3話
空は青く、太陽が爛々と輝き、この地上を照らしている
辺り一面は森に包まれていて、偶に見る鳥が陽気に鳴く
そして、そこには1人の青年が歩いていた
名前は九重 凪月
今年で18になる青年だ
髪は黒く目に少し掛かるくらいの長さ、そして瞳も黒い。顔立ちは線が細くて少し童顔だが、それなりに整っている
筋肉は全くなく、細身だ。黒いズボンを履き、黒のインナー。そして黒のローブを着ている
全身真っ黒で見るからに怪しい人物だ
「あ゛ぁぁぁぁぁ、腹減ったー」
ぐぅぅぅぅっと盛大にお腹を鳴らせ、気の抜けた声を出す
「暑いし、腹はすくし、もう家で引きこもりたい」
はあっとため息を吐き、お腹の音がウザったらしく合唱する
ぐぅぅぅぅ♪ぐぅぅ♪ぐ♪ぐぅぅぐぅぅぅ!!♪
「やかましい!!」
自分の腹を叩き、ゲンナリする凪月
「はぁぁ、今日で3日目か。お腹がなるのも必然か」
食料が尽きてから、凪月はお腹に何も入れてない
そして、暫く歩いていると
『ウォォォォォォォン!!」
野生の狼が現れた
「うぉっ!目血走ってるじゃねぇか」
狼は俺に向かって全速力で向かい、大きな牙からは盛大にヨダレが垂れている
「(あいつもお腹減っているんだな)」
次第に距離が詰まり、狼が俺目がけて噛み付こうとした時に
「昇っっっ竜っっっ拳!!!」
『グギャアァ!?」
何処ぞの格闘家の如く、狼の頭部を拳で粉砕した凪月。きっと狼は何をされたか分からずに死んで行ったのだろう
「許せ、これが弱肉強食ってやつだ」
凪月は嬉嬉として、狼の元に行き、火の魔法で血液や不純物を蒸発させた
何故凪月が魔法を使えるかと言うと、頑張ったからだ
そう、凪月はめちゃくちゃ頑張った
この世界に来て、もう5年以上経つ
凪月は血反吐を何度吐いても立ち上がり、骨が変な方向に折れても諦めずに立ち上がった
何度願っても元の世界には帰れず、気がつけばモンスターがうようよいる遺跡に1人で居た
遺跡を出るためには、最下層に行くしかなく、必然的にモンスターと戦うことになる
必死に最下層を目指し、気がつけば遺跡は攻略していて、果てしない力も身につけた
まあ、遺跡を攻略したあとの方がよっぽど大変だったが
次は魔の国に飛ばされ、そこで国を運営したりした
この話はまた次の機会にしよう
そんなこんなで、凪月はチート並みの身体能力とスキル、魔法を兼ね備えている
「きゅうぅ」
「ん.......今度は小狐か」
木の影でビクビク震え、こちらを見ている真っ白な小狐が居た
「....こいつよりは美味しそうだな」
「きゅう!?」
今倒した狼は地味に臭い、肉も硬そうだ
「よし、やっぱりあの狐にしよう!」
凪月は狼をぽいっ!
そして、一瞬で小狐まで接近して首根っこを掴む
「きゅう!?きゅきゅきゅ!!」
「ん....これはリンゴか?」
凪月に捕まえられた小狐は慌てて、尻尾に隠していたらしいリンゴを差し出してきた
「きゅきゅきゅきゅぅぅぅ!!」
そこには、必死に鳴き喚き、尻尾をパタパタしてリンゴを胸に押し付ける小狐の姿がいた
「..........ふぅぅ。今はこのリンゴで我慢しとくか。だが、美味しそうな貴重な食料だ。捕獲はしとくぞ」
「きゅう!?」
凪月はリンゴを小狐から貰い、一瞬にして完食する。そして、そのまま小狐を自分の胸もとに入れ、顔だけ出てるような状態にした
「きゅぅぅぅぅ」
「おっ?お前毛がフサフサで結構気持ちいいぞ」
頭を撫でてやると、満更でも無さそうに気持ちよく鳴いた
「(こいつ、ちょっと可愛いな)」
「きゅう?」
人間に捕獲されているのに、案外平気そうな小狐
「.......よし、全然お腹は空いているが、動けるうちに動こう。早くどっかの街につかないかなぁ」
途方に暮れて、再び足に力を入れ歩きだそうとしていると
「きゅきゅ!」
小狐が、首を振りアピールをしてきた、
「ん?.......もしかしてこっちに街があるのか?」
「きゅう!」
「(この小狐、結構賢いのか?)」
一瞬俯いて、どうしようか迷っていた凪月だったが
「よし、どっちにしろ歩くんだ。ダメ元で行ってみるか!」
こうして凪月は小狐と一緒に森の中を歩くのであった