72、ハイポーションすげえ!
おそらく1日ぶり位に馬車に戻る。
途中、森の中で私を探していたシーラとレイラにも合流した。
横転していた馬車は屍兵達によって直されたようだ。
中では絆創膏を貼ったマルタがご飯の用意をして待っていた。
マルタは私を見て無事を喜び、大泣きした。
心配かけてごめんね。
ああ、本当に疲れた。お腹もペコペコ。
皆一応無事で良かった。
ロイドが馬車にアレスを運び込みベッドに寝かせてくれた。
包帯だらけのアレスを見たマルタは驚いていたが、ロイドが森で見つけた怪我人だと説明した。
ひとまず安心。
そして改めて馬車の回りを見渡すと回りの木々はなぎ倒され、屍兵の残骸だらけだった。龍の凄まじさを感じた。
「龍はもう大丈夫なの? いないの?」
「隊列の先頭の方に行ってくれたんです。そのお陰で私達逃げられたんです。」
マルタが答える。
「わざわざオルゴン准将が龍に攻撃したせいで向こうに行って、ほぼ壊滅ですね。自分の力も分からず龍に手を出すなど……もう……可笑しくて、可笑しくて……くっくっく」
ロイドが悪そうに笑い出した。
それってオルゴン准将失脚の前に本人も無事では無いのでは?
「じゃあ、まだ道の向こうにいるの?」
「そうですね。道を曲がった崖の下辺りにおそらく巣があると思われます。ですから森を迂回して帰ります。くくくっ」
嬉しそうだ。いつまでもニヤニヤしている。こんなロイドも珍しい。
残った屍兵は20体ほどだった。逃げてしまった馬も連れてきて何とか出発出来そうだ。
馬車の中にはちゃんと着ぐるみウサギのぬいぐるみもあり、ポシェットも無事だった。フェルがくれたものを無くさず良かった。
舐めたかった飴も無事だった。パクっ
そこでポシェットの中身を見て、あ、となる。
ハイポーションあるよ。2本。
全身の痛みはこれで取れるんだ! て言うか飲んでみたかったんだよね。
本当に傷とか治るのか……フェルを疑ってる訳じゃないけど、ハイポーションなんてゲームの世界のものだもん。
…でも私の傷なんてよく考えれば大したことないんだよね。
これはマルタとロイドにあげよう。
「さあリリア様、お身体を拭いて、傷の手当てをしましょう。」
ちょうどいいタイミングでマルタが来た。マルタも絆創膏だらけだった。
「マルタ、これ飲んで!」
ハイポーションを渡すとマルタは"あっ"と言う顔をした。
「出発前に、リリア様が渡してくださったハイポーションですが……実はロイドに飲ませられなくて……」
知ってる。
「それで、そのハイポーション持ってきてるんです。今度こそロイドに飲ませます。」
「あ、じゃあ3本あるんだ。良かった。私の分もあるね。マルタも飲んでみようよ。」
その後、そんな貴重な物、勿体無いから自分はいらないと言うマルタに無理に飲ませ、自分でも飲んでみた。
味は薄いアセロラみたいだった。ピンク色で見たまんまか。
すると身体の中からぞぞぞっと何か来たと思ったら身体の痛みが消えた。なんだかお肌もキレイになった気がする。マルタもなんだか艶やかだ。
おおーーーーースゴいぞ! ハイポーション!!
もっと大怪我した時用に取って置いた方が良かったかな?
ちょっと後悔……
お姫様でも貧乏性な私。




