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29、白魔法使いのニーナ

 フェルがアレスに抱きつく。

「いらっしゃいリリア~」

リリアはこっちだよ。


 最近フェルの部屋を訪ねると、これがパターンになってきた。

「フェルは本当にアレスの事好きだよね~」


「うん。アレスはボクのヒーローだからね~。今のボクがあるのはぜーんぶアレスのおかげ~」


 私には知らないことがいっぱいあるんだろうな。

 そう言えば最近アレスが屍戦士なのが全く気にならなくなっていた。

フェルが大事にしているせいか、私もアレスを大事に思ってきた。ずっとついてくるのもかわいい気がしてきた。

 それは中身を見ていないからかもしれないが、初めてフェルがアレスを紹介すると言った時から考えると嘘のように怖さや嫌悪感が無い。中身があの黒髪の少年だと妄想しているせいかな?

"ちょっと干物でも良いじゃない鎧着てればわかんないし"…と本気で思っている。

ただ、仮面の下を見たいとは思えない。夢を見させて…

どんなイケメンも干物になったらおしまいだよ。


「アレスはね~どんくさかったボクに魔法を勧めてくれたの~君は才能あるよって~。お陰でボク天才だって気が付いたの~。アレスも剣の練習頑張ってたんだよ~。一緒に頑張ろうねってアレスとボクと二ーナで…」


 嬉しそうに話していたフェルの表情が曇る。

二ーナ、初めて出てきた名前。そう言えば勇者の絵に描かれた中に女の子がいた。その子はどうしたのか。話題に出さないって事はもう亡くなっているのかもしれない?

「フェル……二ーナさんて……?」


フェルは寂しそうに笑い

「ボクの妹。ボク双子だったんだ。二ーナは白魔法使いだったんだ。そして姫巫女だった。」


なんかいっぱいワードが出てきました。


→ボクは双子だった。

→白魔法使い。

→姫巫女。


どれを選択しますか?

ーーー選択画面出てきそう。


うーんどこから聞くか。よし。おもしろネタから…


選択→ボクは双子だった。


「フェルは双子だったんだね。マルタ達と一緒だね。」


「そうだね~。だからついあの二人に肩入れしちゃうんだよね~。」


「………やっぱり双子だから…マルタ達みたいに付き合ってたの?」

フェルだから想像出来ない。


「………?リリア何か勘違いしてる~?あのね~兄弟って~結婚出来ないし付き合わないんだよ~。ロイくんとマルタちゃんも付き合ってないよ~。」


ーーーーーーーーーーーーーー!!!

 前世での常識はこの世界でも合っていた!!?

私の常識を歪めたのはあのロイドとマルタ(ヤバカップル)のせいなのにーー!!

フェルってば、あの二人のイチャ付きを知らなかったのか…。


選択→白魔法使い。


「フェルは黒魔法使いって聞いたよ。白魔法使いって言うのもあるんだね。」


「うん。ボクは昔黒魔法使いだったよ~今は白魔法も使える大賢者だよ~白魔法は光属性の魔法で回復や浄化の力が使える、主にサポート向けの魔法が多いよ~」


だ…大賢者…。賢者でもなく大賢者。大賢者って前世で女の人と付き合わずに年を取るとなれるって聞いたような…アレですか?

…ゴメン。フェル…変なこと考えてしまって…。きっと一緒にしてはいけない。


選択→姫巫女。


「姫巫女はね~神様に向けた神事、儀式、祭り事で踊ったりするよ~。神の力を降ろせるらしいの~特に白魔法使いの娘が選ばれるんだけど、白魔法を超えた聖なる力が使えるって事だよ~でも難しいみたいだよ~。そこに達する前に二ーナは亡くなってしまったし…。歴代の姫巫女は全て不完全て事みたい。」


フェルの声が暗い。

「ゴメン、フェル。二ーナさんの事、思い出させちゃって…」

あまり聞くものでは無いよね。


「いいよ…もう昔の事だもん。二ーナが生きていれば、アレスも無事だったんだろうけど…二ーナは魔王に殺されたんだ。魔王は何度も甦る。それを絶ち切るには姫巫女の力が必要なんだ。ボクらはわかってなかった。勇者が魔王を倒しただけで終わらない事を…」


 フェルはもう私を見ていなかった。


「必ず…次こそ必ず完全消滅させてやる…」


フェルは何やらぶつぶつ繰り返していた…こんなフェルは初めてだ。

やっぱり聞いてはいけない事だったと思う。



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