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71、感動を返せ

 ロイドを信じていいのだろうか?

ロイドは魔王の手先かもしれない。

王都に着いたらアレスを取りあげられたりしないか心配だった。


 ロイドがアレスを担ぎ上げて運ぶ。

私の事も抱えようとした。


前にマルタと私を抱えて逃げた事がある。ロイドが力持ちなのは知っているが、流石にアレスと私では重すぎだ。

それにロイドも結構あちこちヤバそう(痛そう)に見える。


「私、自分で歩けるよ」

本当は身体中痛くて歩きたくなかったが、アレスを運んでもらうのにこれ以上の負担は悪いと思った。


「姫様は私を甘くみてますね」


ロイドが手を差し出す。


ロイドのシャツにはあちこちに血が滲む。私もあちこちケガをしたがロイドも同じ筈、何となく甘えてはいけない気がする。


「歩けるよ。アレ……"カズクン"運んで貰うんだし……」


「では少し歩きながらお話しましょう」


話? そう言えばあまりロイドとちゃんと話したこと無いな……


「私は幼い頃からマルタが一番大事な存在で、あとは私の中ではどうでもいい存在なのです。そうなってしまったのは少し特殊な状況で育ったせいかもしれません」


だろうね。知ってた。でもそれ言葉にしちゃうんだ。


「だけど最近は少し違います。勿論マルタが一番大事ですが……」


マルタが一番大事いうの二回言った。どんだけ好きなん!


「姫様の事もほんの少し大事です」


ほんの少しかい。……正直者。


「だから"カズクン"も運ぶし、姫様を抱き抱えて行くことも何も苦ではないのです」


え? どういう意味?


「"お父さん"は"娘"の願いを叶えてあげたくなるものです」


ロイドがほんの少し優しい顔をした。


「う……」


 ちょっと不意討ちだった。


"お父さん"発言覚えてましたか、恥ずかしい……と思いつつ不覚にも少し感動してしまった。


 ここにきていきなり優しくされたような気がする。

私はおずおずとロイドの手を取り抱っこして貰う。

そしてロイドがにっこり笑い……


「それに今私は最高に機嫌が良いのです。あの長年の邪魔者オルゴン准将が自ら墓穴を掘って失脚するネタを作ってくれたのです。

わざわざ私への嫌がらせでルカレリア回りに移動したために、子育て中の龍の縄張りに入ってしまった。一個大隊は分断されほぼ壊滅。もう笑いが止まりません。ククククク」


ロイドが物凄く悪い顔で嗤い出した。


うわ~本当悪そう……


ロイドはやっぱりロイドだった。


さっきの感動を返してほしい。



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