駅の中で、かくれんぼ 2
「 そんな凄い人の手料理が食べれるなんて嬉しいです… 」
「 引き抜いて来た甲斐があったわよねぇ!
アンジェー、最高! 」
「 あの…お姉さん……、その…アンジェーって誰ですか? 」
「 あぁ、此処のマスターよ。
因みにオーナーはアタシね 」
「 えっ…??
この喫茶店って、お姉さんのお店なんですか? 」
「 そうよ。
曰く憑き物件でねぇ、タダ同然で貰っちゃったのん♪ 」
「 え……いわくつき…?? 」
「 この喫茶店が行き付けなのは、アタシがオーナーだからよ。
会員制の喫茶店にしたのもアタシなの。
此処は異質な敷地だからね 」
「 い…異質?? 」
「 あぁ…ユタク君はアタシの助手見習いだから、話しとかないとね。
この敷地はね、昔から怪奇が起こっていたの。
喫茶店を建てる前はね、40年も買い手の付かない土地だったのよ。
何でも、此処に日本家屋の屋敷が建ってた頃に大勢の使用人達が原因不明の死を遂げて亡くなったらしいのよね。
当時の警察が調べたらしいけど、結局死亡の原因は不明のままでね、家主一家も原因不明の死を遂げて、家主が代わる度に起こったみたいなの。
気味悪がった近所の住人が屋敷に放火をしてね、とうとう屋敷は取り壊されて更地になったの。
それから、買い手が一切付かないまま40年過ぎたってわけ 」
「 その土地をお姉さんが買ったの? 」
「 買ったって言うか、泣き付かれて押し付けられたって言うか──。
優しいアタシは善意で手付かずの土地をタダ同然で貰ってあげたの。
土地の権利書も持ってるわよ 」
「 えと……沢山の人が原因不明の死を遂げた土地に喫茶店を建てたんですか? 」
「 そうよ 」
「 どうして喫茶店にしたんですか? 」
「 オーナーになれば、タダ同然で料理を食べれるからよ 」
「 えぇ〜〜〜……。
あの……そんな危ない土地に喫茶店を建てて大丈夫なんですか?
被害に遭ったりしないんですか? 」
「 被害って──、怪奇の? 」
「 はい… 」
「 あぁ…それなら大丈夫よ。
だって、アンジェーもソツバも見える人だし、アンジェーは陰陽師なのよ 」
「 陰陽師??
安倍晴明みたいな…ですか? 」
「 そうそう。
今でも安倍晴明の子孫が居るのは知ってる? 」
「 テレビの心霊番組で見た事があります 」
「 そうよね。
今や心霊番組で彼を呼ばない局は無いぐらい超有名で超売れっ子な陰陽師。
【 安倍晴明の直系の子孫──イケてる次代の陰陽師☆安倍磨易 】で自分を売り出してる彼奴はねぇ…駄目よ 」
「 はい?
何が駄目なんですか? 」
「 彼奴は陰陽師だけど、全然見えてない奴なの 」
「 え……見えてない??
何が見えてないんですか? 」
「 モノノケや残留思念よ 」
「 モノノケ…??
残留思念…?? 」
「 モノノケは妖し──分かり易く言えば、妖怪の類いね。
アニメでケケケの鬼太郎ぐらい見た事あるでしょ? 」
「 はい…あります 」
「 残留思念は──、世間一般的な言葉で言うなら、幽霊の事ね。
悪霊になる前の地縛霊や其処等辺をフラフラしてる幽体の事よ 」
「 そ…其処等辺?!
居るんですか……幽霊や地縛霊が…… 」
「 居る居る。
普通に居るわよ。
地縛霊は動かないで、その場に佇んでるってだけよ。
事故が起こると、其処へ花束とかお供え物とか置いて合掌しちゃう人をテレビで見るでしょ? 」
「 はい…偶に見ます 」
「 あれをしちゃうとね、その場に残留思念が固定されちゃって、動けなくなっちゃうのよね〜〜。
残留思念が地縛霊に変わると、残留思念が集まって来ちゃって空気が澱んじゃうのよ。
空気が澱むと、地縛霊が残留思念を吸い寄せて悪霊になっちゃうの。
──で、その悪霊が事故現場周辺で事故を誘発させちゃうのよねぇ。
怪奇が起こる原因を作ってるのは、何も知らないで “ 良かれと思って事故現場で、お供え物をしたり、合掌しちゃう人達 ” ってわけ。
怪奇ってのは、正体が分からないと恐怖いものだけど、原因が分かってしまえば怖さも半減するでしょ 」
「 怪奇を生み出してるのは見えない人達…。
それって…本当なんですか? 」
「 本当よ。
見える人ってのは、事故現場にお供え物をしたり、合掌したりしないの。
残留思念──地縛霊が見えちゃってるからね。
空気が澱んでいるのを強く感じて体調を崩しちゃう人だって居るし。
そういう敏感な人は敢えて事故現場を避けてるのよ。
澱みに引き摺られたら助からないからね 」
「 澱みに引き摺られちゃうんですか? 」
「 誰でもってわけじゃないわよ。
澱みに引き摺られ易いのは、やっぱり見える人ねぇ。
見えない人に関しては、澱みの波長と合っちゃう人かしらねぇ 」
「 澱みの波長…… 」
「 ユタク君は大丈夫よ。
アタシのあげた御守りを肌身離さず身に付けてくれているでしょ? 」
「 御守りって、お姉さんが空き家で──お姉さんの家でくれた金色のワッカの事? 」
「 そうそう。
それがユタク君をあらゆる怪奇から守護ってくれてるの! 」
「 …………実感無いんですけど… 」
「 無くていいのよ。
ユタク君は見えない人なんだもの 」
「 …………お姉さん、陰陽師の安倍磨易さんは見えない人ってだけで駄目なんですか? 」
「 彼奴はテレビを通して間違った事を発信しまくってるから駄目なのよ! 」
「 間違った事…ですか?? 」
「 そうよ。
本来なら、事故現場にお供えをしたり、拝んだりしない方が良いのよ。
故人を偲びたいなら、被害者の菩提寺にある家墓の前で故人の冥福を祈って合掌すればいいの。
それなのに、彼奴は──── 」
お姉さんを怖いと思ってしまった。
陰陽師の安倍磨易さんの事を話している時のお姉さんの目が恐い…。
目だけで人を殺せそうなぐらいに……。
「 お…お姉さん…… 」
「 あっ……御免ねぇ…。
ついつい殺気だっちゃったわぁ(////)
あっはは── 」
「 ──何が『 あっはは 』ですか?
子供を恐怖がらせるなんて…。
保護者失格ですよ 」
「 保護者って…… 」
「 ──どうぞ、ナポリタン & デミチーズハンバーグです。
それと何時もの… 」
「 わぁ…(////)
綺麗な盛り付け…。
美味しそう(////)
有り難う御座います! 」
「 どう致しまして。
これはサービスのピラフです 」
「 いいんですか?
有り難う御座います(////)」