駅の中で、かくれんぼ 1
「( ふわぁ〜〜〜……大きな駅だなぁ…。
こんなに立派な駅…初めてだぁ……。
人が一杯居るなぁ…。
迷子になっちゃいそうだよ… )」
僕は手紙に同封されていた新幹線の切符を改札口の中へ入れて、改札口を通る。
改札口を通って、手紙に同封されていた地図を見ながら目的地を目指して歩く。
色んなお店が並んでいて、見ているだけでも楽しい気分になる。
気になるお店が何店かあったけど、立ち寄らないで目的地を目指して急いだ。
迷わないでちゃんと着けるか不安だけど、何度も地図を確認しながら歩くと、駅の外に出れた。
駅の外には、手紙に同封されている写真と同じモニュメントが建っている。
「 良かった〜〜。
間違えずに着けたみたい。
えぇと……お姉さんは何処に居るのかな? 」
僕は辺りをキョロキョロと見ながら手紙の送り主のお姉さんを探した。
駅の外も人の往来が多くて、人に酔っちゃいそうになる。
設置されているベンチには、浮浪者が座って話し込んでいたり、仰向けに寝転んでいたりしている姿もチラホラ見られる。
どうしてなのか分からないけど、駅の周辺には浮浪者が多いみたい。
浮浪者の方から話し掛けられたり、何かをされたりするわけじゃないけれど…都会の駅って一寸怖いかも……。
「 ……それにしても暑いなぁ…。
都会って田舎よりも暑い所なんだ… 」
日の当たる場所で待っていたら熱中症で倒れちゃいそうだから、僕は日蔭を探す事にした。
日蔭を探してキョロキョロと見回っていると、「 ──ユタクく〜〜ん! 」って僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
電話越しに聞く声じゃなくて、1年振りに聞く懐かしい生声────。
僕に都会までの往復切符と地図と写真を手紙に同封して送ってくれた相手────。
お姉さんには内緒にしてるけど…、僕の初恋の相手だったりする(////)
8歳も歳上のお姉さんが初恋の相手なんて、僕はおかしいのかな…(////)
「 ──ユタク君、迷わず来れたのね 」
「 こんにちは、お姉さん。
1年振りだね(////)」
「 ふふふ、やぁねぇ…。
ラインや電話で話してるじゃないの 」
「 直接お姉さんに会えたのが嬉しいから(////)」
「 あらあら、嬉しい事を言ってくれるわね!
お駄賃はないわよ 」
「 お駄賃って…… 」
「 ふふふ、冗談よ〜〜。
暑かったでしょ。
待たせちゃって御免ねぇ。
喫茶店に入って涼もっか 」
お姉さんは僕にウインクをしてくれた後、手を差し出してくれる。
僕がお姉さんとはぐれて迷子にならないように手を繋いでくれるんだ。
こんなに人通り多い場所で迷子になったら大変だもんね。
僕は迷わず差し出されたお姉さんの手を握った。
本当なら貝繋ぎしたいけど……、去年は「 おませさんねぇ 」って笑われちゃったから、今回は普通に手を繋ぐ事にした。
周りの人達からは、お姉さんと僕はどう見えてるんだろう?
親子……歳の離れた姉弟かなぁ?
誘拐されてる──とか見えてたら嫌だなぁ……。
お巡りさんに職務質問とかされたら、僕は全力で誘拐を否定して、お姉さんを守るんだ!!
「 ──ユタク君、喫茶店に着いたわよ。
此処はね、アタシの行き付けの喫茶店なの。
【 喫茶 えみゅ〜る 】って言うの 」
「 えみゅ〜る? 」
「 アタシね、此処のマスターとは腐れ縁な・の♥ 」
そう言って僕にウインクをしてくれたお姉さんは、嬉しそうな笑顔で喫茶店のドアを開けると、店内へ足を踏み入れた。
お姉さんが喫茶店のドアを開けると、ドアに付いている鈴がチリチリリン──って音を鳴らした。
────っ?!
何だろう……空気が変わった??
気の所為かな……。
僕は店内を隅々まで見回してみたけど何も変な所はないみたい…。
至って普通の喫茶店……だよね?
「 お客さん……居ないんですね… 」
「 あら、気になっちゃう?
この喫茶店はねぇ、会員制なのよ。
喫茶店の会員にならないと利用が出来ないの。
後は喫茶店に予約した依頼人ね 」
「 依頼人?? 」
「 ユタク君は特別よ。
アタシの助手見習いって事で会員登録してあるから 」
「 …………有り難う御座います… 」
「 アタシの指定席は此方よ。
アンジェー、居るぅ?
メニュー持って来てぇ 」
お姉さんの指定席に着いた僕は、お姉さんと向かい合って座る事になった。
暫くすると店員さんが来て、オシボリと氷水の入ったコップをテーブルの上に置いてくれた。
お姉さんが店員さんからメニューを受け取る。
「 有り難う。
アンジェーは? 」
「 依頼人と話してます 」
「 ふぅん。
折角、顔見に来たのにぃ〜〜 」
「 子供連れとは珍しいですね。
一応、言わせていただきますけど誘拐は犯罪ですよ 」
「 ゆっ──?!
ちが── 」
「 あぁ…ユタク君、一々相手にしなくていいから。
これ、挨拶みたいなもんなんだから 」
「 あ…挨拶……ですか? 」
「 そっ☆
ソツバ、この子はユタク君。
アタシの助手見習いなの。
これから宜しくしてあげてね 」
「 助手見習い…ですか?
どう見ても小学生に見えますけど? 」
「 そうよ。
だって12歳だもの。
小学6年生だって。
来年、中学生なのよね? 」
「 は、はい…。
あの……ツミギ ユタク…です。
宜しくお願いします… 」
「 …………どうぞ、ごゆっくり 」
店員さんは僕に会釈をするとテーブルを離れて行った。
何だか無愛想な店員さんだなぁ……。
「 ユタク君、何を食べたい?
お姉さんが御馳走しちゃうから、好きなの頼みなさいね 」
「 有り難う御座います(////)」
お姉さんから手渡されたメニューを受け取って、食べたい物を選ぶ事にした。
お昼前だけど、お腹が空いてるからパスタを頼む事にした。
僕は【 ナポリタン & デミチーズハンバーグ 】って言う料理を注文する事にした。
さっきの店員さんが来て、注文を受けてくれる。
「 アタシは何時ものね☆ 」
「 お承り致しました 」
注文を受けた店員さんは会釈をするとテーブルから離れて行った。
「 彼って、無愛想でしょう?
でもね、料理の腕は天下一品なのよ♥
【 ジェレミディレン 】って名前の5つ星レストランで料理長を任されてたの!
彼の手料理が税込み千円未満で食べれるなんて、凄いと思わない? 」
「 そ…そうですね… 」