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第百四十四話 隠し通路

 クラッと貧血のようなものを感じたが、なんとか耐えアルギュロスを見た。見た目は何も変わっていない。しかし確実に何かを感じる。身体のなかになにか今までになかったもの。それが縛りというものなのか?


『契約は済んだ。手を離せ』


「あ! す、すみません!」


 慌てて手を離すと、左手の甲になにやら薄っすらと魔法陣のような紋様が浮かんでいた。


「? なんだこれ?」


『契約の証だ』


 そう言ったアルギュロスの左手の甲にも同じ紋様がある。


『その紋がある限り、お前がどこにいてもすぐに分かる。名を呼びさえすれば、そこに移動出来る。それを忘れるな』



 それだけ言い残し、アルギュロスは精霊たちを連れて一瞬にして消え去ってしまった。




 緊張からか、魔力切れなのか、一気に力が抜けて座り込んでしまった。


「リュシュ! 大丈夫か!?」


 皆が心配して覗き込んで来る。


「うん、アハハ……ちょっと気が抜けた」


 アンニーナが魔力回復薬をくれた。それを一気に飲み干し回復を待つ。


「まさかリュシュが精霊王と契約をしちゃうなんてね。あんた、どんだけ凄いのよ」


 呆れたようにアンニーナが苦笑する。


「本当に凄いよね。確かに精霊が見えるんだからあり得るのかもしれないけど、まさか精霊王なんかが実在するなんて」


 いつも冷静なフェイまでもが驚いた顔だ。


「精霊に力を借りただけでも魔力増幅になるんだから、きっと精霊王の力ならとんでもないんだろうな!」


 ネヴィルは興奮気味だ。

 ヴィリーやロドルガさんも驚きの顔を隠し切れないようだった。


「んなことより、城に突入するんだろが!」


 ヒューイが突然竜人化し叫んだ。


「精霊王とやらの力も借りられたんだろ!? 後は突入するだけじゃねーか! ちんたらしてると術を発動されちまうぞ!」


「だな」


 皆、顔を見合わせ頷き合った。


 フェイの手を借り、立ち上がる。よし、もう魔力は回復した!


「ヒューイの言う通りだな。とにかく早く潜入してあれを探さないと!」




 ドラヴァルアで計画を立てていたように、二ヶ所の隠し通路を探索することになった。

 二手に分かれ、調べたのち再びこの場所で合流という計画。そこから方針を立てる。


 俺とヴィリーとロドルガさん。フェイとアンニーナとネヴィル。それぞれ地図にあった隠し通路を別れて探る。竜たちはこの集合場所で待機。ヒューイはもちろん俺に付いて来たけど……。




 森のなかを探索しつつ歩く。城に近付くにつれ、どんどん不快さが増していく。不穏な気配を肌で感じる。


「あぁ、なんてことなんだ。なぜここまで……止められなかった自分が悔しい……」


 ヴィリーは悔しさを滲ませている。ロドルガさんも眉間に皺を寄せている。


「ヴィリーのせいじゃない」


 そんな言葉気休めにすらならないのは分かっていたが、言わずにはいられなかった。


「ハハ、ありがとう、リュシュ」


「今そんなことどうでもいいんだよ、これからどうするかだろうが」


 ヒューイがそんな微妙な空気を吹き飛ばす。


「アハハ、ヒューイらしいな。潔い」

「あ!? 馬鹿にしてんのか!?」

「ち、違うよ! 褒めてんだよ!」


 胸ぐらを掴まれそうな勢いだったため、思わず小走りに。そのときなにかに躓き転びそうになる。


「うおっ」


「なにやってんだよ」


 馬鹿にしたような表情で見るヒューイ。イラッ。お前のせいじゃないか。

 足元を見るとなにやら違和感が。


「ここだな」


 ロドルガさんがしゃがみ込み、足元の枯れ葉を手で払う。するとそこには小さな扉らしきものが地面にあった。


「これだ、私が抜け出したやつだな。一番使える可能性は高いが……」


 皆が見詰めるなか、ロドルガさんが扉の小さな突起に手を掛けた。その突起を引っ張るとさらに棒が飛び出し、それを掴んで扉を持ち上げるように開いた。


 ギギギィィと音を立てながら開いた扉は砂埃をパラパラと落とし完全に開かれた。中は真っ暗闇だ。


「これ、大丈夫なやつか?」

「分からない、ここから見た限りでは特に見張りや、いじられた形跡はないが……」


 小さな炎を掌の上に浮かべ、中を覗き込んでみると、細い階段が続き、その先に道が見えたが、手元の灯りだけではその先は見えなかった。


「とりあえず降りてみるか……」


 ヴィリーがそう呟き、皆が了承の頷きで顔を合わせた。


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― 新着の感想 ―
[一言]  こういう時はヒューイのような性格は助かるものですね。いや、褒めてるんだから胸倉をつかむな。  しかし、二手にわかれてそのまま突入? 合流しないのかな?
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