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夢国冒険記  作者: 固豆腐
23/70

謎の贈り物

・一応ファンタジーです。

・所謂マナを使った魔法やスキルは登場しません。

・但し超常現象やオーバーテクノロジーは登場します。

・この物語はフィクションであり現実世界と類似した事象があったとしても偶然の一致に過ぎません。


 以上の事をご理解の上、お楽しみ頂けると幸いです。

「……よしっ! 焼き加減も問題無いし、さっさと食べて学校に行くとするか」


 靖之はコンロの中の焼き鮭の具合を確認すると、満足そうに頷いた。

 時間は午前7時半前ながら、目を覚ましてから1時間以上が経過。トイレ・洗顔・髭剃りを済ませ、朝食の準備を殆ど完了していた。

 火傷しないように注意して皿にメインディッシュを乗せ、そのままテーブルに移動。

 続けてナメコ汁・ポテトサラダ・白米を用意し、イスに座った。


「さすがに無音だとアレだし、TVぐらい点けとくか?」


 1人の食卓に寂しさを感じたのか、近くに置いてあったリモコンを操作。

 ちょうどニュースが始まったらしく、BGM代わりにして食事を始めた。


『……おはようございます。デイリー750ニュースの時間です。さっそくですが、事故の――』


 アナウンサーの声を聞き流しつつ、黙々と食べ物を口に運ぶ靖之。

 傍から見ると孤独そのものだが、頭の中は昨晩の出来事で一杯だった。


 まさか、あのタイミングで土砂崩れとは……

 助かったのは、単純に運が良かったから。山との距離が後200メートルぐらい近かったら、今頃ここに座ってはない。

 しかも、原因は人為的なもの。

 建物の生存者が池を決壊させたようだけど、まさかあの短時間にやってのけるとは。やっぱり、思い込みと決め付けはリスクが高過ぎる。

 また、似たようなシチュエーションに出くわす可能性もあるんだ。

 今回は大きなケガが無かったとはいえ、俺の判断ミスで計画が狂ったのも事実。自分だけでなく舞の命も掛かってるんだから、もっと慎重に行動しなければ。

 ただ、後ろ向きになり過ぎるのも逆効果。

 慣れるのは無理があるだろうが、客観的に見る意識は常に持っておくべきだろう。


 真剣に反省しようとするも、このタイミングでインターフォンが来客を告げた。

 仕方ないので食事を中断し、カメラの映像で某運送屋の従業員だと確認。


「……えーっと、今回は靖之さん宛の荷物です。内容に間違いが無ければ、こちらにサインをお願いします」

「いつも、ご苦労様です。ここにサインをして……っと。これで、大丈夫ですか?」

「……はい、OKです。それでは、今日の荷物は以上です。いつも当社をご利用頂き、ありがとうございます……失礼しました」


 端末を使ったやり取りを済ませると、作業が終了。

 小走りに去って行く従業員を見送ると、靖之はドアに鍵を掛けて台所に戻った。何と言っても、朝の忙しい時間帯である。

 荷物をテーブルの端に放置し、食事を再開した。


 それにしても、昨日はドタバタしっぱなしだったな……

 今思えば、小麦畑で歌を聞いた時点で化け物に目を付けられてたんだろう。俺としては迷惑以外のなにものでもないが、それも済んだ話。

 今は置いとくとして……え~っと、次は大量の水鳥の死骸を発見したんだった。

 臭いもさる事ながら、平然と処理する業者達よ。いくら金を貰ってるとはいえ、よく続けられるもんだ。

 途中で現場を離れたけど、あの後どうなったのか気になるな……

 口封じはされてないだろうから、問題はないだろうが。いや、もう2度と会うこともないんだから気に掛けなくてもいいだろう。

 それよりも、問題なのは不審者を追って森に入ってからだ。

 攻撃して来たのは、あのメデューサ達。つまり、アイツも俺を誘導する為に配置された部下のはず。

 まぁ、疑いもせず食いついた俺の責任なんだけど……

 ともあれ、思惑に引っ掛かって建物に辿り着いた。もちろん舞も同様に誘導されてて、内部に侵入した直後に合流。

 後は建物の捜索をするも、得をしたのはアイツ等だけ。

 一応服の下に隠し持った書類は持ち帰れたが、どうせ大した内容ではないはず。これから先生に解読して貰うのはいいとして、変に期待するのは止めておこう。

 そして、例の虐殺が発生。

 逃げている途中に妖精モドキに絡まれるは、突然メデューサが現れるは……極めつけは、池の決壊か。

 どうにか巻き込まれずに済んだとはいえ、完全に運によるものだからな。

 それから、こっちに戻って来る直前に姿を見せた部下の魚人。アイツが言うには、結局社長に逃げられたようだからな。

 目的は達成したのと同じらしいが、やっぱり人間相手で内心舐めていたのだろう。

 海での一件といい、案外詰めが甘いところがある。

 正直、敵対したくない相手ではある。ただそれでも万が一の時は、こっちがいかに冷静に立ち回れるかがカギになるはずだ。

 舞共々、集中を切らさないように注意しよう。


 靖之なりに昨晩の出来事を振り返っていると、ズボンのポケットの中のスマホが反応。

 どうやらメールのようだが、差出人を確認するなり少し表情を曇らせた。


 内容は、こんな感じである。


 靖之君、昨日は急に話し掛けてごめんね?

