91、王宮で働きたいのです!
私は急いでロイドの後ろに隠れた。
「おや、姫様はいつからこんなに私になついたのでしょう?」
ロイドが私を抱き抱えた。
げ、何するん? 私を抱き抱えて良いのはアレスだけです。
そうは言ってもロイドにも何回かだっこしてもらってるか……
緊急事態だから仕方ない。
「なつかない猫がなつくのは良いものですね。」
ロイドがニヤっと嗤った。
あ、助けを求める先を間違えたわ……
「私はサクラコと申します」
一瞬ロイドを見て動きが固まったサクラコだったが、すぐに礼儀正しく丁寧にお辞儀をした。
「サクラコさん、あなたはジャパネオの方ですね。何故ここに?」
「私は職業紹介所で紹介を受けてこちらに参りましたが、間違いだと断られてしまい途方に暮れております。こちらで雇っていただけませんか?」
「そう言った報告は受けております。以前姫様の話相手としてひと月だけ人を入れました。しかし今は募集はしておりません。間違いです。別の者がその旨を伝えてお引き取りをお願いした筈ですが、それとも何か他の目的でこちらにお出でですか?」
おお、ロイド流石ですよ。そう思うよ。怪しいもん。
「私は、気配を消すことが出来ます。そうやってあの骸骨の兵士達に気が付かれないようにこの奥の庭まで侵入しました。あとクナイの扱いはちょっと自信があります。体力もある方だと思います。」
ん? 何を言い始めたの?
「きっとお役に立ちます。私のような者を育てるのは手間も時間もかかるでしょう。とてもお買い得です!」
まさかの自分を売り込んでいる……?
あれ? 本当に職を探している人?
私を暗殺に来た人じゃないのかな?
「それだけでは弱いですね。」
キビシめにロイドが言う。
採用条件厳しいのですね。
「本来は紹介者のみです。身元の分からない者は論外です。ですが条件次第で考えないことも無いですよ」
「それでお願いします!」
サクラコが頭を下げる。
この人、美人さんなのに何か変だな。
「条件を聞かずに決めていいのですか?」
「はい! 雇っていただけるのであればいいです。お願いします!」
更に深々頭を下げた。
「仕方ありませんね。条件は私に忠誠を尽くすことです。命令は絶対ですよ。出来ますか?」
ん?
………今『私』にって言った?
『王宮』でも『国』でも『姫』でもなく『私』?
普通そこは姫だよね?
あ、でもこれって自分から断らせる為に変な事をいってるのかな?
「はい! 了解しました。」
ええ~!? いいのかい?
しかも即答だよ。
「……随分とあっさりですね。あなたは初対面の私に忠誠を尽くせと言われたんですよ。いいのですか?」
もっともです!!
「はい! あなたはここで雇用の実権を握る方ですよね? でしたら雇って貰える恩を忘れたりしません。ちゃんと忠誠を尽くします!」
「ちょっと信用できませんがそれを本気で言ってるのでしたら、あなた悪い男に騙されますよ。気を付けてください。まあ熱意を考えて試用期間でひと月置いても良いですが……あなたにはここでどうしても働きたい理由でもあるんですか?」
悪い男に騙される?
悪い男→ロイド
そう言う事ですか!?
「はい! 私はこの王宮にいるであろう私の義兄の仇を探しに来ました! だからどうしても王宮で働きたいのです!」
義兄の仇!?
物騒な話です。
そしてなんか嫌な予感……?




