表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/163

第百三十七話 相棒

「ヒューイ!! 大丈夫なのか!? 無事なのか!? 返事をしてくれ!!」


「ヒューイ!!!!」



 光が収まり風で舞い上がった砂埃が周りをモヤモヤと視界を遮るが、微かに影が見える。

 元々のヒューイの姿よりは圧倒的に小さな影。


 次第に砂埃も収まって来ると、濃い青色が見えた。


「ヒューイ!!!!」


 ヒューイの元に勢い良く駆け出した。こんなに短い距離なのに長く感じてしまう。ヒューイはどうなった!? あの青い色はヒューイの色だ! 無事なのか!? ヒューイ!!


 駆け出しヒューイの魔法陣中心へとたどり着くと、そこには跪き蹲る一人の人間がいた。



 濃紺の髪の毛、健康的な肌の色、蹲っていながらも均整の取れた筋肉が分かる見事な体躯。


「ヒューイ……?」


 蹲っていた男はゆっくりと顔を上げた。

 その顔は精悍な顔付き、切れ長の目は金色に輝き、意思の強そうな瞳で俺を見上げた。そしてゆっくり口を開くと……


「リュシュ」


「!!」


 その声は紛れもなくヒューイの声だった。


「ヒューイ!!!!」


 勢い良くヒューイに抱き付き、存在を確かめるように力いっぱい抱き締めた。



 温かい。


 生きている。


 触れた身体から鼓動を感じる。



「ヒューイ!! ヒューイ!! あぁ、良かった!!!! あぁぁぁあ!!!!」



 泣いた。

 ヒューイが無事で良かった。

 ヒューイが竜人化出来て良かった。


 キーア…………



 涙が止まらなかった。

 喜びなのか悲しみなのか、もうそれすらも分からないほど、ただひたすら泣いてヒューイを抱き締めた。


 ヒューイは小さく俺の名を呼んだが、俺が落ち着くまでそっと抱き締め返してくれていた。背中にヒューイの手の温かさを感じ、生きているということを実感していった。




 ようやく俺の涙が落ち着いて来たとき、頭上からログウェルさんの声が聞こえた。


「あー、落ち着いたか? そろそろ離れたほうが良くないか?」


「え、あ、はい」


 あまりに泣きまくったことが急に恥ずかしくなり、ヒューイから身体を離した。そして少し振り向き見上げると、皆が周りに集まっていた。


 嬉しそうな表情でもあるのだが、なんだか皆微妙な顔で視線を逸らす。

 ん? なんだ?


「とりあえず、これ」


 ログウェルさんがマントのような大きな布を渡して来た。


「?」

「ヒューイに」


 意味が分からず、とりあえず受け取りヒューイを見た。

 抱き付いたままだったため、顔が間近にありビクッとしてしまった。竜のときもイケメンだったが、竜人になってもやっぱりイケメンだったな。


 そんな呑気なことを考えていたが、ふと触れている身体に意識がいった。ん、んん!?


 ヒューイの肩に手を置き身体を離していたが、その肩は温かく、肌が剥き出しだ。そしてゆっくりと視線を下の方へと移すと、胸も腹も…………


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 慌ててヒューイから飛び退き、慌てて布をヒューイに被せる。ひぃぃい!! 素っ裸じゃないか!! いや、当たり前か! いやでも、そんなこと気付く余裕なかったし!! とにかく無事な姿が嬉しくて…………素っ裸の男に男が抱き付いていた絵面…………うぐっ。


「ブッ。今頃気付いたのか」


 皆が笑い出す。そ、そんなこと言われても……


「とにかく成功おめでとう!!」


 皆が笑顔でそう言ってくれた。


「あ……はい、ありがとうございます」


 再び涙が溢れた。


「良かった……本当に良かった……ヒューイ……」


 グズグズに泣きながらヒューイを見た。

 ヒューイはマントに包まりながら、フッと笑った。


「ヒューイ、ありがとう……本当にありがとう……」


 ニッと笑ったヒューイは俺の頭に手を置いた。


「これからは俺がお前の相棒だ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  あー、竜は服着ませんものねw  最初はキーアが相棒になるものだと思ってましたが……。尊い犠牲だったんですね。  しかし、ツンデレだったころのヒューイが懐かしい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