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夢国冒険記  作者: 固豆腐
27/70

モントレー卿暗殺計画(3)

・一応ファンタジーです。

・所謂マナを使った魔法やスキルは登場しません。

・但し超常現象やオーバーテクノロジーは登場します。

・この物語はフィクションであり現実世界と類似した事象があったとしても偶然の一致に過ぎません。


 以上の事をご理解の上、お楽しみ頂けると幸いです。

「……どうやら、こっちには気付かないまま行ったみたいだ」

「……ええ、そのようね」


 周囲に人の気配が無いのを確認し、ゆっくりと荷車の陰から姿を現す靖之と舞。

 4人組の男を奇襲した犯人はどこかに去っており、残っているのは死体のみ。絶体絶命の危機を脱したとはいえ、あくまでも一時的である。

 住民の悲鳴こそほぼ聞こえないが、銃声の頻度は変わらないのだから。


「4人を倒したのがどこの誰だろうが、今はどうでもいい。まずは、安全の確保を最優先にしよう」

「そうね。考えるのは、公園に逃げ込んだ後で出来るもの」


 2人は、当初の計画を変えない事で一致。

 相変わらず状況が呑み込めないものの、自分達の味方でもないのも確かだ。どうにか気持ちを落ち着かせて、そのまま移動を再開。

 目指すは、南西にあるはずの巨大な公園である。


 それにしても、さっきの野郎……

 いくら奇襲とはいえ、1対4の状態にも関わらず全員を始末してのけた。銃の腕前もさることながら、それ以上に凄まじいのは精神面。

 体勢を整えさせず、一気に勝負を決める豪胆さだろう。

 でも、待てよ?

 せっかく、4人全員が倒されているんだ。持ち物をチェックすれば、身元に繋がる解る何かが出て来るかもしれない。

 いや、ダメだ……

 どこに仲間がいるかもしれんし、倒したヤツが1人だけとも限らない。武器を奪う手もあるが、俺達は現代の人間だ。

 銃を持った事も無いのに、いきなり扱えるとは思えない。

 映画や小説じゃあるまいし、この切迫した状況の切り札だと?

 そんなものに頼るぐらいなら、さっさと公園に逃げるべき。舞も一緒に居る以上、彼女の命も掛かっているのだから。

 とにかく、逃げ込んでさえしまえばこっちのもの。

 その為にも、誰にも見つかるわけにはいかない。


 靖之は、目の前の誘惑をどうにか振り払い移動に全神経を集中。

 周囲の僅かな変化も見逃さないように注意しつつ、舞と共に目的地に向かった。


 ――同じ頃。


「……報告します! 警戒中のC班の数名が、何者かによって殺害された模様。複数ヶ所で、応援の要請が来ています」

「何だと! 何者か……とはどういう事だ?」

「しかも複数ヶ所……相手は、複数人」


 順調に推移していた計画に冷や水を浴びせられ、騒然とする幹部連中。

 辺りに自分達しか居ないからか、住宅街の道路で大声を出すばかり。報告に来た末端の構成員が指示を待つ中、彼らはまともな指示を出す素振りも無い。

 ただ、1人を除いては。


「どいつもこいつも、いい年の大人が集まって恥ずかしい……まずは、状況を整理する所から始めよう。具体的な対策を立てるのは、それからだ」

「「はっ! 了解しました」」


 さすが首領というべきか、カリスマ性もあるらしく一瞬で幹部連中を鎮める事に成功。

 数秒だけ考え込む仕草を見せた後、直接報告者に質問を始めた。


「殺されたのは、C班の連中だけなのか? D班の中で、犠牲になったものは?」

「はっ! 殺されたのは、このエリアを担当していた者達です。D班からは、今の所なんの報告も入っておりません」

「……なるほど。議事堂の南から南西方向に、被害が集中している事になるな。D班に損害が出ていないのも、そう考えると説明が付く」


 報告者が地図を指差して説明するのを聞き、淡々と分析する首領。

 幹部連中が固唾を飲んで見守る中、発言は続く。


「それにしても、手際の良さに関しては見事としか言いようがない……現段階では作戦に影響は出ないだろうが、これ以上の被害はさすがに避けたい。となると……誰か、犯人を見た人間は居ないのか?」

「はっ! 生存者の意見をまとめますと、犯人は白人の男のみ。それぞれが2~3人単位のグループを形成し、戦闘に関しては銃を使い練度・連携とも優秀……との事です」

「なるほど……こちらが、相手に与えた損失は?」

「……誠に言い難いのですが、残念ながらゼロであります」

「まぁ……数を揃える為に、酒場のゴロツキレベルも採用したからな。歩哨レベルの人間に期待しても、仕方ない。それに、今の情報を聞く限り相手は少数精鋭の集団。人数自体も10~15人といったところだろう。対処は可能だが、問題なのはヤツ等の素性だ……」


