35、お誕生日のお出かけ
私は今馬車に乗っている。
なんと王宮に連れて来られてから初めてのお出掛けだ。嬉しい!
私のお誕生日祝いでお出掛けを許して貰えたらしい。
そもそも何で私、こんなにお出かけさせてもらえないの?
姫様ってそういうもの?
ずっと閉じ込められていたから外が眩しい。
王宮から馬車で半日で着く古城に行く。お城のすぐ近くには湖もあるらしい。そこへ一泊の短い旅行。姫様の旅行としては地味な気もするが、すごく楽しみだ。
だけど私は絶対アレスをおいて行きたくなかった。
なので私はローリング泣きをする覚悟で訴えるつもりだったが、もともと後宮の屍戦士を連れて行く予定だったらしく、あっさり他の屍戦士と一緒に連れて来られた。
今回の旅行は馬車2台に屍戦士5人屍兵20人だ。
…多くね?
案の定、街を通り抜ける際、街の人達はドン引きで、さささっと逃げて行った。そして隠れてヒソヒソしながらこちらを見ている。
ホント、何の集団に見えるのか…怪しすぎるよね。
すみません。街の皆さん。
馬車の中は1台目に私とマルタとロイド。
2台目にシーラとレイラの二人。
そしてその周りに屍戦士と屍兵が配置されている。
エリザとキャロルはお留守番だった。
キャロルは凄く行きたかったらしい。
留守中エリザによく教育するようにとロイドが指示を出していた。
お喋りしてサボっているだけではお給料は貰えないのよ。
私は久しぶりにマルタとゆっくり話が出来て嬉しい。
マルタがキャロルに仕事を教えるって言うことでマルタがくる時必ずキャロルは付いていた。マルタが下がったあともキャロルだけ戻ってくる、もうホント参っていたからキャロルと離れられたのも嬉しい。
でもこの馬車にはロイドもいた。
少し優しくなった気がするロイドだが、まだまだ気は許せない。
前に"あのこはいつかいなくなる"と私の事をマルタと話していた。
いなくなる子に感情移入するな、とかそんな事を言っていたような気がする。
あれはどういう意味なのか、未だに聞けていない。聞こうと思った事もあるがやめておいた方がいいと気がついた。
あの場に私はいなかった事になってるし(着ぐるみウサギのスキル"隠密"のおかげで)それを自分で聞いたら自分でばらすことになるよね?
馬車の外を覗く。アレスが馬に乗っている。他の屍戦士に溶け込んでいるが、私はずっと一緒にいたせいかアレスを見分けられるようになっていた。だって背格好でなんとなくわかるし…。何か他の屍戦士よりかなりイケメンだし?(注:屍戦士の仮面のデザインは全て同じです。)
うちの子が1番。的な感覚かもしれない。
おおっ馬に乗るアレスもカッコいい~。
その後私はマルタとお喋りをした。
マルタといっぱいお喋りしたら、少し寝たふりをしてあげよう。
ずっと私とマルタが話していると、きっとロイドが不機嫌になってしまうから。この旅行に連れ出してくれた私なりのお礼(?)と気遣いです。
フフ…今日のヤバカップルはどんなイチャつきを見せてくれるのか…
……て、別に覗きじゃありませんよ。
今日の私はお出かけの喜びで、大抵の事は許せる広い心なのです。
彼らは勝手にイチャつくだけです。私は寝てるから…
あ、でもあまりスゴいことはしないでね。
びっくりして起きちゃうから…




