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第百四十八話 シルヴィウス

「うわぁぁぁぁあああ!!!!」


 ナザンヴィア兵たちは黒い炎に驚き後退る。炎が触れた者は悲鳴を上げる。触れた部分が真っ黒になり、苦痛に顔を歪めている。見事に皆パニック状態だ。黒魔法でナザンヴィア兵を全て殺してしまおう、などとは思わない。これで逃げてくれたら良し、もしくは戦意喪失してくれたら良いだけだ。


 なにを甘っちょろいことを、と言われるかもしれないが、出来ればナザンヴィアの人々を殺したくはない。


 しかしその考えが間違いだったことがすぐに分かった。この混乱に乗じて逃げようと一歩踏み出そうとした瞬間、目の前に銀髪で青い瞳の男が現れた。


 ヴィリーに似ている……ヴィリーを少し歳上にして髪を長くさせた…………



「兄上!!」



 ヴィリーに振り向くと、悲痛な顔をしていた。ロドルガさんも現れた男を睨む。


「兄上? 兄上って……ナザンヴィアの第一王子ってことか……」


「あぁ、第一王子のシルヴィウス……私の兄だ……」


 ヴィリーは唇を嚙み締めた。


「やあ、ラヴィリーグではないか。お前は城を出たのではなかったか? 今さら何をしに戻った?」


 不気味な笑みを浮かべるシルヴィウス。なんだあれ、気持ち悪い。こいつが例の術を……。


 周りでは黒魔法の炎が消えようとしていた。パニックになっていた兵たちもシルヴィウスが登場したことで落ち着きを取り戻しつつあった。


「ちっ、まずいな。逃げる隙がなくなったぞ」


 ヒューイが呟いた。

 そう、兵たちが落ち着き出したこと、シルヴィウスが登場したこと、さらにはシルヴィウスの背後には新たな兵たちが集まっていた……これは……まずいかもしれない。


「兄上!! もうやめてください!! あの術は危険です!! 父上もそのせいで亡くなられたのでしょう!?」


 父親が亡くなったとドラヴァルアにいるときに聞いたらしいヴィリー。悔しかっただろう、駆け付けたかっただろう、それらを全て我慢し、例の術を止めるため、父親や兄を止めるために今まで耐え忍んでいた。


 せっかくここまで来たのに、こんなところで捕まるわけには……。


「そうだよ、お前がいない間に父上は亡くなられた。お前は父上の死に目にすら現れず逃げたままだ。そのお前がなにを言っているのだ」


「…………」


「私は王となった。お前はもう必要ではない。私の邪魔はさせない」


 そう言葉にした瞬間、シルヴィウスは片手を上げた。それと同時に背後にいた兵たちは一斉に俺たちを取り囲む。


「!!」

「兄上!!」


 ヴィリーは叫ぶがシルヴィウスは不敵な笑みを浮かべたまま。


「ドラヴァルアの人間たちなどと手を組むとはな……愚かな弟よ」


 一斉に兵たちが俺たちを捕えようと襲い掛かる。


 もう一度黒魔法を!!


 ぐっと手を握り締め、黒魔法を放出しようとした瞬間、ヒューイも同様に吹雪を放出しようとした瞬間、バチッ!! と静電気のような痛みを感じ、掌に込めた魔力が霧散した。


「なっ!?」


 なんだ!? 魔力が消えた!?


 掌を見詰め消えた魔力をなぜかと考えている余裕もなく顔を上げたが、すでに遅かった。

 ヴィリーやロドルガさんが剣で応戦したが、やはり数が多過ぎる。

 俺は剣を抜き、フェイに教えてもらったように魔力を込め応戦しようとしたが、やはり魔力を発動出来ない! なぜだ!!


 ロドルガさんの大剣でなぎ倒されようとも、まるで痛みを感じないかのように俺たちに襲い来る兵士たち。なんなんだ、この異常は兵士たちは!!


 上からのしかかられ、地面に倒れ込んだ俺たちは、多くの兵に抑え込まれ身動きが取れなくなった。

 シルヴィウスは近付いて来たかと思うと、地面に這い蹲る俺たちを見下ろした。


「ハハハ!! 無様だな!! ラヴィリーグ!! ドラヴァルアなどと手を組むからだ。私に従っていれば良いものを!!」


 シルヴィウスの不気味なまでの笑み、そして放つ気配がゾッとする。ヴィリーは悔しさを滲ませるが、もう反論することも出来なかった。


「捕えろ。こいつらには役に立ってもらおう」


 シルヴィウスは兵に指示をすると長い髪を靡かせ去って行く。



 俺たちは捕えられた……。


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― 新着の感想 ―
[一言]  うーん、魔法が封じられるとは。例の術の副作用みたいなものかなあ?  こうなるとフェイたちの行動に全てがかかってくるんだけど、さて……。
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