80、誘拐されて以来のモーモ村
今モーモ村って言った?
「このまま王都に帰るつもりでしたが寄り道しましょう。ここからなら、東へ1日あれば着くでしょう。」
え? そんなに離れてないんだ。
モーモ村、あののんびりとした村へ帰ることが出来るなんて、私がロイドに誘拐されて以来ですね。
もう半年以上も経っているか。
思えば人生激変でした。
村人→姫 ですからね。
でも何故突然?
ヘタな事を聞くとロイドの眉間にシワが刻まれて怖いので、今はモーモへ行けることを喜んでおこう。
カホイの町を出るとき私は町の探索をしたかった。
出来れば何かフェルにお土産でも欲しかったがマルタがすっぽりと顔を覆うフード付きのローブを着ているのを見て言うのをやめた。
そう言えばマルタは日光アレルギーだっけ?
そんなに日差しは強くないと思うが、あの格好でうろうろするのは大変そうだし、包帯男のアレスもいる。アレスにはロイドのシャツとズボンを借りた。二人とも身長も体型も近いのかサイズはピッタリだった。その上から一応ローブを着せた。ちょっと包帯が隠れて怪しい感じが薄れたかもしれないが魔法使いでも無いのにこんなローブを着る人はまずいない。
怪しい感じの人物を二人も連れて町中を動いていると、田舎の町ではあっという間に噂になり、人の印象にも残ってしまう。
ただでさえ重装甲の馬車で入ってきた時に周りに異様に見られているのだ。
もう充分印象に残って手遅れかもしれないが、出来る限り目立ちたくない。
私は一応姫様だし、またジャパネオの人とかに狙われたくない。
あんな経験は二度とごめんです。
凄い後ろ髪を引かれる思いでカホイを去った。
出来ればまた来たい。
そしてもっともっと温泉を満喫したかった。
村人だったら一生、来られなかったかもしれない。お姫様で良かった。
馬車ではアレスも座席に座らせる。
屍戦士の時、よく立たせていたのを後悔。ちゃんと座らせてあげとけば良かった。
向かいの席でマルタがロイドに寄りかかり珍しくうたた寝をしていた。
昨日遅くまで起きていたのだろうか?
二人きりで温泉入り直しに行ってたもんね。満喫出来て何よりです。
正直ラブラブで羨ましい。私もアレスとラブラブになりたい。
隣でロイドは何か手帳のようなものを見ていた。
さっきアイテムボックスから取り出しているようだった。
何個くらい荷物を持てるのかな?
いいな~、人によって違うとフェルは言っていたが、いくつものアイテムを手ぶらで持てるなんて羨ましすぎだ!
私がもし使えるなら、食料と水、それからマッチかな?
この前フェンリルさんが来なかったら私は凍えていたに違いない。その為マッチは必要だと痛感した。もっと言えばマッチは上手く使えるか自信が無いのでチャッカマンがあればいいな。この世界に無いと思うけど?
でも本当は着替え持ってれば済む?
まあとにかくあの時はフェンリルさんにお世話になった。結果犬臭くなったとしても、体温で温めてくれたフェンリルさんには感謝だ。
また会えるといいな。
私はアイテムボックスを出してみた。
フェルに教えてもらったお陰で出すことは出来る。
でも役立たずなんだよね。
私のアイテムボックスは相変わらずの"?"のマークのボックスだ。
このふざけたデザインなんだろうね。
髪の毛のボンボンを外し入れようとしてみたがやっぱりなにも出来なかった。
ロイドがこいつ何してるんだ?と言う表情で見てきた。
そして馬車はモーモに向かいひたすら走っていた。
何しに行くのか?
久しぶりのモーモ村。
何もないところだけど楽しみになってきた。
嬉しい。




