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53、夜中の発作

 翌朝目覚めると馬車の中……ああ、これがしばらく続くのか……


 馬車は以前乗った物より大きく、中も改造されて3人分の簡易ベッドがちゃんとある、これはとてもありがたかった。

キャンピングカーならぬキャンピング馬車だった。


座席とちょっとしたキッチンも付いている。


 だが流石にこれで4日も5日もだとストレスはたまりそうだった。


 アレスも乗せてしまったから、車内の移動の時に上手くアレスを誘導し退けないとロイドにキレられそうだ。


外を覗くと廻り中が屍兵。


うわ~こんな軍団に一般の方々が会ったら引くだろうな~

街を出る時は夜中だったから見た人は少ないと思うが、子供が見てしまったらトラウマになる怖さだ。


 装甲馬車で運ばれる私はまるで屍兵達に連行されているように見えかねない。


 ずっと馬車に乗っていると退屈だ。

周りの景色を見ていても必ず視界に屍兵が入ってくる。

ちょっと邪魔だよ。


もう、うんざりだが、救いは出発前に会った感じの悪いオリゴン准将が私の馬車の近くにいないことだった。

隊列的にはもっと前の方にいるのだろう。


 たまに()()()()()()()()ロイドがヒョイと外に行く。曲芸か!


 馬車の上や御者のところで周りの確認をしたりしている。落ちそうで怖いが馬車の外に出られて羨ましい。


「せっかくだからどこかに止まりたいな…」

と言ってみたが…

 生きた人間の移動に合わせてくれないらしく休憩無しでひたすら進んで行進するのがオリゴン准将の考えだそうだ。

 何しろ屍達は食事も休憩も無くて大丈夫だから…

こんなの普通の人が見たら悪魔の軍勢だよ。

人と違って休まないってのはスゴく効率はいいのだろう。

 あっという間に進んでいく。このままだと予定より早くつくかもしれないらしい。

 この隊列のどこかにいるシーラとレイラは無事についてきてるのだろうか?

ちょっと心配です。


 もう食っちゃ寝状態で退屈だし、早く着かないかな~




 夜中寝ていると声がした気がした。


何だろう?

誰か魘されている……?

カーテンの向こうは二段ベッドで上にロイド、下にマルタが眠っている筈だった。

声は下から聞こえる。

魘されているのはマルタだ。


ガタッと音がして上のベッドからロイドが降りたようだ。

『大丈夫か?』

私が眠っていると思っているのか小声でマルタに話しかけている。

「う、うう……」

マルタが唸っている。

病気かな? どうかしたのか……

カーテンの隙間からそっと見てみた。


ロイドがマルタを抱えていた。

やはり具合が悪い?

マルタの呼吸が荒い。


「フーッフーッ……うう」


苦しそうだ。


『落ち着いて、ゆっくり呼吸して……そうゆっくり』


何だろう?何かの発作?


すーはー、マルタがゆっくり呼吸をした。


「うう……ひっく……ロイ、離れないで……そばにいて……」


マルタが泣きながらロイドにしがみつく。


『大丈夫。離れないよ。ずっと一緒だよ。』


「ひっく、ひっくっ……ぎゅうってして……朝までぎゅってしてて……」


ロイドがマルタをぎゅうと抱き締めた。

『大丈夫だよ。ずっとこうしてるから……』


しばらくして、マルタの呼吸が落ち着いてきたようだった。


『落ち着いた? 久しぶりの発作だったね』

ロイドがマルタの背中を擦って落ち着かせていた。


大丈夫だったらしい、良かった。ほっ


『マルタ、僕を噛んでいいよ。』


は!?


聞き間違い!?


ロイドが変な事を言った気がする。


カーテンの隙間からロイドの首筋に噛みつくマルタが見えた……









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