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第百四十五話 罠

 階段を降りた先は真っ暗闇。ヴィリーは魔導具のランプに火を灯した。


「なにもいじられていない……」


 真っ直ぐに繋がる細い通路には何もない。ただ暗闇が続くだけ、誰かいそうな気配もない。風もなく不気味に空気は淀み、不快な気分になる。


「不自然なほどになにもない。殿下……」


 ロドルガさんが呟いた。


「あぁ、罠かもしれんな……」

「罠?」

「あぁ、私たちはこの隠し通路から脱出して来た。私たちがこの通路を使ったとバレていなかったにしてもおかしい」

「なんで?」

「私たちが通った痕跡すらないんだ」

「痕跡? …………」


 周りを見回す。細い通路には何もない。痕跡と言ってもなにか落ちているでもない。あると言えばヴィリーたちと俺たちの足跡だけ…………


「あ!!」

「足跡がない!!」


 ヒューイも気付いたようだ。

 そうだよ、足跡がない! 俺たちが通った足跡はあるのに、ここから脱出したはずのヴィリーたちの足跡がない。本来なら城側からの足跡があるはずだ。それが一切ない。


 それは誰かの手によって消されたということを物語る。


「そう、私たちが脱出したときの足跡すらない。それはおそらく追手が通ったことを隠すためにわざと消していった……。再びこの通路を使って私が戻って来ることを見越して……」


「ということは、この先には敵がいる可能性が高いな……ここは諦めるか……?」



 そのとき何かが光り出し、通路全体が明るくなった!


「「「「!?」」」」


「しまった! やはり罠か!!」


 よく見ると土を掘られただけの通路の壁になにやら小さな魔石が埋め込まれていた。それらが反応したのか!


「誰か人間が通ると反応するように仕掛けられていたようだ! まずい! ここから離れよう!」


「リュシュ!! 人間の足音だ!!」


 ヒューイが叫ぶ。


「あっちから大勢の人間が来る!」


「!!」


 魔導具に反応したナザンヴィアの兵か!!


「戻れ!!」


 俺たちは来た道を走る。足音がどんどんと近付いて来る。このまま追い付かれるわけにはいかない!



「いたぞ!!!!」



 振り向くとナザンヴィアの兵が!! もうすぐ出入口だ!!


 そう思った瞬間、開いていたはずの扉が閉まるのが見えた。


「!?」


 扉が閉じられた!!


「どういうことだ!!」


「おそらく先程反応した魔導具と同様に入口にもなにかしら魔導具が設置されていたのだろう。反応と同時に扉を閉じ、脱出不可能にするために!」


 まずい!! ここで捕まるわけにはいかない!!


 掌に魔力を込めた。炎では自分たちも巻き込まれる…………


「雷撃!!」


 狭い通路をナザンヴィアの兵が迫りくる。

 土壁を這い伝った雷撃はナザンヴィアの兵を広範囲に攻撃した。


「ぐわぁぁぁあああ!!!!」


 今まで雷撃を見たことがないのだろうか、ナザンヴィアの兵は驚きたじろいだ。前を行く兵たちが次々に倒れ込み、後ろの兵は何が起こったのか理解出来ていないようだった。


「走り抜けるぞ!!」


 もうこうなれば正面突破しかない!! 雷撃を打ちながら兵のど真ん中を突き抜けていく。兵たちは初めて見る雷撃に身動きが取れないでいる。その隙に次々と兵をなぎ倒していく。


 それでもなんとか動こうとする兵は剣を振りかざし迫りくる。ヴィリーやロドルガさんがそれらを薙ぎ払っていく。ヒューイは吹雪で兵たちの足元を凍らせていく。足と地面を凍らせられた者たちは身動きが取れなくなり、パニック状態だ。


 その混乱に乗じ一気に森とは逆方向の出入口らしきところまでたどり着いた。


「出口だ!!」


「待て、リュシュ!! 外にもいるかもしれない!!」


 確かにそうだ! しかしここで止まっても他に道はない!! 勢いよく飛び出し身構える。



 バシィィィイイインン!!!!



「!?」


 激しい音とともに身動きが取れなくなった!!


 な、なんだ!?


「「リュシュ!!」」


 ヴィリーとヒューイの叫び声が響き渡った。


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― 新着の感想 ―
[一言]  また無茶をする!  しかし、これでこっそり侵入作戦は破綻。この窮地をどう脱する!?
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