69、彷徨うゾンビの私達
アレスと森を彷徨う。
お腹すいた~おやつのクッキーまだ残ってたのにな。馬車が倒されてきっと粉々だろうな。
アレスは手こそ上げていないが足元がゾンビ歩きだった。
あ、手を前に出して歩くのはキョンシーだっけ? ゾンビはこんなもん? まあ、どっちでもいいですけど……
私もあちこちぶつけたり擦り傷で身体が痛いせいか、ほぼゾンビ歩きだった。
もし普通の人が今の私達を見たら、森に魔物ゾンビが出た、と思うだろう。
そしてこのまま食べ物が見つからなければゾンビ歩きだけでなく、本物の彷徨うゾンビになりそうだ。
ああ神様、コンビニスウィーツが食べたいとか我儘は言いません。
何か食べたいです。お腹すいた~
マルタの用意してくれるおやつが食べたい。
フェルの買ってくるおやつが食べたい。
クックモードのお菓子が食べたい。
フェルがポシェットに沢山入れてくれた飴でも奇跡的に持っていれば良かった。
はーーーーーーーーーーーーー
もう歩けない…
どっちに行っても森だ!
「アレス…フェンリルさん、また呼べないかな?」
少しだけ期待を込めて聞いてみた。
アレスは無言だった。当たり前だ。
無言でゾンビ歩きをしているアレス。虚ろな瞳に包帯……もうゾンビっぽいのでは無くてゾンビそのもの!?
でもただのゾンビではないのです!
イケメンゾンビ!!
そんな事を考えてひとりでニヤニヤする私。
アレスも頑張って歩いてくれてる。
私も頑張ろ……
その時木の幹に足を引っ掻けた。
べちょ!
私はこけた。
もう傷だらけだし、打ち身だらけだし、泥だらけだし、犬臭いし、今更転んだところで大して変わらない筈だった。
でも私の忍耐の限界だったようだ!
私は大声で泣き始めた。
体力温存の為に泣いたりするのが勿体無いのは、理性で分かってはいた。ムダな体力は使ってはいけない。
しかし、理性で分かっていても感情でどうしようもない時ってあるよね?
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
バサッザザザザッ
離れた木の上の方から音がする。だんだんこっちに近づいて来た。
ヤバい、魔物でも呼び寄せた!?
「姫様!!」
木の上から飛び降りて来たのは、ぼろぼろに汚れたロイドだった。
あんなに憎たらしかったロイドの顔を見て、こんなにホッとする日がくるとは!
「うわーーん!お父さーーーーーーーーん!!」
とんでもない言葉が自分から出た。いつも脳内で呼んでいたから出てしまった。
ロイドが一瞬「お父さん!?」と怯むが……
「貴様、姫様に何かしたのか!?」
といきなり戦闘モードに切り替わる。
ロイドの両腕にトンファーが出てくる!
そのまま木を蹴り反動をつけたと思ったらアレスに殴りかかる。
へ?…………
一瞬何が起きたのか理解できない。
トンファーの柄がアレスに命中し、アレスが数メートルすっ飛ばされた。
う、うわ、アレス様になんて事を!!!!!!
「ぎゃーーーーーーーーーーーーー! アレスーーーーーーーーー!!」
私は自分でもびっくりするくらいの、とんでもない悲鳴をあげた!!




