286、花嫁準備
それから年末になり新年になり、その間アレスと会える機会はなかった。
私が会いに行くと言っても「結婚式まで会わない」とアレスが言っている、とラファエルが言うのだ。
え~私に会いたくないの~?
ちょっとしょんぼりだ。
私が会えない間にメイドさん達にも何かクチコミが回り、『口外しないって魔法契約すると花婿の正体を教えてもらえるって』とか言うことで広まったらしく城内で働く人達皆、調査団兼任と言う肩書きになっていった。もう城内にアレスを知らぬ者はいない。
全然秘密じゃないよ!!
そしてあっという間にその日が来た。
いよいよ私とラファエルの誕生日で、そして私とアレスの結婚式の日になった。
私は前日から全身を磨かれたりパックしたり塗られたり大変な事になっていた。
お母様もメイドさん達もはりきり過ぎてて怖いくらいだ。
お母様が選んでくれた白のウエディングドレスを着て念入りにメイクされた。
メイドさん達皆で「美しい」「お母様に似ている」と誉め讃えてくれた。
”お母様に似ている”は私の中で最高の誉め言葉かもしれない、でもお母様の方が美しいのは十分わかっている。
時々お母様が手伝いたそうに部屋に入ろうと来ていたが、「陛下とお待ちになっていてください」と追い返されていた。
用意が終わる頃にラファエルがやって来た。
今日は朝から城下町も賑やかなようで、お祭りになっているらしい。
この国の姫様と何か"秘密の大物"の結婚式だって街中で噂だとラファエルが教えてくれた。
そんなので国民は納得するのか不思議だが、お父様が国王になってからルカレリアは発展し続けているせいもあり、あの国王様が選んだ婿さんなら大丈夫だ。と巷で噂されているらしい。
午後からは花火も上がるそうだ。
皆が私達の結婚を祝ってくれるのはとても有難い事だが照れてしまう。
でも今日はラファエルの誕生日でもあるんだよ。
私達ばかりじゃ第一皇子の立場無いじゃん。とラファエルに言うと
「何言ってんだよ。俺、立会人やるから一番目立っちゃうよ!」
嬉しそうにラファエルが言った。
そうか……そう言うのって神父さん的なものがやるのかと思っていたがラファエルがやってくれるのか……
前回に引き続きお世話になります。
それから私はラファエルをぎゅっと抱き締めて
「今まで言えなかったけど、あんたには本当にお世話になった。ずっとずっとありがとう! ラファエルがいてくれたから迷子にならずに生まれてこれたし、アレスと再会して結婚も出来るんだね。本当にありがとう……」
ちょっと泣きそうになったが、ラファエルが私の頬を撫でた。
「リリアがそんなこと言うなんて変だぞ。俺もずっとリリアと兄妹で楽しかった。結婚しても遊びに行くから大丈夫だよ、心配するな」
ラファエルが兄らしい感じの事を言った。
「さあリリア、パパとママにも花嫁姿を見せてあげないと! 二人とも首を長くして待ってるよ……挨拶に行こう」
部屋を出て向かいの部屋を見た。
この部屋でアレスも準備をしている筈……。
アレスは間違いなくカッコいいだろう……早く会いたいな……
するとバタンとドアが開き中からエリザが急いで出てきてまたドアを閉めた。
中のアレスは見えなかった、残念。
ドアの前でエリザが下を向いて膝をついた。
気分でも悪いのかも……?
「エリザ? どうしたの?」
よく見るとエリザ鼻血を押さえていた。
ん?
「も、萌え……」
エリザが何か呟いた。
ん?
するとエリザがスッと立ち上がり
「姫様、アレス様の準備も順調です」
と冷静に言った。
ああ、エリザは勇者マニアだからね……?
そっか、私の支度部屋にいないと思ったらアレスの方の手伝い行ってたのね。
アレスの麗しさにやられたのか……
私もアレスに会ったら無事でいられるだろうか……
花嫁だから鼻血は出さないようにしたいが、間違いなくカッコ良すぎてダメージをくらうだろう……
気をしっかり持たなければ……
ラファエルが私の手を引いてお父様とお母様の待つ部屋の前まで連れて来てくれた。
さあ両親への挨拶だ。




