駅の中で、かくれんぼ 5
──*──*──*── 駅の中
お姉さんと一緒に駅の中へ入ると、お姉さんは僕の手を握ったまま何処かへ向かって歩いている。
何処へ向かってるんだろう??
「 お姉さん、何処に行くの? 」
「 駅長室よ 」
「 駅長室?
どうして? 」
「 怪奇を止める事が出来たとしても、被害者が無事に戻って来るとは限らないからよ 」
「 えっ……どうして…ですか?? 」
「 今までも神隠しって類いの怪奇に遭った人間は世界中に居るけど、全員が戻って来ているわけじゃないの。
戻って来ない人間の方が圧倒的に多いのよ。
出口が過去に繋がっていたのかも知れないし、未来に繋がっているのかも知れないわ。
出口が外国に繋がっているかも知れないし、別の世界に繋がっているかも知れないの。
人間の人知では測れないのが怪奇なのよ 」
「 ……お姉さん、別の世界って……何処…なのかな? 」
「 平行世界とか、異世界とかじゃないかしら?
もしかしたら、別の惑星とか宇宙空間かも知れないわよ 」
「 そんな事があるんですか? 」
「 例えばの話よ。
──着いたわ。
此処に依頼人が居るのよ 」
「 駅長さんかなぁ? 」
「 さぁね、どうかしら? 」
お姉さんは駅長室のドアを開けて、駅長室の中へ入った。
僕も一緒に駅長室に入る事になった。
駅長室での話を終えた後、お姉さんと一緒に駅の中に出店されているお店を見て回った。
色んなお店があるから見ているだけでも楽しい。
駅の中なのに変わったお店もあって、大丈夫なのかなぁ〜〜〜って思っちゃう。
僕は初恋のお姉さんと手を繋いで2人きりのデートを満喫する事が出来て幸せです。
えへへへ(////)
「 ──お姉さん、喫茶店に入った時も感じたんだけど……、駅に入った時も空気が変わったように感じたよ…。
どうしてなのかな? 」
「 えっ?
空気が変わった?
ユタク君、ちゃんとワッカは身に付けてるのよね? 」
「 は、はい…。
ちゃんと身に付けてます 」
僕は服の中からワッカを出して、お姉さんへ見せてみた。
「 そうよね。
確かにアタシが渡したワッカで間違いないわ。
でも…それならおかしいわねぇ 」
「 何がおかしいんですか? 」
「 ワッカを身に付けてるなら、空気が変わった事に気付かない筈なのよね… 」
「 えっ……そうなんですか?? 」
「 ユタク君を連れて来て正解だったわね 」
「 え…あの……それってどういう事ですか?? 」
「 間違いなく、今日中に怪奇が起きるわよ。
良かったわね、ユタク君♥ 」
「 ちっとも良くないですよぉ〜〜〜 」
お姉さんさんは嬉しそうに僕へウインクをしてくれるけど、僕はちっとも嬉しくないよぉ……。
駅の中にある飲食店で夕飯を食べている。
【 ポルの樹 】って名前のオムライス屋さんで、出来立てのトロ〜〜ふわっなオムライスが美味しい♥
お姉さんが注文したとオムライスと僕が注文したオムライスを半分に分けて食べている。
2種類のオムライスが食べれてラッキー♪
デザートも頼んじゃった♥
デザートが運ばれて来る前にトイレへ行きたくなった僕は、店員のお兄さんにトイレの場所を聞いてからお店を出た。
トイレぐらい1人で行けるから、お姉さんには店内で待っていてもらう事にした。
男子トイレの個室で用を足して、ちゃんとハンドソープで手を洗った僕は、ハンカチで両手を拭きながら男子トイレから出た。
──あれ??
さっきまで沢山の人達が駅の中を歩いていて、ガヤガヤと騒がしかった筈なのに、今は誰も居ない。
駅の中はガランとしていて、シーンとしている。
急にどうしたんだろう??
どうして誰も居なくなっちゃったんだろう??
気味が悪くて、怖くなった僕は、ハンカチをポケットに入れてから、お姉さんが待っている【 ポルの樹 】を目指して走った。
【 ポルの樹 】に着いたから、店内に飛び込んでお姉さんを探した。
お姉さんと僕が座っていた席の前に来たけど、お姉さんの姿はない。
「 お姉さん……。
お姉さんっ!!
お姉さん、何処に行っちゃったの!!
僕を1人にしないでよ…… 」
テーブルの上には何も出ていなくて……、飲み掛けの氷水が入ったコップも食べ終わったお皿も、スプーンも見当たらない。
周りのテーブルを見てみたけど、やっぱり誰も座って居ないし、店員さんも居なくて……、テーブルの上には何も置かれていない。
「 …………此処は…何処なの…? 」
僕は【 ポルの樹 】の店内から出て、駅の中を歩き回ってみる事にした。
駅の中にある時計を見付けたから、時計の秒針を見てみたら止まっているみたい。
「 壊れてるのかな… 」
僕は勇気を出して「 誰か居ませんか〜〜 」って、大きな声を上げてみた。
うぅ……恥ずかしいよぉ…(////)
誰も居なくて、シーンと静まり返っている駅の中は不気味で怖い……。
誰かを探して誰も居ないお店の中に入って「 誰か居ませんか〜〜 」って声を出すけど、何処のお店からも返事は返って来ない。
僕……このままずっと1人ぼっちなのかな……。
…………ふぇぇ……お姉さぁん……会いたいよぉ……。
駅から出ようと思って出入り口へ向かったけど、見えない壁が張られているみたいで、駅からは出られないようになってるみたい。
「 嘘だぁ……。
外には沢山の人が歩いてるのにぃ!!
何で出られないのぉっ!! 」
僕は見えない壁を両手でバンバン叩いてみたけど、誰も気付いてくれない。
駅の方に向かって歩いて来る人達も居るけど、壁の中には入って来ないで姿が消えちゃう。
もしかして……此処って……これって怪奇の仕業なのかな??
僕は怪奇の被害に遭ってるって事なの??
此処に居ても駅から出られないなら意味はないよね…。
僕は諦めて駅の中へ戻る事にした。
誰も居ないガラン…とした駅の中を歩き回って、改札口を潜ったら通路を歩いて階段を降りた。
電車が入って来るプラットホームに着いた。
此処にも誰かの姿は無くて……。
「 電車も停まってないや… 」
どうしたら…お姉さんの所に戻れるんだろう??
僕は泣きたくなって…ベンチに座った。
何で僕がこんな目に遭わないといけないのぉ……。
僕は怪奇なんか体験したくないのに……。
誰か僕を見付けてよぉ……。
誰か僕を助けてよぉ〜〜〜!!