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83、何かやらかしたらしい

 上空を見上げていたロイドが小声で「不味い……」と呟いた。


 アレスは剣を下ろした。

剣の輝きが集束し消える。


「シーラ、レイラ、先ほどのご婦人を誰とも接触させるな! 捕らえろ! 我々が此処に来た痕跡を消せ!」


は? 捕らえる? サナおばさんを?


「アレス、その剣は武器装備としてアイテムボックスに入れられるのか? 死んでるからアイテムボックスは使えんか? 無理なら台座へ戻せ! 姫様はすぐに馬車へ!」


そう言いながらロイドは私を抱えて馬車へ放り込む。

扱いが雑。


「アレス急げ! 来い!」

ロイドは御者台に座り、アレスも続く。


何がなんだか分からないまま馬車が急いで出発した。


何があった!?


馬車の中では座席に横になりマルタが気持ち良さそうに寝ていた。


馬車が急発進しガクッとなったマルタが


「むにゃ……どうかしましたか~」

と起きてきた。


ああ、モーモ村が遠ざかる。

カホイの町を出た時よりも後ろ髪を引かれる思いだ。


 乱暴に馬車に放り込まれたり、サナおばさんを捕らえろって言ってたロイド。

やっぱりダメじゃん。腹が立つ。


 御者への小窓をコンコンして開ける。

「ロイド~どういう事? サナおばさんに酷いことしないでよ。どうするつもり~?」


馬車が凄い勢いで走っているから私がグチグチ言っても聞こえないかもしれない。でも言わずにはいられない。


「姫様、私やらかしたかもしれません。私達はモーモ村へ行ってない事にしたいのです。急いで王都に戻ります。異論は受け付けません!」


ロイドが珍しく焦っている。


こんなに焦っているロイドは初めてだ。


「どうしたんですか? やけに急いでますね」


マルタが訳がわからず私に聞く。

寝ていたから何も知らないんだもんね。

私的にはアレスが勇者の剣を引き抜くのを見逃したマルタはかわいそうと思う。あれはゲームだったらムービー入ってましたよ。名シーンです。


「マルタよく寝ていたね。勿体ないことしたよ」

イヤミとかではなく素直な感想です。


「すみません姫様、私もともと夜型で……昨日はロイが……」


言いかけてマルタがやめる。

なんだ? 喋るのを途中で中断されるのは気持ち悪い。

 この前もロイドがアレスの背中の傷の事を途中で喋るのを止めてもやもやしたのに、マルタまで同じことを!


「昨日の夜ロイドが……なあに?」

ここはあえて聞いてやる!


するとマルタはうつむいて赤くなった。


あ、これは聞いてはダメな大人の話!?


でも今後の為に少し二人の事を聞いておこう。


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