7話
あれから、数十分時間がたった
とりあえず着替え、俺のマントを羽織らせ、少女を落ち着かせた。そして事の成り行きを説明してもらった
少女の話によると一人旅の途中、寝込みを盗賊に襲われ捕まったそうだ。そこから何とか、魔法(子狐に変化)を使い、襲われる前に逃げ出すことに成功した
しかい、逃げ出すことはできたものの、持ち物または衣服を取り上げられたから、変身を解除し村や町に行くことはできなく、困っていた
それでも、なんとか森で食べられそうな物(果物や植物)を食べて、一か月近く生活していたのだそうだ
そして俺に捕まり、久しぶりにリラックス出来たことにより、変身が解けてしまったのだ
「.....なんというか、苦労したんだな」
「そ、そうですね。でもお陰様で街に着くことはできました!..............食べられそうになりましたけど」
少女からじっっとした視線を向けられ、冷や汗をかく凪月
ヤバかったな
あのまま食欲に負けて子狐を食っていたら、俺はこの少女を食っていたってことになるんだよな
「ま、まあ、美味しい食べ物もお腹いっぱい食べさせたし、体も綺麗にしてあげたからチャラだよな!」
「....................まあいいです。あ、あと、体を洗ったことは忘れてください」
少女が顔を赤くして言う
そっか俺、獣姿とは言え全裸の少女を洗ったのか。犯罪だな
「まあ、とりあえずお前の事情は分かった」
「お前じゃないです。私の名前はノエルです」
少女がお前呼びにむっと頬を膨らませ、抗議する。子動物のハムスターみたいでかわいいな
そういえば自己紹介していなかったな
「悪かったな、ノエル。俺の名前は九重凪月。九重でも凪月でも好きなように呼んでくれ」
「ナツキさんですか。変わった名前ですね」
そりゃそうだ。俺はこの世界の人間じゃないからな
「そうか?俺の住んでいたところは、みんなこんな感じの名前だったがな」
「そうなんですか。今度ナツキさんの生まれ故郷に行ってみたいです」
それは叶わない願いだな。俺が5年間探し求め、未だに手がかり一つ見当たらないのだから
「.........まあ、機会があればな。じゃ、俺はこの辺でお暇させてもらう。マントは記念に上げるから」
もう、ここにはいる必要はないので、自然な流れで出ていこうとすると
「な、なにかな?」
「わ、わたし、もっとナツキさんのこと知りたいし、一緒にいたいです!」
少女が俺の服の袖を『ガシ』っと掴み、「逃がさないですよ?」っとばかりに離さない
うん、何となくだけどこの流れは知っていた。服もお金も一切無い中で、現状今頼れるのは俺だけだからな
だが、俺にはそんな余裕はないし、やるべきこともある。いろいろ変わってしまったが、俺は元の世界に帰りたいし、家族にも会いたい
その目的にこの世界の人間が一緒にいるのは、正直に邪魔だ
どんなに可愛いからって、それは変わらない。
「離してくれないからな?」
『ビクッ』
可愛そうだが、威圧を放ち解放させてもらうようにする。少女はガクガクと震え、しかしそれでも手を離さない
「は、離しません!それに、ナツキさんは私の裸を見たのだから、責任を取るべきです!」
まじか。てっきり怯えて逃げ出すと思ったが、反撃をしてくるとは
「いや、そのことはさっき忘れろって言っだろ」
「関係ないです!ナツキさんは女の子の裸をただで見て、はいそうですかで終わるとでも思っているんですか!?」
少女は少女で必死だった。今の自分の無力さを改めて実感しているからだ
邪心を倒した魔王のおかげで亜人差別は以前に比べてだいぶ良くなったが、それでも未だにその名残はある
人間がたくさんいる町で、何もない私が居たら、すぐさま奴隷に堕とされ、好きでもない相手に純潔も失うだろう
私は、そんな未来を進みたくはない!
私は私の意志で、好きない相手にこの身を捧げたいし、そのために国から逃げてきたんだ!
人間なのに獣人の私を見ても一切嫌悪しなかったのはナツキさんはだけだ。とても短い間だけどナツキさんと一緒にいると、心がふわふわして温かい
もっと一緒に居たい。話していたい
だから私は........
「責任を取って、わたしと一緒にいてください!」