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善い友人がいて、魔王は安心しました。

本日もガンガン更新していきましょう、えぇ('ω')

「アタシ自己紹介したっけ?」

「……悪いけど、覚えがないかな」


 髪の毛を金色に染め、少しばかり派手ないでたちをした、釣り目が特徴の女の子。

 顔は見たことある気がする。

 たしか、隣のクラスの……。


「吉永だよ。吉永(よしなが) 真理(まり)。いちお、中学から昴のツレやってるんで、顔と名前覚えてね?」


 苦笑しながらも、吉永さんが手を差し出した手を握り返す。

 派手な見た目とは裏腹にフレンドリーだ。


「俺は──」

「青天目君でしょ。知ってるわよ。昴がしょっちゅう話してるもん」

「しょっちゅう?」

「むしろその話題がほとんどっていうか、ほんと笑う」


 当の本人は、何やら数人でやっているお菓子の交換に忙しいらしくこちらを見ていない。

 うまくやっている様で結構なことだ。

 それにしても、俺の話ばかりするなんて話題少なすぎか。

 もう少し、ホットな話はなかったのか、日月。


「……んで、アンタって誰なワケ?」


 急に吉永さんの声色が鋭くなった。


「日月から聞いてないのか?」

「アタシは今、アンタに聞いてるんですケド?」

「昔馴染みだよ。昔はあんまり仲良くなかったけどな」


 嘘は言ってない。


「ふーん……」

「何か?」


 微妙に納得いかなさそうな吉永さんに、逆に問う。

 日月と彼女の関係についてよくは知らないが、この雰囲気からして日月にとっては友好的な人間なのだろう。

 俺を詰めるような声色の端々に、日月への心配が滲んでいる。


 おそらく、保護者的同級生というやつだ。

 日月がこれまで大きな問題を起こさなかったのに、深く関係しているに違いない。


「アタシさー、初日と二日目は学校休んでたんだケド……」

「そうなのか?」

「ちょっと事情があってね。そんで、昴ったら急に青天目君の話するもんだからさ」

「俺も再会を驚いたよ。悪い意味で変わってないのにも驚いた」


 それを聞いた吉永さんが、警戒を解くのがわかった。


「昴ったら昔からああなの?」

「昔からああなんだよ」


 くすくすと笑いながら、吉永さんがすこし会釈する。


「カンジ悪くてごめんね。ちょっと心配し過ぎたみたい」

「日月にいい友達がいて安心した。上手いこと舵を取ってやってくれ」

「なにそれ、お父さんみたいだよ?」


 笑いをこらえられなくなったらしい吉永さんが、ちいさく肩を揺らす。


「どうしたのです?」


 気が付くと、お菓子を抱えた日月がそばにまで来ていた。

 ここだけハロウィン会場かな?


「何でもないわよ。昴、青天目君って面白い人だね」

「愛想が足りないのです。でも、昔よりはマシなのです」


 日月の言葉に吹きだしつつ、吉永さんは何かを俺に差し出す。


「これ、アタシのLINIA-ID。アンタとはいい友達になれそう」

「ああ、よろしく」


 受け取って、俺も用意していたLINIA-IDのカードを手渡す。

 今はこれが流行なのだ。

 わざわざスマートフォンでぱっと出来ることを名刺みたいにして渡すというひと手間が、逆に受けてるという意味不明な話なのだが、これはこれでなんだかおもしろい。


 早速、LINIAに吉永さんのIDを登録しておく。

 思うに、彼女は信用に値する人間だ。

 何せ、『救世の一団』なんて呼ばれた勇者のために結成されたパーティすら勇者プレセアを見放したというのに、彼女は心配して俺に圧をかけてきた。

 派手な見た目とは裏腹に、ひどくお人好しなんだろうことは想像に難くない。


「お友達になったのです?」

「なったわよ?」

「軽薄で破廉恥なので気を付けて接するのです」

「本人の目の前でそういう注意喚起をするのはやめよう」

「陰口はいけないのです」


 面と向かって言えば許されるってわけじゃないからな?


「仲いいね?」


 吉永さんの言葉に、思わず日月と顔を見合わせて……同時に逸らす。


「悪くはないのです。友達、なのです」

「昔よりは、マシだな」


 お互いの意見に一致を見て安心するが、同時に少しの後悔がこみ上げる。

 日月と、こんな気安い関係になったのは俺にとって喜ばしいことだ。

 きっと、日月にとってもそうだろうと思う。


 しかし、出会うべきではなかったのかもしれないという思いもある。

 元魔王()という存在に遭遇しなければ、元勇者としての日月もまたなかったのではないか?

 俺という存在が、日月の望む『普通の女の子』としての日常を遠ざけたんじゃないか?

 ……という懸念が些か強い。


「なんか難しい顔してるね?」

「生まれつきなんだ」

「嘘、似合わないよ? なんかあるワケ?」


 説明のしようがない。

 自意識過剰かもしれないしな。


「可愛い女子二人を相手にして緊張してるんだよ。な? 蒼真」

「まあな。なんで、陰キャはちょっと休憩してるわ」


 助け舟を出してくれた耀司に二人の相手を放り投げて、俺はその場を離れて、空いた席に座り込む。

 居心地が悪いわけではないが、日月と吉永さんの傍からは離れたほうがいいだろう。

 俺という存在は、日月の願いの障害になる。


 残念勇者をフォローするつもりでいたが、子守役がいるなら俺はお役御免だ。

 俺なりに気楽にキャンプを楽しませてもらおう。


「蒼……ではなく、青天目君」

「どうした、日月」


 せっかく物理的に取った距離を詰めるんじゃないよ、まったく。

 俺の気遣いを秒で崩すのはやめよう?


 顔を上げると、少し心配した様子の日月の顔。


「大丈夫なのです?」

「陰キャは知らない人と話すだけで消耗するんだ。知らなかったのか?」

「……それならいいのです。真理は善人で美人なのです。恐れることはないのです」

「わかってるさ。いい友達がいるようで、元魔王は安心してますよ」


 いまは茶化して誤魔化すしかない。

 俺の考えてることが、独りよがりかもしれないなんてわかっているんだ。

 それでも、かつて魔王レグナだった俺は……あの決戦の日、ただ世界の為に自分の何もかもを犠牲にした、美しい少女を救いたいなんて考えてしまう。


 そして今度こそ、その願いを叶えてやろうなんて……自惚れてしまうんだ。

いかがでしたでしょうか('ω')

「続きが気になる」「急にシリアス笑う」という方は是非下の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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[一言] ボクのイチオシ!吉永真理ちゃんきたー
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