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64、ルカレリア王国

 どうやら馬車が違う道を通っているらしい。


「先頭に行ってオルゴン准将に確認を取って来ます。」


ロイドがまた馬車の外に出ようとしたとき、外から「ガハハハハハ」と下品そうな笑い声が聞こえた。


「ロイドはいるか!?」

オルゴン准将が馬車の外に来ているようだ。


窓を大きく開け外を見るとオルゴン准将が馬車と並列して馬を走らせていた。

私の顔を見ると


「おお、姫様、ご機嫌麗しゅう。お加減は良いようですな。」


オルゴン准将には町の視察その他諸々、体調不良でお断りしていたのでこの挨拶らしい。


「准将、どうされましたか? 帰りのルートが違うようですが……」


ロイドが窓から顔を出し質問した。


「おおっ折角だからお前にルカレリアを見せてやろうと思ってな。少し道を変えたのだ! ルカレリアの近くを通ってやる。滅ぼされた故郷を良く見てお前が自分の立場を思い出せるようにな!」


下品な笑みを浮かべオルゴン准将が挑発してくる。


「おや、その様なお気遣いをしていただかなくても私は常に弁えておりますよ。今更ルカレリアに何の感傷もございません。」


ロイドもいやらしく嗤った。


だが、馬車の中で座るマルタは違った。

顔は真っ青になり震えていた……。


「ガハハハハハッそうかそうか、お、そろそろ見えてきたな!ルカレリアの塔だ!」


 外にぼろぼろの塔が見えた。

塔と言うには低いのは途中で折れ崩れているからだった。


 砂が舞い上がり、瓦礫だらけの廃墟が遠くに見える。木も草も枯れ廃墟は砂に埋もれつつあるようだ。その様子から人がいなくなって、かなり年数が経っているのがわかる。


「あの塔の美しさが、ルカレリアの自慢だったか?今では見る影もないな。ははははっ」


でかい声でおっさんが笑う。


「さあ、どうでしょうか?滅びた街など何の興味も湧きませんので、オルゴン准将に観光のご趣味があるとは知りませんでしたね」


ロイドも嗤う。


「ガハハハ……眉ひとつ動かさんとは相変わらず可愛いげの無い小僧だ!」


そう言ってオルゴン准将は列の前方に戻って行った。


……今のは何だろう? あからさまに嫌がらせに来た……?


オルゴン准将が去った後、ロイドが窓を閉める。


先ほど迄の表情と明らかに違う。


「姫様申し訳ありません。しばらく二人にさせて下さい」


 そう言ってマルタを抱き抱えカーテンの向こうに行った。

しばらくするとマルタの泣き声が聞こえてきた。


私は何だか嫌な気持ちになりアレスにしがみつく。


アレス、アレスは勇者だよね。

エターナルに苦しめられている人がいたら助けてあげられないかな?


エターナル(この国)は間違っている。







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