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第百五十話 地下へ

 魔力を発動出来ないまま、再び目に見えぬ捕縛用魔導具で身柄を拘束された。

 一体なぜ魔力を発動出来ないんだ!


 無理矢理引っ張り上げられ立たされる。


「来い!!」


 兵士たちは背中を殴りつけるかのように押し、俺たちを移動させていく。


 ヒューイは今にも暴れ出しそうなほどの不機嫌な顔付きだ。ヴィリーは項垂れ、ロドルガさんは悔しさを滲ませている。


「くそっ! こんな奴ら蹴散らしてやる! リュシュ!!」


「駄目だ、今暴れたところで魔力を封じられていると同じことを繰り返すだけだ。今は様子をみる」


「そうだな、おそらく兄上がなにか魔導具を持っているんだ。魔力を封じる魔導具を」


 ヴィリーも眉間に皺を寄せながら話す。


「おい! 黙れ!」


 背中を思い切り殴られ、前に倒れそうになる。ヒューイは怒りの表情で睨み。ヴィリーは苦痛の表情だ。俺もヒューイもヴィリーより頑丈な身体だ。殴られることに痛みはあるが、おそらくヴィリーよりは負担は少ないはず。


「大丈夫か?」


 小声でヴィリーに問いかける。


「あ、あぁ」


 ロドルガさんも心配そうにヴィリーを見る。


「どこに連れて行く気だろう……」


「おそらく……」


 ヴィリーは連れて行かれる先が分かっているかのような口振り。兄弟だから兄の思考が分かるということか? それとも…………


「おそらくあの術のところに……俺たちをあの術の生贄にしようと思っているんだ」


「「!!」」


 俺もヒューイも目を見開いた。


「あの術のところにか!?」


 思わず声を上げてしまい、再び兵士に殴られる。それを見たヒューイが殴った兵士に蹴りを入れた。


 兵士は怒り狂いヒューイに殴る蹴るの暴行を加えた。


「やめろ!!」


 ヒューイは暴れ出し蹴りを入れ、頭突きで反撃。しかしやはり腕を拘束されているため、あっという間に再び形勢逆転されてしまう。ヒューイに向かい剣の柄を振り下ろしてきた! そう思った瞬間、俺は間に割り込んだ。そして剣の柄は俺のこめかみを掠め、血が噴き出した。


「リュシュ!!」


 ヒューイは焦って俺の顔を覗き込んだ。しかしその瞬間ビクッとヒューイの身体が震えたのが分かった。


 俺は血を流しながら兵を思い切り睨み付けた。


「大人しくついて行く。だから殴るな」


 自分でも驚くくらいの低い声が出た。理不尽に殴りつけられる理由はない。拘束されている者を殴るという行為に嫌悪感を抱いた。

 いくら術でおかしくなっているのだとしても、許せないことはある。怒りを瞳に宿らせ睨み付けると兵士はたじろぎ無言となった。




 城の中心にあり、一番高い棟。そのなかには謁見の間があった。しかし今向かっているのはそこが目的地ではないらしい。謁見の間の王座。そこまで連れて行かれると、兵が王座の背後でなにかをしている。

 なんだ? なにをしている……


 そう思った瞬間、ゴゴゴゴと重いものが擦れたような音が響き渡り王座が動き出した!!


 大きな音と共に王座が前に動いたかと思うと、その後ろには地下へと続く階段が現れた。


「こんなところに隠し通路があったのか……!!」


 ヴィリーが悔しさを滲ませている。ヴィリーは知らなかったのか。


 地下へと続く階段。薄暗い階段を降りて行く。不快な気配がどんどんと濃くなって行く。教えられなくとも、ここが「例の術」の部屋まで繋がっていることが容易に想像出来る。


 過去の記憶が蘇る。人間たちの苦悶の声。纏わり付く亡霊たち。


 吐き気がした。重々しい気配に潰されそうになる。


「リュシュ、大丈夫か?」


 ヴィリーが心配そうに顔を覗き込む。


「う、うん、大丈夫。大丈夫……」


 自分に言い聞かせるように大丈夫だと繰り返した。そう、俺は大丈夫。過去を思い出しても、また目の前でそれが繰り返そうとも、きっと大丈夫。止めると決めたんだから。二度とあの術を繰り返させないと決めたんだ!


 大きく深呼吸をし、前を見据える。


 地下へ降りた先には一つの大きな扉。そこからは不気味な気配が溢れ出していた。


 ゆっくりと開かれた扉の向こうにはシルヴィウスが。


 そしてシルヴィウスの目の前には巨大な魔石。人を飲み込んでしまいそうなほど巨大な球体。吸い込まれそうな不気味な感覚。

 真っ黒かと思うと、なかでなにかが蠢くように赤黒くも見える。


 ぞくりとした。


 あぁ……あのときと同じだ…………


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― 新着の感想 ―
[一言]  やはり、魔石のところに。さて、フェイたちが気づかれていなけれぱ、まだ逆転の目はあるのだけど、どうなりますか。
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