6、フェルとお茶会
「いや~人を家に招くの久しぶりです。嬉しいな~」
石造りの家を覗こうした私はあっさり見つかり何故かお茶に招かれていた。
家の中は本とか石がゴロゴロいっぱいあり、理科の実験に使いそうなよくわからない器具が散乱したゴミ屋敷のようだった。あ、失礼か。
そこに埋もれたテーブルと椅子があり、椅子をめっちゃ勧めてきて強引に座らされた。
散らかったテーブルの物を無理やり隅に寄せ、ポットとカップを用意してお茶の用意をしている。
ボサボサの赤毛にメガネ。メガネでわかりづらいが目の回りは隈がある。顔色も悪い。寝不足なのかな?
痩せた手足。大きなローブからひょろっとした手足が出ていた。何歳くらいなのか? 年齢不詳だった。でも大人だと思う。
「ボクはフェル、フェル・バーンだよ。よろしくね~」ニコニコしながらメガネを外し髪をかき分けて少し整えたつもりらしい。
メガネを外したら少し若く見えた。子供なのか?
それから握手してくる。
「リリアです。よろしく。フェルさん……」とつられて自己紹介をしてしまった。
そしてこの人、名字あるんだと感心する。
この世界って名字があるのは良い家の証拠?らしい。
「やだな~呼び捨てにして~フェルでもフィーでもいいよ~~ボクも君のことリリアって呼ぶし~」
変な感じの喋り方……
フェルは鼻歌を歌いながら、さっき持っていた紙袋からパンと果物っぽい何かを出してお皿に並べる。しかも二人分用意していた。私の分?
そろそろ本格的に外が明るい!
出来れば私がいないのがバレる前に部屋に戻りたい。
「友達と食事をとるなんて久しぶりだな~」
嬉しそうにお茶を注いでいる。
……? 友達? 私のこと? さっき会ったばかりですよね?
しかもお茶どころか一緒に朝食を食べる事になっているよ。私早く戻らないとなのに!
「誰かと食事するのはアレス以来だよ~」
うふふ~と笑ってフェルがカップを渡してくる。
知らんがな!アレスって誰だよ!と思いながら早くここから脱出しないと……でもこんなに嬉しそうにしている人を傷つけずにどうやって断ればいいのか……………いや流されてはダメだ。断ろう!
「……あのねフェル、私あまり時間がなくて、もう帰らないとなの」
フェル動きが固まった。
「…………………………………………………………。」
ーポロリーー
フェルの手からパンが落ちる。ついでに目からは涙が…ポロポロ
うわっ⁉ 泣かせた?
「う、うん、いいんだよ。そうだよね。誰もボクの事なんて……き、気にしないで帰っていいよ」
なにこの罪悪感。
「だ、大丈夫だよ~リリアが帰っちゃってもボクには友達がちゃんといるから…」
すごいひきつってるよ。手も震えてる。大丈夫じゃなさそう。
「ボクの一番の友達は勇者だからね~彼ほどの友達はいないよぉ。ぜんぜん大丈夫!さあ、リリア帰っていいんだよ」
勇者とか言い出しちゃったよ…なんか哀れになってきた。
「大丈夫………なんだけど…も、もし…良かったら…」
なんかモジモジしはじめた。
「もし……よかっ…よか……」
モジモジ。もじもじ。モジモジ。
「もし良かったら、また遊びにきてね。」
やっと言えたようだ。
そのあと絶対にまた遊びに来る約束を何度もさせられ、見送りをしたい、送りたい、としつこかったけれど目立ちそうなので全力で断り……やっと解放された。
なんだったんだ?あの人…
まあ変な人ではあるけれど悪い人でもなさそうだし憎めない感じの人だった。
最後の方はウザかったけちょっとかわいく思えてきちゃったよ。
ため息まじりに石造りの家をあとにするとーーーー
「姫様、おはようございます。朝のお散歩は楽しめましたか?」
深翠の瞳を光らせ、にっこりと嗤う執事服の男が立っていた。