45、姫様に落ち度はございません
「うわーーーーーーーーん! 姫様ーーーーー契約の延長ダメでしたーーー!! しかもまた怒られたーーーー!」
朝うとうとしてると、いきなり扉が開きキャロルが入って来た。
朝から元気だなー。
こっちは眠いのに…今何時なんだろう。
しかもまた、ノックも挨拶も無しかい。
「キャロル~朝だから静かにね……で? 今度はどうしたって~?」
一応聞いてみる。
「ほら、私ってばあと2日で雇用契約終わっちゃうでしょ!?」
あーハイハイ。1日経ったからね。
「それで、ロイド様に雇用の延長をお願いしに行ったんです。」
ふーーーーん。メンタル強いね。
「今度は、いつ行ったの?」
「さっきです。夜中がダメなら早朝が良いと思って!!」
どうしてそうなる!?
「そうしたらロイド様、髪の長い美女と寝ておりましたーーーー! またショックー!!」
だからそれマルタだよ。
それにしてもロイドが少し気の毒に思えてきた。
「それで怒られたの? 当然だと思うよ。行く時間もだけどノックもした?」
早朝は私も眠いよ。あくびが出た。
「私、思い立つとすぐに行動してしまうんですー! 姫様、私に口添えして下さい!」
どう口添えしろと?
「姫様、おはようございます。」
キャロルが開けっ放しにしたドアからロイドが挨拶する。
「キャロル、朝から姫様を騒がせてはいけません。下がりなさい。」
ロイドが不機嫌そうにキャロルに言う。
あれ?ロイド?ケガしている。
3日ぶり位に会った気がするが、腕も吊っているし、顔にも大きな絆創膏をつけている。あの鎧武者と戦った時より何で傷増えてるん?
マルタが一昨日の朝泣いて王宮からロイドがなかなか帰ってこなかった、と言っていた話を思い出した。
王宮で…?まさかね。ちょっと呆然としてしまう。
「おはようございます。姫様。」
エリザが現れた。
「さあ行きますよ。キャロル。」
エリザがキャロルを回収し、そのままキャロルはエリザに連れて行かれた。
にぎやかだったのが静かになる。
エリザの顔色がワルく不機嫌そうで怖かった。
「では姫様、朝から失礼致しました。」
ロイドが部屋から下がろうとする。
「待ってロイド!そのケガどうしたの?」
思わず聞いてみた。
「お見苦しい姿を見せ申し訳ございません。」
ロイドが顔を伏せる。
「そうじゃなくて…もしかして…この前の私のお誕生日に出掛けた時の事で何か怒られたりしたの?それと関係あるの?」
「…申し訳ございません。」
そのまま顔を伏せている。
答えられないのか……
「じゃあ、ひとつだけ教えて、ずっと外に出さなかった私をどうしてお誕生日に連れ出してくれたの?」
「……姫様のお誕生日を喜んで頂けるようにとのマルタの案でしたが、実行に移したのは私でマルタに落ち度はございません。」
「そんな……二人とも何の落ち度もないよ。ごめんなさい。」
私の為にやってくれたことだったのに、迷惑をかけてしまった。
悲しい。
私がすすり泣きを始めると、ロイドが私の高さまでしゃがみ……
「姫様にも何の落ち度もございませんよ」
と言って頭を撫でた。
ちょっと困った顔をして微笑む姿は"ロイドってマルタと双子なんだな"と改めて思うくらい、マルタに似ていた。




