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78、勇者の夢。前世の夢

 結局、色々試したが吐き出させる事は出来なかった。


アレスの口元や唇をさわる時点でかなりの罪悪感だ。


勝手におさわりしてすみません、意識すると私の心臓がバクバクだった。


 そしてアレスをしゃがませたり、口に手を突っ込もうとしている私を超冷たい目でシーラとレイラが見ていた。


もう私は二人にとって凄い暴君にしか見えないだろう。


その夜の部屋割りは私とアレス、ロイドとマルタ、シーラとレイラ、で3部屋使った。


私の隣のベッドで眠るアレス。


屍戦士の鎧を着ていた時は夜いつも立っていた。


でもベッドで寝ている姿は自然に見える。


「おやすみ、アレス。」


アレスを見ながら眠りについた。

(素顔のアレスだから暫くは見とれてました。もうガン見…)


ーーーーーーーーーーー。


 夢を見た。


またゲームでも見ているような感じだ。

だが前に見た夢よりはっきりしている気がする。


 私は誰かの目線で動いている。


鏡があった。姿が映る。


勇者だ!!


 マントを翻し勇者が王宮の廊下を足早に歩いていた。

何か急いでいる。


おお、これが動く勇者!服装も勇者っぽい服装だ。

フェルの地下室で見た絵よりも更にカッコいい。


背中にかなりゴツい長剣を背負った勇者はまさに勇者だ。カッコいい!!

この姿を1日中見てても飽きないくらいの自信がある。


 ここはエターナルの王宮のようだった。

勇者は奥の王の間、謁見室へ向かう、


 扉を守る兵士は屍兵ではなく、普通の人間だった。

おお~人間だよ。新鮮な光景。


最近私の中で屍兵が普通になってきているから、慣れって恐ろしいと思う。


 後ろから赤毛の少年が駆けてきた。


「アレス、ボクも行くよ!」


勇者と赤毛の少年は王の間に入る。


 ここで視点が切り替わる。

今まで勇者の視点だったが全体を見渡せる視点になる。

ますますゲームっぽい感覚だ。


中には王座に座り、頭に王冠を被る栗毛の青年がいた。


「兄上、父王が倒れたと聞きました。お会いしたいのですが、王は今どこへ?」


「アレス、王は臥せっている。今は誰にもお会いしない。」


玉座から立ち上がり、勇者に近づく、王冠の青年。


「ヴァリアル、君が王の代理なのは分かるが、王冠を被るのはまだ早いよ。戴冠式もまだなのに…あと君が魔術師団に出した命令、あれは何だい?ボクは聞いてないよ」


赤毛の少年が口を挟む。


「フェル、君は友人であり魔王討伐に尽力した一人だ。だからといって物言いが少し失礼だ。私は君を通さなければ魔術師団に命令を出せない立場では無い。口を慎め!」


王冠の青年が怒りを込めて言い放つ。


「ですが兄上、私もフェルから聞きました。不死の軍団を作るとはどう言うことでしょうか。やっと魔王を倒し平和な世界になったのに、不死の軍団等必要だとはとても思えません。」


勇者は嗜めるように言った。


「アレスよ、抑止力と言うものは必要なのだよ。魔王討伐の為に団結していた国々の間にはもうそれは無い。放っておけば今度は人間同士の戦が始まるぞ。このエターナルこそ世界の抑止力になるべきだ。」


王冠の青年が更に勇者に近づく。


「兄上、私はそうは思いません。不死の軍団等は自然の摂理に逆らうものでは無いのですか? 民も他の国々も死者へ対しての冒涜だと考える筈です。もし死者の軍団なるものがこのエターナルに出来れば他の国との均衡が崩れるだけでなく、この国こそが魔王城のように人々が恐れる存在となってしまいます。もっと別のやり方を考えるべきです。」


「お前がそれを言うのか? アレスお前は魔王討伐後も何故神剣を携える? 

それはお前が他者に対して自らを上に見せる為の抑止力としているのではないのか?」


「私がですか? その様なつもりでは……」

勇者は少し考える。


 そして自分の背中の剣を下ろした。


かなりゴツい剣だ。勇者の剣てこんなん?

片手じゃ無理の両手剣だね。


「では私はこの剣を神にお返しします。そして兄上と共に国々が平和になることを考え兄上と協力し実行しましょう。」


王冠の青年の前に勇者は剣を差し出した。


「お前がそう言うのであれば、私も考え直そう。すまなかった……アレス、フェル。父が倒れ少し気が立ってむきになっていたようだ。不死の軍団の件は中止としよう……」


先ほどと変わり、王冠の青年の声に優しさが加わる。


「いえ、兄さんならわかってくれると思ってました。では早速、魔術師団に中止を伝えて来ます。行こうフェル。」


 和やかな空気が流れ、神剣を置いた勇者は赤毛の少年と共に背を向ける。


残された神剣に手を伸ばす、王冠の青年。


青年が神剣に触れると黒い靄のような物が出る。


青年は神剣に弾かれたように一度手を離す。


 しかしもう一度力任せに神剣を握り直し弾かれる痛みに耐えながら目の前の勇者の背に剣を突き立てた。


何が起きたのかも分からないまま勇者は倒れる。

その背には神剣が刺されたままだった。


ーーーーーーーーーーー赤毛の少年から声にならない悲鳴があがる!!!



 そして画面は真っ暗に…


遠くに街並みが見える。


遊園地の観覧車の中だ。


また私の前世の夢と混ざっている……?


目の前に髪の長い黒髪の女の子が座る。


何か楽しそうに喋っているが私には聞こえない。


女の子が隣に移動してきた。


嬉しそうに私の腕を掴み腕を組む。


あれ? 私の腕ってこんなにゴツかった?


何だ、これ?

まあ夢だからね……


あ、この子、この前の夢で制服着てた子だ。


誰だっけ?


どこかで見たような……?







ーーーーーーーーーーーー暗転。




そして、目が覚めた!!


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