 でも最近遊びに行けてないし、何か悩んでそうだったから心配で……でも、お茶した時は普通だったから、ちょっと安心したわ。

 それと、一緒に居たあの女の子。

 確か、奥田舞さんだったっけ?

 顔もキレイだし、スタイルも良くて美人さん。高校時代からの知り合いみたいだけど、彼氏は居ないんでしょ?

 良い子そうだし、すぐにイケメンを捕まえるでしょうし……

 あっ、そうだ忘れる所だった!

 来月『名○偵ピ○チュウ』が公開されるし、一緒に見に行かない? GW中だし、周りがカップルや家族連ればかりでも、2人だったら浮かないでしょうし。

 でも、私って人見知りじゃない?

 奥田さんと一緒だと緊張してあまり喋れないし、行くなら2人でね。

 良い返事、期待して待ってるから。


※小説家になろうに投稿する上で顔文字・絵文字は省略しています by固豆腐


 返事を打とうとするも、靖之の頭には咄嗟に言葉が浮かばないらしい。

 暫く画面を注視した後、1つ溜息をついて視線をTVに向けた。


『……続いては、開幕したてのプロ野球――』


 どうやらスポーツコーナーが始まったばかりだが、興味がないのだろうか。

 すぐさまリモコンに手を伸ばし、普通のニュース番組に変えてしまった。


「えーっと……舞との待ち合わせが9時だから、そろそろ準備をしないと」


 ふいに、脳裏に現実がよぎったのだろう。

 TVのニュースをガン無視して、残っている朝食を無造作に口に放り込んで行く。


 先生に解読を頼むとして、これは無理に今日中じゃなくてもいいからな。

 とりあえず空き時間に接触して、渡すだけで十分なはず。それよりも問題なのは、今晩に向けての舞との打ち合わせだ。

 毎日どこに居るかも解らないのに探してたら、それだけで時間の無駄になってしまう。

 何か前もって決めておけば、いざという時に役立つはず。

 月の位置やランドマークはもちろん、方角や星の動きでも何でもいい。とにかく、30分以内に合流出来るようにしなければ。

 どうせ、毎回違う場所になるんだ……

 俺達が最も欲しているのは、あの世界に関する基本的な情報。それを最優先にする為にも、無駄な事に労力は使えない。

 昨日こそ目立ったケガが無かったとはいえ、2人共満身創痍なのは同じ。

 このままじゃ、筋肉痛でまともに動けなくなる日も遠くないはず。行動する時の優先事項も踏まえて、細部まで詰めたいんだけど……

 いや、難しかろうとやるしかない。


 今日話し合う内容を頭の中で整理していると、またしてもスマホが反応。

 先程の件があるだけに憂鬱な表情を見せるが、相手を見て少し驚いた。


「あれっ? 今日の待ち合わせは、9時じゃなかったっけ」

「ええ、そうだけど……それより、今日変な荷物が届かなかった? 箱と差出人が、アマ○ンになってるやつ」

「えっ……ああ、それなら10分ぐらい前に受け取ったけど?」

「やっぱり……それで、中身は確認した?」

「いや……注文した本とかの類だと思って、まだ開けてないけど」

「ウソでしょ? じゃあ、いいから早く確認して。あっ、電話はそのままにしててよ?」

「あっ、ああ……解った」


 ピンと来ない靖之に対し、焦りと苛立ちを露わにする舞。

 明確な温度差を見せつけながら、只事ではないのは伝わったのだろう。言われるがまま開封するも、困惑を隠せないでいた。

 しかし実際に自分の目で確認すると、今度は言葉を失った。


 何なんだ、これは?

 いや……ブレスレットなのは解るが、この質感と刻み込まれている意味不明な文字。忘れるたくたって、忘れられない。

 あのメデューサと、初めて遭遇した時に付けられたネックレスと似ている。

 と言う事は、これは……

 いや、今はそんなことはどうだっていい!


 ようやく我に返ったのか、今度は慌てて段ボールの箱を確認。

 まずは差出人と箱をチェックするも、アマ○ンの正規品のソレである。続いて明細書を確認しようとするが、入ってあるはずなのにどこにも見当たらない。

 そう、箱の中身はブツと衝撃緩和材のプチプチのみ。

 ならば……と伝票を元に照会しようとした所で、スマホから舞の声が聞こえて来た。


「……伝票から追跡しようとしてるんでしょうけど、それなら既に私がやったわ」

「えっ、マジで? それで……結果はどうだった?」


 靖之としては、藁にもすがるような気持ちなのだろう。

 焦る気持ちを抑えて舞に問い掛けるも、帰って来た言葉は無常だった。


「残念だけど、番号は偽造されたもの。アマ○ンに該当する番号は無いし、運送屋に関しても同じ。巧妙に細工されたみたいで、現時点で追跡するのは不可能って言われたわ」

「マジか……その言い分だと、永遠に謎のままだろうな」

「ええ、でしょうね。もしかしたらと思って靖之に電話を掛けたけど、やっぱり送られて来たみたいで……それで、どうする? 身に着けるのは論外としても、このまま放置するのも気味が悪いし」

