヴィウスを飲み込む。



「ぐわぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」



 黒い炎に焼かれシルヴィウスは叫び声を上げる。


 しかし動きは止まらない!! それどころか苦しいからかさらに一層暴れ出す!!


「リュシュ!!」


「くそっ!!」


 皆が心配そうにしているのが分かる。俺にはこの黒い炎しかない!! これを突破される訳にはいかない!!


「うぉぉぉぉおおおおおお!!!!」


 魔力がなくなっても良い!! ここで勝負を付けなければ皆死んでしまう!! 今、ここで止めないと!!


 もっと!! もっと!! もっと!!!!


 アルギュロスが肩を掴む手にも力がこもる。


 頭の先から、足の先から、全ての魔力を搾り取るかのように、今ある魔力を全て掌に集中させる!!


 巨大な黒い炎はさらに巨大になりシルヴィウスだけでなく、周りの瓦礫をも燃やし尽くして行く!!


 しかしシルヴィウスはもがき苦しむだけで消滅させることが出来ない!!

 一体どうしたらいいんだ!! 魔力が切れてしまう!!


 黒い炎のおかげでその場に留めておくことは出来ているが、しかしそれだけだ。消滅出来ねば意味がない!!



「ぐおぉぉぉぉおおおおお!!!!」



 シルヴィウスは雄叫びを上げた。



「!!」



 黒い炎が!!!!



 シルヴィウスの周りにある炎だけを残し、俺の魔力が尽きた…………。


いつも読みに来てくださりありがとうございます!

皆様、良いお年をお過ごしください!

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― 新着の感想 ―
[一言]  ううむ、ここで魔力切れ。  しかーし、こういう時は仲間が力を貸すと相場が決まっているのだ。そうに違いないw
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