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最終試験


 若干怯えながら、リネを伴って試験を行う広場へと向かう。

 おーおー、みんなおれを見た途端殺意増し増し…………。


「————……!」


 だが二人だけ、あの女……ジェニファという女とその父親の神官だけはおれを見て笑った。

 とても邪悪な笑みだった。

 まあ、そうだろう。

 なぜだかあの二人の後ろに、ノワールが立っていたのだ。

 その時すべてを察した。

 ノワールの目にいつもの光のようなものがない。

 ふわりとおれの耳元に小精霊が集まる。


『ノワールさま つかまった』

『たすけて』

『たすけて 聖女……』

「…………やっぱり、か」


 どうして。どこまで。そうまでして……。


「っ……」


 昨日、他の聖女候補の精霊騎士を従えていた時点でこの可能性も心配しておくべきだったのかもしれない。

 拳を握りしめ、歯を食いしばり、あの親子を睨んだところで喜ばせるだけだろう。

 腹が立つ。ああ、めちゃくちゃ! 腹が立つ!

 まるで、道具のように——壊れても替えの利く消耗品のように!

 頭がイカれてる!


「…………」

「逃げずによくきたわね、田舎者!」


 初めて顔をまともに合わせた。

 それなのに、この言い草。


「昨日合格したのはわたくしとお前だけよ」

「ふーん」


 まあ、そうだろうよ。あんな卑怯な手ぇ使えば。

 ……そんで、今日はおれからノワールを奪って勝つ気なのか。

 呆れたな。


「お前恥ずかしくねぇんだな」

「は?」

「別にいいよ。おれは——真正面からお前を迎え撃ってぶっ倒すから」

「……」


 上等だ。やってやるよ。

 どんな試験内容だろうと、真っ向から迎え撃つ。

 お前がどんな卑怯な手でおれに勝とうとしたって、そんな奴におれは負けない。


「…………」

「————」


 お前も、そう思うよな? ノワール。


「では最後の試験を始める。最後の試験内容は……精霊騎士の送還だ」

「…………」

「アハ!」


 喉の奥が、熱い。

 焼けるように。


 ——……送還。


 ノワールを、精霊界に、還す。

 いや、それは、別に構わない。でも……。


「あんたには無理ね!」


 おれを見下す女が叫ぶ。楽しそうに、笑いながら。

 それはもう愉快そうに。

 ああ、本当に……どんなに真っ向から迎え撃つ、その上で勝つと言っても……この内容は。


「っ……!」


 初めからおれに勝たせる気がない。

 どうせそんな事だろうとは思ったけど、それでも、これは最低すぎんだろう。

 どうやって精霊騎士を手に入れた?

 周りを見る。

 居残りの元聖女候補は昨日の奴らばかり。

 誰も彼もおれの方を見ない。

 怯えた表情で顔を背けていく。ああ、くそぅ!


「ノワールはおれの精霊騎士だ!」

「残念ね、今はわたくしの精霊騎士よ。さあ、忌々しい黒い騎士……闇の精霊だけど……最後にこのわたくしに使役された事を光栄に思いながら精霊界にお戻りなさい!」


 なんでだ。なんでだよ。

 おれの力でなんとか出来る事ならいいのに! 負けないのに!

 手を伸ばしても神官たちが邪魔をする。


「ノワール!」


 おれの声が届く気配はない。

 ジェニファが手を、ノワールに触れようと伸ばす。

 いやだ、触るな。

 それは、おれの——!


「ノワール!!」

「きゃあ!」


 ノワールの腕が動いた。

 ジェニファを振り払うように動き、しかし剣を引き抜く。

 え? 待ってくれ。

 どうした?

 周囲が叫びながらノワールから離れていく。

 おれを捕まえていた神官たちも……。

 どうして剣を抜いた?


「ノワ……」

「…………はい。私は主……ルウ様の精霊騎士です」


 その時多分、初めて笑顔を見た。

 でも、それが最初で最後になった。

 ノワールは剣を自分の心臓に向けて突き刺したのだ。

 ゆっくり光の塊になって消えていく。

 ……いや、精霊が、人間と同じかどうかは、分からないけど……。


「え? いや……なん……」

「我ら精霊はルウ様を聖女に望みます。ルウ様……我が主……どうか……」

「ノワール!」

「聖女になってください」


 動きの固まった神官を振り払い、ノワールの側に膝をつく。

 座り込んだノワールの口から血が垂れる。

 こんな事、ある?

 こんな事……こんなバカな事……!


「いやだ、うそだ、なんだよこれ、こんな事、こんなのいやだ……! おれ……おれ……!」


 お前のために化粧とかしたんだぞ。

 髪も結ってもらって、言葉遣いも練習し始めたんだ。

 女らしく……聖女らしくなろうと思って。

 そりゃ、まだ迷ってた。

 村に帰ってもやる事はないし、これまでの生活に戻ってもおれはただ無為に過ごすだけだろう。

 それならお前の……お前たちの望むような『聖女』になっても、って。


「…………どうしたらなれる?」


 お前の望む聖女に。

 ああ、なんだよ、これ。

 涙が……溢れて——……。


「…………」

「笑ってんじゃ、ねぇよ……おれは、本気で……!」


 ああ、ああ……やめてくれ、まだ行かないでくれ、消えないでくれ。

 どんどん触れているところの感覚がなくなっていく。

 こんな形で別れるなんていやだ……いやだ!


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