「……そうだな。送り主が誰であれ、尻尾を掴ませない以上仕方ない。無駄だろうけど、学校に持って行って調べるぐらいはした方がいいと思う」

「なるほど……確かに、そうね。このまま、何もしないよりかはマシでしょうし」

「じゃあ、そのブレスレットを持って9時に集合ってことで。待ち合わせ場所だけど、研究室棟の前でよかったんだっけ?」

「ええ、今日は色々聞く事があるしいいんじゃない。あっ! それから例の書類だけど、アレも大事な資料だから。せっかく持ち帰れたんだし、絶対忘れないでね」

「OK、問題無い。じゃあ、そういう事で」


 会話はあっさり終わり、そのまま通話は終了。

 これで学校に行く準備に専念出来るにも関わらず、靖之はスマホ片手に立ち尽くすのみ。


 これは、まずい事になったな……

 図書館前に現れた、ガイコツの化け物の例もある。

 やっぱり、違う世界線というか別の世界というべきか。本来居るはずの無い存在が居た事により、何かが干渉しているかもしれない。

 だって、そうだろ?

 俺と舞だけならまだしも、メデューサ達化け物の世界の住人まで迷い込んでるからな。SFでいうところの、『バタフライエフェクト』が働いててもおかしくない。

 そもそもの発端になった羊皮紙本だって、何なのかサッパリ解ってないんだ。

 朝になる度に、夜の出来事の記述が書き足されてるだけ。しかも、概要みたいな内容で中身はスカスカ。

 参考になるような情報は、ゼロときてる。

 この異常な状況を打破する為にも、本来なら化け物達と手を結ぶべきなんだけどな……今の所、どいつもこいつも俺達を利用するだけ。

 とてもじゃないけど、信用なんて出来ない。

 となると、やっぱり自分達の力だけで打開する……か。

 まさに、お先真っ暗。手掛かりすら掴めない以上、1日1日が大切。どんな些細な情報でもいいから手に入れ、絶対に生き残る。

 耐えていれば、いつか光射す日が来ると信じて。

 ダメだな……

 毎日、内容の無いフワフワした目標に縋り付きすぎだ。自分達の命が掛かってるんだから、道を切り開くだけの覚悟を持たないと。

 そう、自分自身が希望の光になるぐらいの!


 アレコレ靖之なりに考えてはみたものの、結局は不発に終わったようだ。

 それでも、自分自身の置かれている状況に対して覚悟は持てたのだろう。遅々として進展しない現実ながら、まだ絶望に至ってないだけマシなのか。

 ただ、前向きになった事でやるべき事が鮮明になったのも事実。

 ますは、朝食を済ませるべくイスに座ると箸を動かし始めた。


 ――同時刻


「カリーナ様……申し訳ありません! 目下総力を挙げて捜索していますが、肝心のターゲットの発見には至っていません」


 土砂崩れの発生から数時間経ち、カリーナと側近は池の決壊があった現場に来ていた。

 当然ながら、既に原型は留めておらず木や岩の残骸とぬかるんだ泥があるだけ。取り残された魚がピチピチ跳ねるが、それを狙う動物達は化け物に怖がっているのだろう。

 周辺の森も含めて、水を打ったような静けさである。


「そうか……で、池を決壊させた林業の労働者達はどうだ?」

「いえ……誰に聞いても、幹部数名に頼まれてやったと言うだけでして。逃走先に関しても、知らないようです」

「だろうな。実行犯達に関しては、この際どうでもいい。どのみち、我々の姿を見てしまったんだ。可愛そうだが、消えて貰うしかないな」

「はっ! 既に、全員始末しております」

「全く……相手は非力な人間な上にこっちが有利だからと、油断していたのも事実。捜索は継続するとして、2度とこのような醜態を晒さないように気を引き締めるように」

「はっ! 了解しております」

「それよりも、問題なのはアイツだ。出来るなら敵対したくはないが、我々の邪魔をするなら排除するしかない。その為にも、あの2人が重要なカギになる。いずれ再会の時が来るだろうが、念には念を入れてそろそろ首輪を付けるべきだろう」

「はい……既に、例の物を送り付けております。2人はもう、我々の手駒も同然です」

「少々手間は掛かったが、仕方ない。元の世界に帰る目途が立つまで、2人とはギブ&テイク。こっちはそれなりの物を渡したからな。せいぜい、我々の為に働いて貰うとしよう」


 カリーナと側近はそれだけ言うと、会話を止めて沈黙。

 結果を深刻に受け止めているのか、その表情は険しいままだった。

 読んで頂いた全ての方々に、感謝申し上げます。

 今回は、「バラの花輪は死の香り」の後日談です。

 次回も、長編前の単発の話になります。

 投降ペースが不規則になってしまい、申し訳ありません。

 次回の投稿ですが、まだドタバタしている為毎日投稿は不可能です。

 細かい情報は、ツイッターでご確認下さい。

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