8、ヤバヤバカップルですか!?
翌朝マルタに髪を梳いてもらっている時に昨日エリザを呼んでしまった話をした。
そして怖くて眠れなかった事も……
だいたいこんなホラーハウスに10歳の子供をひとりで寝させるなんて!虐待だよ!訴えてやるって感じ。
「毎日とは言わないけれどマルタ、私の部屋にお泊まりして…」
かわいめにお願いしてみた。また子供パワーに頼ってみる私。
するとマルタはうるるっとして
「私は昼間の担当なので夜は駄目なんです。」と申し訳なさそうに言った。
え?マルタが夜お泊まりに来てくれたら女子会みたいでパジャマパーティーしちゃおうと思ったのに残念…一回位いいじゃんとか言ったらワガママでパワハラかな?
ちょっと固まった私にマルタは困ったように
「夜は…駄目なんです。私が勝手に出るとロイドに怒られてしまいます。」
ああ、そうかシフト仕切っているのはきっとロイドなんだね?
でもロイドはマルタを怒らないのでは!?
残念だけど困らせるのも悪いので話題を変えてみる。
「あの呼びベルってそんなに大きな音じゃないのにエリザはどこで聞いていたのかな?」
昨日のちょっとした不思議を聞いてみる。
「私たち使用人は下の階にそれぞれ部屋があります。当番の者はベルを持っていますのでリリア様がベルを鳴らすと離れていても共鳴して鳴るのです。」
へー あのベルって魔法道具なのか。ハンドベルの方が音が良いとか思ったけど、音の問題じゃなかった。凄い!田舎にはなかった魔法がここにある。わくわく。
「じゃあ、マルタのお部屋も下にあるの?下の階のどの辺?遊びに行っちゃおうかな。いい?」
「はい。私たちの部屋は一階の奥の角部屋です。そこが一番広いし外に出られる扉もあるので、ロイドが夜中の見回りに出やすいのです。」
ん???
「二人部屋?」……………
「私とロイドだけ同室で、他の者は個室ですよ。」マルタが私の髪を結びながら言う。
いい年した兄妹が同じ部屋?
「お部屋たりないの?」部屋が不足していて仕方なく同じ部屋って事もあるか。
「いいえ。不足してませんよ? かつては三階と四階に王妃様と姫様達がおりました。使用人の人数は30人を越えておりましたが、今この宮に仕えているのは私を含めて5人ですからかなり余っております。」
マルタは不思議なことを聞くのね?って顔をしている。
私は馬車での事を思い浮かべていた。あのマルタとロイドが手を絡めていたあれ。
そうだこの兄妹あやしかったんだ…
聞いてみたいけど、失礼だよね?
「職場も部屋もお兄さんと一緒って大変だね?」子供っぽく言ってみた。
するとマルタはキョトっとした後…ああっと閃いてからにっこり
「ロイドは私の弟なんです。私の方が姉ですよ。うふふっ。まあ双子ですからそう変わりませんけど…」
逆でしたか………。まあどっちでもいいっす。
にこにこしながらリボンを結ぶマルタ。笑顔がかわいい。
………………………やっぱり気になる……聞いちゃおうかな…。子供だから許されるよね。
「あの…マルタとロイドって………」 出来てんの?…とは聞けないか…。
「なんでしょう?」またキョトっとしたマルタ。
んーーーー何て言おうか?
「マルタとロイドって一緒のベット寝るの?」
うわっ!遠回しに聞こうとしたら、とんでもない言葉がでてしまった。ダイレクト過ぎだ! なに言ってんの私!?
「はい。そうですよ。」
にっこり。そしてさらり。
とんでもないことを聞いてしまったと思ったのに、さらりと答えてくれた。
そのあとマルタは少し頬を染め恥ずかしそうにしてから
「夜に私が来られないのはロイドが離してくれないからなのです。申し訳ありません。リリア様。」
と言った。
うわーーーーーーーーーーーーー!!!
ヤバカップル!!!?
ヤバヤバのバカップルーーーーーーーーー?!!!
そんな事を話していたら肝心のフェルの事を相談していない。
やっぱりマルタに話すのはやめよう。マルタに悪気がなくても絶対いい方向にいかない気がする。