93、グズる子供って大変だ
久しぶりのアレスが私に向かって歩いてきた。
薄暗い地下室でやっと近くまで来るとランプの灯が当たり顔が確認できた。
包帯ぐるぐるのアレスだ。
表情は乏しいがイケメン間違いはない。
包帯男なのにイケメンてどうなのよ!
むっちゃカッコいい!
離れていた分、カッコ良さが倍増したかもしれない!!
なんか色気さえ感じてしまう。
もはや神かもしれない。
アレスは私に手を伸ばした。
私もアレスに手を伸ばし、そのまま抱き抱えられた。
アレスーーーーーーーーーーー!!
ぎゅうっとしてみる。
アレスの匂いだ。いや、包帯の匂いかもしれないが凄く落ち着いた。泣いていたせいで顔が熱くなり頭も痛くなっていたが一気に癒されていく。
あーーー幸せ!! カラカラに渇いた砂に水が染み込むように幸せがいっぱい広がった。
フェルがホッとしていた。
いや~子供のグズりは困りますね~。
でもお気に入りのモノを与えればあっという間に泣き止みます。的な……
本当、迷惑でごめんなさい。
「良かった~やっと泣き止んでくれた~リリアは本当にアレスが好きだね~。ま、ボクもアレスが好きだけど」
そう言ってフェルもアレスに抱きついた。
「帰ってきてからちゃんと話せてなかったけどリリアが無事で良かった~!お帰りリリア」
フェルが微笑みながら言った。
「ただいまフェル、ごめんね。熱だして来られなくて、さっきもすぐに帰ってごめんね。それからいっぱい泣いちゃったのもゴメン。でも知らない人をむやみにお家に招待するのはどうかと思うよ。あのサクラコさんは一応ロイドが雇ったよ。ちょっと怪しい感じだけどお兄さんの仇を探してるって……」
「あ、やっぱりさっきの事で泣いてたの? わかったよ、もうリリア以外お家に呼ばないよ~だからもう泣かないでね」
う……変な誤解をされた。
フェルにはもっと警戒してほしいと思っただけなんだけど……
ひとり暮らしの老人が悪質訪問販売員に騙される的な心配……
あ、もちろんフェルは老人では無いですよ。年上だけど何かしっかりしてない大人、どちらかと言うと時々幼稚園児?(失礼!!)
その後、私が落ち着いたのを見て地下室にお茶セットを出してくれ、お菓子のぽぽるが山のように積まれたお皿を出す。
椅子とテーブルは積んであった木箱を代用した。フェルとのお茶会が再開された。
「明日にはちゃんとテーブルと椅子を用意しておくからね~今日はこれで我慢だよ~」
ぽぽるを頬張りながら言う。
リスみたいになってるよ。
「ところで……ロイくんにバレちゃったんだね~」
怒っていない口調だがちょっと低めの声だ。
「う、そうなんです。抜け道の事もバレてアレスの事も……」
フェルには話さなければならないことがいっぱいあった。




