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57、初めての夜会ですが、ちょっと……

 屍兵を減らし、街に入れて貰えたが街の中は異様な感じに静かだった。


 どの家も木戸を閉め、道にも誰もいない…

私達が通り過ぎるのを息を潜めて待っているようだった。


 ごめんなさいね。不気味だよね。早く通りすぎるからね。


 100体をきっているとはいえ、屍の集団が街を通っていく。

これは怖いだろう。


私達は招かれざる客なのだ。



 城に到着した。

城の兵が皆微妙な顔をしている。

こんな集団を城内に入れて良いのか…そんな戸惑いを感じた。


 城の中に入り、スノウハイランドの王様と挨拶をした。王様は少しやつれていた。普通に定型文のような挨拶をして、いよいよ姉のシャーロット様と、その旦那さんの王子様にご挨拶。


 シャーロット様は長い金髪を結って縦ロールに髪が巻かれていて、姫とかお嬢様とかそんな感じの人だ。


 シャーロット様からの招待と言う割には全く私に興味が無さそうだった。

その様子を見て、以前父親に初対面でチラ見されただけで終わった事を思い出した。私に興味が無いというところは共通のようだ。


 馬車で聞いた話は本当だったらしく、私の後ろに控えるロイドを見ているようだった。そんなにあからさまに見つめちゃダメだろう?


 旦那様の王太子様は当たり障りのないようにビクビクしている感じだった。細身の内気な男性に見える。


まあ、こんな屍の兵を連れている一団とはどう考えても仲良くはなれないだろう。

私だったらムリだ!


 その後、歓迎会なるものが開かれたが、夢にまで見たキラキラの夜会の風景もひどく虚しかった。

 ここにいる誰も私達を歓迎していないのは明らかだ。


 オリゴン准将は女性に囲まれてご機嫌ではあったが、周りの女性達の誰ひとり本気で笑っている者はいない。


 私はその光景を気持ち悪いと思った。


 王様の指示かと思われるが、何人か若い男性貴族が私をダンスにビクビクしながら誘いに来たが、私はまだ成人ではなく社交界にデビューもしていない。それを理由に断ることが出来るとロイドが耳打ちで教えてくれたので全て断った。断られた方も、ほっとしていた。


 私の後ろにはロイドとアレスが控えていた。その為私を見る周りの目が厳しかった。

 そりゃそうだよね。屍戦士と何か怖そうな侍従が常に後ろに控えて目を光らせている。ヤバそうな姫だよ。

私にとっては二人が後ろについていてくれるのは安心だけど……


 屍を夜会に入れるなど……と聞こえてきたが、私はアレスと離れたくない。それにアレスを普通の屍と一緒にしないでほしいし、ロイドもアレスを護衛として連れ歩くつもりでいてくれたので助かった。


 他の人からしたらアレスは普通の屍戦士と変わらないように見えるだろうから仕方ないかもしれない。

 でもその実態は、"超絶イケメンの勇者アレス!"

フフフ……私だけが知っている。


 ちなみに今日の私はかわいい。

マルタが初めての夜会用に用意してくれていたらしく、ピンクと白のフリフリドレスだ!髪も上の方に1つに結い、後れ毛をクリクリさせてある。そしてドレスと同じ共布で作られたピンクと白のリボンを豪華につけている。

 うん。お姫様っぽいわ。

せっかくこんな格好しているのに、日頃から練習しているダンスも踊れない…

チラッとアレスを見る。

アレスと踊れたら良かったのに……

アレスとダンス……

想像のアレスは王子さまのような正装だ。なに着てもカッコいい!

想像してひとりで赤くなる。



 ああ早く帰りたいな~。フェルは今頃どうしているかな?


 せめて今は部屋で休みたい。長旅で疲れているのに夜会って…着いたその日にやる?もう早く済ませて早く帰ってと言う意味ではないかと思う。


 この夜会、最後までいないとダメなのかな~?


「ロイド…私もう下がってはダメかしら…?」

人に酔ったかも、気持ち悪いし……


「勿論大丈夫です。下がる前にスノウハイランド王へのご挨拶をしていきましょう。」


 何とか王様に挨拶をして、今日泊まる客間に連れていってもらった。

先にマルタとシーラが私の荷物を解いていた。

 そして寝る支度を手伝ってもらい。やっと寛げる格好になれた。


「隣の部屋に控えております。何かあればお呼びください。」

とロイドが下がり、続いてマルタとシーラも下がった。



 ふうーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ


もうお姫様としてのお仕事おしまいだよね。疲れた~!!


アレスと二人だけになりようやく落ち着けた。


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