55、実感無いけどお姉様達の存在
北に向かっているせいか、かなり寒くなってきた。
装甲馬車の窓を締めても寒い。
マルタがもふもふの白い毛皮のコートを用意してくれ、それを着込む。髪を縛るリボンも、もふもふのボンボンだ。
ピンクのぬいぐるみを抱えた白いもふもふの毛皮のコートを着た少女。今の私はさぞかわいいのではないかと思う。
「姫様とてもかわいらしいですわ。ほら、"カズクン"もかわいいって言ってますよ。」
「……」
何かまたマルタが"カズクン"の名を推してくる。
"カズクン推し"やめてほしい。
コンコン!
馬車の上からロイドが合図してきた。
マルタが急いでドアを開ける。
走行中の馬車の天井からロイドが中に飛び降りて来た。
一緒に雪も舞って入ってくる。
わー寒い。風が入るから出入りするのやめて~
ロイドの頭に雪が付いていた。雪が降ってきたらしい。
ロイドの頭の雪をマルタが背伸びして払っている。
「姫様、スノウハイランドが見えてきました。外をご覧になりますか?」
この世界初の雪か……見たい気もするけど、寒いから到着してから見るので良い気がする。
……と、子供らしからぬ事を考えていると……
ロイドが馬車の窓を開けた。
冷たい風が入ってくる。
うわー寒っ
普通、開けるか~!?
外は雪景色だった。
真っ白の世界。
雪の積もった木々に囲まれ馬車は走っている。本来なら幻想的でステキだが、
その回りにムードぶち壊しの屍兵達が、ガチャガチャと歩いている。
こいつらが視界に入ってくるとどんな景色でも残念感が出てしまう。
山間の道はまだ続いているが、その向こうに開けた大地があり、そこに大きな街と城が見えた。
あれがスノウハイランドか…
白銀の世界の白銀のお城。
綺麗だった…
ちょっとワクワクしてきた。
でも寒いから、窓を閉めてもらった。もう開けないで…
「シャーロット様ってどんな人だろう。」
さっきまで全く興味のなかったシャーロット姫の事も気になりだした。
初めて会うけど、一応私のお姉さんだもんね。
「スノウハイランドに嫁いだってことは、結婚してるってことよね?何歳位かな?マルタ知ってる?」
「はい。存じてます。シャーロット様は18歳ですね。その上のアーネット様は23歳、1番上のお姉様のロゼッタ様は26歳です。
シャーロット様はリリア様と一番近いお年頃ですのできっと仲良くなれるかと…」
ああそうか。お姉さん3人いるんだっけ、実感無いけど…
「小さい頃は3人共、ロイドと結婚すると言ってよく喧嘩をされてました。ロイドは幼い頃、とても綺麗な少年でしたから…今もステキですけど」
懐かしそうにマルタが話す。何気にノロケ?が入った。
「ロイド、モテモテだね」
3人共だと年齢の幅あるね~凄いわ
「幼い頃のお戯れですよ。それにロゼッタ様は違うと思います。」
ロイドが何か微妙な否定をしてきた。
「ロイドと1番歳が近いのは自分だから協力しなさいってよく言われました。」
マルタがちょっとむくれる。
「ロゼッタ様がそんなことを? それ、いつの話だ?」
おお、ロイドさん少し狼狽えました?
「あら? 気になります?」
むくれたままマルタが言う。
「いや、なる筈ないだろう。」
ロイドが呆れて言う。
「そうか~キャロルにもモテてたし、ロイドはモテモテか~」
私は、うんうん、と納得してみせた。
「姫様、その話はもうしないで頂きたい。」
ロイドが真顔でヤバい。
マルタはむくれたままだ。
自分で言いながらやきもちを妬いていたようだ。
私はアレスと遊んできます。とアレスの所に行き二人から距離をとった。
さあ、私がいない間に仲直りするが良い。
すると小さな声で
『おいで、マルタ…』
と言う声が聞こえた。
どうやら二人の仲直りはすぐ出来そうだ。