 徐々に敵に関する情報を分析するが、ここでピタッと言葉を止める首領。

 その場の誰もが気になっている点なだけに、食い入るような目で彼の発言を待った。


「タイミング的に考えて、私服警察や国軍の線は除外してもいい。国内の反政府勢力にしても、そこまでの組織力が無いのは事前にリサーチ済み。となると、残るは我々と同じ海外勢という事になるな……」


 淡々とした口調の首領の言葉に、騒然とする他の面々。

 完全に想定の範囲外だったらしく、すぐに質問が飛んで来る。


「この国以外にも、海外進出で競っている所がありますからね。もしかして……その中のどこかが、我々の仲間を?」

「いや……諜報戦なら、どこの国もやってる事だ。この町にも居るかもしれんけど、このタイミングで攻撃するなんて不可能だろ?」

「それじゃあ、我々の計画がヤツ等に漏れてたんじゃないのか? モントレー卿の抹殺を企んでるのは、俺達だけじゃないんだぞ!」

「だとしても、結果として被害を受けているのは事実なんだ。練度と技術を見ても、そこら辺のチンピラとはわけが違う。我々の計画が漏れていたと考えるのが、自然だろう?」


 素性が解らない苛立ちから、議論は一気にヒートアップ。

 ただ謎が多く推論の域を出ないだけに、誰もが感情論に終始。話しが全く前に進まないので、時間を浪費するだけだった。

 それは、首領も望んでない事。

 すぐに手で静まるように促すと、自分の意見を口にした。


「とにかく、現段階では判断材料が少な過ぎる。まずは、D班を中心にC班をフォロー。必要なら、A・B班から人を回しても構わない。重要なのは議事堂周辺であり、これ以上内側への侵入を防ぐ事。それ以外は、当初の作戦計画に従って動けばいい」

「なるほど……それもそうですな」

「戦力は我々の方が圧倒的に上。このまま議事堂を抑えていれば、ヤツ等もそう簡単に近付かないはず」

「なるほど。確かに……」


 幹部連中や報告に来た者が納得するのを見て、1つ咳払いをする首領。

 ある程度落ち着きを取り戻したと判断したのか、その場の面々に指示を出す。


「いくら相手が精鋭集団とはいえ、あくまでも少数に過ぎない。数でこちらが圧倒的に上回っている以上、それを生かすだけ。モントレー卿さえ排除してしまえば、目的は達成されるからな」

「「了解しました!」」


 キレイに話もまとまり、ひとまずながらトラブルへの対応は終了。

 指示を伝えるべく走り去る報告者を見つつ、首領は静かに空を見上げた。


 ――その頃、靖之達はというと


「クソッたれ……もうすぐ、公園に着くはずなんだけどな。さっきから右に左に、一体何がしたいんだ?」

「……全く。用が無いんだったら、さっさとどっかに行けばいいのに。あーっ、イライラする」


 建物の陰に隠れて愚痴を言うが、それもそのはず。

 相手は1人の男ながら、銃を持った男が十字路の角をグルグル回るだけ。かといって他の場所に移動するわけでもなく、周囲の警戒をするわけでもない。

 傍から見たら散歩しているようにしか見えず、2人にしてみれば苛立ちが募るだけ。

 しかも公園への最短ルート上なだけに、ストレスが半端なかった。


 どうする?

 相手は1人だし、武器は手に持っている銃だけのはず。さすがに正面から戦うのはリスクが高いけど、見た感じ隙だらけだからな。

 出来るだけ接近して、一気に殴り掛かれば反撃の心配も無い。

 それにしても、あんな所を言ったり来たりして何がしたいんだ?

