4、私って大人?
夢を見た。
"彼"の背中を追いかけていた。なかなか追いつかない。悲しい。
"彼"が振り返って私に手を差し出す。
"彼"の手を握ろうとすると私の手は小さい。
10歳の女の子リリアの手だった。
夢の中戸惑っている私の頭を"彼"がぽんぽんと撫でる。
顔を見上げると……
顔がわからない
わからない…なぜ?
思い出さないようにしていたから?
悲しい。悲しい。悲しい。
大事な人の顔がわからないなんて!!
すると"彼"は立ち上がり、私を置いて行ってしまう。
私はまた"彼"を追いかけるが届かない!追い付けない!!
「行かないでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!! ○○○○!!」
ーーーーーーーーーー?
「リリア様。お目覚めですか?」
側でマルタが心配そうに私を見つめていた。
どうやら私は魘されていたようだった。
私はリリアだった。そうですリリアですよ。
前世の夢、久しぶりに見た。
ましてや"彼"の夢なんて………
最近あまり前世の事は思い出せないことも増えてきた気がする。
"彼"の顔を思い出そうとしてみる。やっぱりよく思い出せない。
背格好とかはわかる。でも…
いやいやもう転生しちゃってるんだからいいんですよ。
"彼"の事を考えるのはやめよう。
私はもっと今を考えないと
「リリア様大丈夫ですか?」
マルタがおろおろしはじめた。
「あ、うん大丈夫。」
返事をしたもののあまり大丈夫ではなかった。
なんだか全身じっとり汗をかいている。
昨日盛りだくさんで色々あったせいで変な夢をみたのだろう。
前向きにならなければ!
前向きに…
昨日、屍兵の事で動揺したままお父様…いえ
この国、エターナル王国の現国王。
ヴァリアル·グランディス·エターナル3世陛下にお会いしました。
いや、会ったというかチラ見されました。
50代位のガッチリ系のおっさん。
さすがに国王の前だし、屍兵の事をきいたばかりで緊張と恐怖で固まっていた私に何か声をかけるでもなく。
私を一瞥して
「ロイド、お前に任せる。」と………
えーーーーーーーーーーーーーーっっ?
なに任せちゃってるん?
娘じゃないのかよ!?
とか言える筈もなく…
あのねーーっ屍兵とかキモい兵士いるし、お父さんである国王はチラ見だけだし、なんか執事っぽいやつは危ないヤバそうな奴だし、こんなのホントに私が10歳の少女だったら完全アウトだよ。
もう失禁ものだよ?
トラウマとかになるよ?
私が前世の記憶分大人で良かったね~って
?大人?そうか私って大人なんだ。
前世で17歳だった私……現在10歳の私。
足したら27歳?
充分大人じゃないですか。成人式の振り袖も着ないで成人しているとは…何だか残念。
おかしくないように年齢に合った行動っぽくしていたせいで自分が大人という感覚が薄かったのかもしれない。
そもそも目の前にいるマルタ。
彼女はあのロイドの双子の妹だよ。初対面から何だか彼女を信用しすぎたのは何故だろう?
この優しそうな雰囲気のせいなのか?
何か信じる魔法を使われたってわけではないと思いたい。
そんな魔法があればロイドにも使われているはずだし。
自分が大人だと自覚?したとたん人を疑うとか、私疲れているのかな?
マルタが私の汗をふいてくれる。すごく心配している表情だ。
その顔を見て少し胸が痛んだ。
そうだよ。何疑ってるんだろう。ダメじゃん私。
そして私……たぶんマルタより年上ですね。
今度年齢聞いてみよう。
その後ーーーー
結局小さな身体は色々あった事に耐えられなかったのか、三日間私は熱を出して寝込む。