 仲間が誰かに殺されたばかりなのに、よくもまぁ……でも、やられたヤツ等もプロというより飲み屋のチンピラみたいだったからな。

 数を集める為に、末端の人間は個々の能力は低いのかもしれない。

 とはいえ、これは俺達にとっては千載一遇のチャンス。変にこのまま待機してて、増援が来ても面倒だ。

 さっさと排除して、公園に向かった方がいいかもしれない。


 靖之なりに考えをまとめると、隣の舞にそっと耳打ち。

 2つ返事で賛成したので、そのまま接近を開始。『ダルマさんが転んだ』の要領で、植え込みやその他遮蔽物に隠れながら近付いて行く。

 相手に発見されないのはもちろん、動きに変化が無いか慎重に観察しながら。


「……それにしても、ヒマだな。人も殆ど見なくなったし、俺がここに居る意味があるのか?」


 余程やる事がないのか、1人でブツブツ呟くだけ。

 完全に周囲に対する注意力が散漫になっており、監視自体もおざなり。おかげで、靖之達は苦労する事無く接近出来た。

 後は、確実に仕留められるタイミングを待つだけ。

 しかも、それは難しい事では無かった。


「……えっ? ぐはっ!」


 まずは、靖之が背後からヒザに向かってローキックを放って相手をダウン。

 すかさず、2人掛かりで全身を蹴って意識を完全に断ち切った。


「よしっ! とりあえず邪魔者は排除したし、後は公園に向かうだけ。こんな状況だし、持ち物のチェックもしなくていいんじゃない?」

「そうね……そんな事より、さっさと公園に行かないと」


 力なく横たわる男を見つつ、2人は逃げることを優先。

 さっさと、目的地に向かおうとするのだが。


「……っ! そっ、そこに隠れるんだ!」

「えっ? ウッ、ウソでしょ!」


 突然どこからか銃撃を受け、慌てて近くの植え込みに逃げ込む2人。

 どうにか直撃弾こそ免れたものの、逃げた先は身を隠すだけで精一杯である。弾を防ぐのはもちろん、跳弾の被害の可能性も高い。

 必死に体を低くして逃れようとするも、文字通り釘付けにされた格好になった。


 撃って来ているのは、さっき倒したヤツの仲間か?

 それとも、4人組のヤツ等を撃ち殺した側の人間?

 いや……今は、そんな事はどうでもいい。このまま釘付けにされたままじゃ、殺されるのは時間の問題だ。

 でも、どうやって切り抜ける?

 腹を括って突っ込んでも、その前に頭を撃ち抜かれて終わり。弾切れを狙おうにも、相手の動きが解らない。

 それに、ここはただの植え込みだからな。

 隠れて籠城策をとっても、いつ跳ねた弾や貫通した弾が当たっても不思議じゃない。

 俺と舞が生き残る手段は、たった1つ。こっちに弾が当たる前に、どうにかしてヤツを倒す事だ。

 でも、どうやって?


 靖之は頭をフル回転させるも、状況は絶望的。

 八方塞になる中、偶然にも近くに設置されているガス灯に跳弾が命中した。


 しめた! 生き残るなら、今しかない……


 部分的ながら突然暗くなった事で、相手も動揺して攻撃を躊躇ったのだろうか。

 銃撃が止まった瞬間、靖之は覚悟を決めて植え込みから飛び出した。


「……こんな、所で! 死んでたまるか」


 まずは、渾身の助走の力をフルに乗せた右フックが相手の左テンプルにヒット。

 鈍い衝撃音が発生する中、倒れたのを見てマウントポジションから拳を振り下ろす。1発2発と、とにかく無我夢中で殴り続ける。

 そして、1分程経っただろうか。


「はぁ……はぁ……はぁ……みっ、見たか! やってやったぞ……さっ、先に手を出して来たのはお前だからな。恨むなら、自分の銃の腕を恨みやがれ……」


 血だらけの拳を振り上げ、勝利を宣言する靖之。

 ただし、どうやら彼自身も無キズでは済まなかったようだ。


「……靖之。とりあえず、手を見せて。まともな治療は出来ないけど、このまま何もしないよりかはマシでしょうし」


 キョトンとする靖之だが、言った本人の舞の表情は神妙なまま。

 言われるがまま両手を前に突き出すが、この時初めて拳が腫れ始めている事に気付いた。


「……よかった。とりあえず、骨は飛び出してない。でも、グローブも付けないであれだけの力で殴ったでしょ? もしかしたら、骨折かヒビが入ってるかも……」


 余程心配らしく、真っ青な顔で拳を観察する舞。

 一方で靖之は戦闘による興奮なのか、咄嗟に彼女に掛ける言葉が出て来なかった。


 ――同時刻、包囲された議事堂の内部。


「おいっ、警備員! 外の様子は、どうなっている?」

「警察……いや、軍はいつになったら救助に来るんだ?」

「誰でもいいから、早くどうにかしろ! 私達を誰だと思っている?」


 どうやら何かの審議中に襲撃が発生したらしく、議員は会議場に閉じ込められたまま。

 当然ながら口々に文句を言うが、反応は無いまま。外の様子が全く解らないだけに、既に爆発寸前である。

 もちろん口には出さないが、これが訓練の類ではないとの認識で一致。

 張り詰めた空気の中、それは発生した。


「うわっ! なっ、何事だ……」

「えっ、もしかして爆発?」

「爆発……って、どこでそんな事が?」

「はっ、早くここから逃げないと!」

「おいっ、警備員! 状況を説明しろ!」


 突然の爆発音と衝撃で、パニックを起こす議員連中。

 慌てて入口に殺到するも、鍵は掛かったまま。必死にドアを叩いたりタックルで壊そうとしたり、誰しもが逃げ出そうともがき始める。

 だから、壇上に現れた男に気付いた人間は誰も居なかった。


「……えーっ、議員の皆さんこんばんは。あなた方の命は、我々が預かりました。穏やかに事を運びたいのでしたら、私に協力して下さい」


 咳払いをして和やかに語り掛ける男に、議員達はただ呆気に取られるだけ。

 会場内は先程までは打って変わり、水を打ったように静かになっていた。

 読んで頂いた全ての方々に、感謝申し上げます。

 投降ペースが不規則になってしまい、申し訳ありません。

 次回の投稿ですが、まだドタバタしている為毎日投稿は不可能です。

 細かい情報は、ツイッターでご確認下さい。

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